はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
パーキンソン病にはグルタチオン点滴を
癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

投稿はすべて公開します。

2014年04月11日 | 日記
たった今、気づいたのですが、奈良県吉野郡けんさんから
"がんと糖質の関係の反論楽しみにしてます。"とのコメントをいただきました。
けんさん、有難うございます。

しかし私のブログに対する基本的なスタンスは、私のプライベートな考えを、普通に書き連ねていくだけなのです。
当然、そこには間違いや勘違いも発生するでしょう。
したがって、コメントでの御批判、御叱責は大歓迎です。
ただ、そのコメントに対して逐一反応していくことは差し控えさせていただきます。
そのコメントに私が納得し、感謝したのか、あるいは疑問や反発を感じたのかは、読者の皆さんの想像にお任せ致します。
このサイトは、討論しあうような性質のものではありません。

ただしコメントは、すべて、そのままアップしますので、宜しくお願い致します。

村上春樹・色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

2014年04月11日 | 読書


とても面白く読み終えることができました。

主人公の多崎つくるは高校生時代に5人で仲良しグループを形成していました。
男子生徒の赤松と青海、女子生徒の白根と黒埜で、全員がカラフルな名前です。
グループ内では、アカ、アオ、シロ、クロと呼び合っていたのですが、多崎つくるという名前には色彩がありませんので、
主人公だけは、"つくる"と本名で呼ばれていました。

非常にバランスのとれたグループで

五人はそれぞれに「自分は今、正しい場所にいて、正しい仲間と結びついている」と感じた。

と表現されます。

アカは抜群の秀才だけれども、そのことを恥じるように、一歩後ろに引いて周囲に気を配るというキャラで、
アオはラグビー部のキャプテンで性格が明るくみんなに好かれて、よく人の話を聞き,場をまとめるのが得意なキャラ、
シロはモデル体型の美人だが、人の注目をひくことが苦手なピアノの名手というキャラ、
クロは容貌については人並みよりもいくらか上というところだが、表情が生き生きとして愛嬌があり、
自尊心が強く、タフな性格で頭の回転が速いというキャラでした。

つくるは、彼らの際立ったキャラを考えると、自分自身に目立った個性や特質が無いことにコンプレックスを感じます。
それでも、
そしてもちろん多崎つくるも、自分がひとつの不可欠なピースとしてその五角形に組み込まれていることを、嬉しく、また誇らしく思った。
彼は他の四人のことが心から好きだったし、そこにある一体感を何より愛した。

若木が地中から養分を吸い上げるように、思春期に必要とされる滋養を つくるは そのグループから受け取り、
成長のための大事な糧とし、あるいは取り置いて、非常用熱源として体内に蓄えた。


高校卒業後、つくるは東京の工業大学に進学します。
他の四人は生まれ育った名古屋にとどまります。
つくるが帰郷する度に、五人は集まって、依然と変わることなく旧交を温めていました。

ところが大学二年の夏にある事件がおこります。
そのことで、つくるは四人を代表したアオから理由も伝えられずに、電話で絶交を言い渡されます。
つくるには、その理由がまったく想像できませんでした。
しかし、ひどく恐ろしいものが出てきそうだと考えて、一切、追及することはできませんでした。

その後、彼らとの音信不通を続けた つくる は36歳の独身サラリーマンとなり、38歳のOLである沙羅との交際を始めます。
絶交を言い渡されたまま、追及することも無く現在に至った つくる に対して、沙羅は人生の区切りとしても決着をつけるべきだと諭します。
そして、四人の現住所を調べ上げて つくる に渡します。

これ以降はネタバレを避けて省きますが、以下のような素敵な文章も出てきます。

仕方ないじゃないか、と つくる は自分に言い聞かせる。
もともと空っぽであったものが、再び空っぽになっただけだ。
誰に苦情を申し立てられるだろう?
みんなが彼のところにやってきて、彼がどれくらい空っぽであるかを確認し、
それを確認し終えるとどこかに去って行く。
あとには空っぽの、あるいは より空っぽになった多崎つくるが再び一人で残される。
それだけのことではないか。


さて、この作品には、大学の2年後輩である灰田(グレー)という男が登場します。
その灰田の父親は大学生時代に辺鄙な温泉宿でジャズピアニストと出会い、不思議な体験をします。
羊シリーズにちょっとだけ似ているような、村上春樹得意のファンタスティックストーリーですが
灰田も、このネタも、本編に全く関わってきません。
灰田自体は、つくる が苦しい時代に助けられた存在として、まあ、ギリギリ許容範囲内ですが、
その父親のファンタジーネタには、違和感というか、場違いな感じを受けてしまいました。