こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

詩・晴れ舞台

2019年09月08日 12時34分53秒 | 文芸

その年で何やってるの?
妻の皮肉を聞き流し
子供たちの前に立つ
「つねじいさんの紙芝居だよ」
クスリと誰かが笑った
堰を切り
広がる笑顔が波になる
つられて顔が綻ぶ
幸せな空間を手に入れた瞬間だ
歌っておどけて
はちゃけてみせるおじいちゃん
「はい。おしまい」
ほんのひとときだった
おじいちゃんの晴れ舞台は終わった 



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詩・母を想う

2019年08月09日 02時00分44秒 | 文芸

「やかましい!」
母を怒鳴り上げた
決して忘れない
若過ぎた日

失意から抜け出せぬ
不器用さが腹立たしく
母にぶつけてしまった

頬笑んだ母に
気づいたが
甘えの暴走は止まらなかった

母が逝き
気の遠くなる日々が過ぎた
 
どれほど謝っても
母は
もう頬笑んでくれない
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若かったあの日

2017年11月09日 01時23分06秒 | 文芸
10数年前に書き留めた手記です。
こんな時代があったのです。

「将来飲食店で独立するんやね。
ならここで思い切り
勉強したらいいじゃないか」

 調理師学校に紹介された
H商工会議所内のレストラン。
面接相手は
何のこだわりも見せない。
自分の店を持つまでと
ハシゴ的な
身勝手過ぎる求職者を
「いいよ、いいよ」
という感じで迎えてくれる。
終始ニコニコと
緊張感や余分な考えを包み込む。
それがY専務だった。


 レストラン勤めは
順調だった。
調理師学校で学んだ調理技術は、
職場の上司M調理主任の
おおらかな指導のもと
生かされた。
優しい同僚たちにも恵まれて
楽しく仕事をした。

「専務さん、
仲人をお願いできますか?」

 就職して2年目。
つきあっていた彼女と
結婚を決め、
Y専務のもとを
二人で訪れた。

「ほうか。結婚するの。
喜んで引き受けましょ」

 彼女と二人、
感謝の頭を下げた。

 Y専務はすぐに動いた。
結納で彼女の親元に出向き、
結婚式場も早速押さえた。
レストランと提携する
結婚式場だった。

「これはという
メニューを考えてやるよ。
きみには一生に一度の
晴れ舞台だからな」

 W主任も喜んだ。
同僚らの好意的な冷やかしも
心地よく
嬉しかった。

「ありがとうございます!」

 何度も頭を下げながら、
にやけた。

 それが3週間後、
事態は一変した。

「結婚するの自信ない。
…結婚できない…!」

「え?」

 寝耳に水だった。
前日までは二人の未来を
あんなに
幸せいっぱい語っていたのに。

 彼女の心を取り戻すべく
懸命に慰留したが、
無駄だった。
彼女の思いは決意に変わった。

「結婚はやめる!」

 初めてだった恋愛経験、
その彼女との結婚しか
考えられなくなっていた
私には大ショックだった。
しかし、
もう彼女に
取り付く島はなかった。

 何も考えられなくなり、
職場を無届けで休み、
アパートの自室にこもった。
死にたいと思ったが、
それを実行する勇気はない。
知り合いの誰とも
会いたくなかった。
ただ布団を頭からかぶって
モグラ状態で過ごした。

(…どうしたらいいんだろう?
親には…専務さんは…主任さんは…)

 どの人にも
申し訳ないが先に立つ。
やっと落ち着いても、
破談の後始末なんて、
考えられるはずがない。
職場の上司や
同僚の顔を思い浮かべ、
焦燥感で
押しつぶされそうになるだけ。
結局3日間、
アパートは出られなかった。

 誰かがドアを叩いている。
フラーッと玄関に移動した。
でもドアのノブに手は出なかった。
何度も何度もドアを叩いたあげく
相手はようやく諦めた。
「ホッ」と緊張が解けたとき、
郵便受けに何かが差し込まれた。
一枚のメモ書きだった。

 ドアの向こうに
気配が消えたのを確かめると、
やっとメモを手にした。

『みんな心配している。
きょうの夕方、
仕事終わりに専務と一緒に来るから、
7時頃、家にいてくれよ M』

 3日間何も連絡せずに休む
スタッフを心配した主任が、
ワザワザ来てくれた。
(忙しいのに…)
また申し訳なくて堪らなかった。

時間を指定されてしまっては、
もう居留守を使う訳にはいかない。
Y専務とM主任、
あの優しい上司と
顔を合わせないわけにはいかない。

「オレ、外で待ってるからな」

 M主任の気配りで、
私はY専務と二人きりにされた。
罪悪感いっぱい、
気まずい思いにいる私を
慮った専務は
先に口を開いた。

「お父さんに☎を貰った。
向こうさんの家から
連絡があったそうだ。
えらく心配されていたよ」

 すべてを専務は知っている。
それなのに、
全く変わらない笑顔が
目の前にあった。

「…ぼ、ぼく…」

「無理しなくていいから。
ややこしい手続きは
私がやっておくから。
きみはこの週末まで休みをとるといい。
落ち着いたら仕事に出なさい。
みんな待ってるよ。
きみがいないと
みんな寂しいんだってさ」

 ボロボロと涙が出た。

「ただ、どんなことがあっても、
自分だけで持ち込むんじゃないよ。
ご両親だって、
僕も主任も、
ちゃんと相談に乗れるんだから。
お互いの人生で
せっかく出会えた相手だろ。
大事にしなきゃ」

 何も言えない。
止めどもなく流れ落ちる涙を
頻りに拭った。

 週明けに職場へ。
何とも言えない気恥ずかしさは、
同僚たちが
すぐ忘れさせてくれた。

「これからの君は、
今回のことを生かして、
強く成長しなきゃいけないよ。
人任せの人生は
何度も繰り返さない。
いいね、約束だ」

 改めて詫びる私に
向けたY専務の言葉は、
私の胸に深く刻まれた。
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あの日あのとき

2017年11月02日 01時38分11秒 | 文芸
「母ちゃん、腹減ったー!なんかないんけ?」


 ひもじい口癖の記憶。幼いとき、いつも空腹だった。育ち盛りでもあったが、それ以上に世の中が貧しかったせいである。


「ちょっと待っとれ」


 母が急いで作ってくれたのは、おむすび。お焦げが入った麦めしのおむすびは塩味が効いて、空腹には絶品だった。


「うまいやろが、母ちゃんのおむすびは」


 こどもの様子を窺いながら、母は得意げに笑った。口の端にごはん粒がついていた。おむすびを結びながらつまみ食いをしたに違いない。みんな空腹を抱えていた時代である。


 あのころ、わが家の主食は麦めし。コメに麦をかなり混ぜてかさ上げしたものだった。見た目も食味もよくなかったが、他に食べるものはなかった。コメ生産農家でも、白いごはんは余程のことがないと、家族の口に入らなかった。おかずも一汁一菜がほとんどで、みそ汁と漬物だけで済ます日さえあった。


 カマドにかけた大きな鉄窯で家族六人分のごはんを炊くと、底の部分が焦げる。頃合いなきつね色のおこげは、これがまたおいしい。兄弟はむさぼるように食べた。


 そのおこげの残りを、塩をたっぷりまぶした手で結んでくれた母だった。夢中で二個も平らげる息子を眺めた母は、空腹を訴えるたびに、よくおむすびを作ってくれた。


 田舎の学校は一週間程度の農繁期休暇があった。春は田植え休み秋は稲刈り休みで、子供たちの手を借りたい農家事情からである。


 親戚や隣近所からかり出されて、繁忙期は十人近くも人が集まる。機械化とは無縁の時代で、人の手が唯一の手段だった。一斉に稲を刈り、それを束ね、稲木に渡した太い竹竿にかけて天日干しと、仕事はいくらでもあった。一日で終わるはずもなく、数日かかるのが普通だった。


 手伝いに出た最初は三年生の時。兄を真似て負けん気を出し、小さな体に稲束をいっぱい抱えて運んだり、落穂ひろいなどをやった。黙々と作業する大人たちに混じって、遊びの延長ともいえる働きぶりだった。


「そろそろ昼やけ。弁当にすっかー!」


 昼の食事を運んできた母の呼びかけで、作業は一旦休憩を迎えた。刈り終えた田んぼの中でムシロを敷き弁当を広げる。手伝いの人数分だから、かなり大事だった。


(!)


 覗き込んで絶句した。木箱にぎっしりと詰められた真っ白いおむすびが、目に眩しかった。黄色いタクアンの大皿と、コンニャクや野菜の煮しめが盛られた重箱が並んだ。


「お前らもこっち来て食えや。よう気張ってくれたで、腹減ったやろが。田んぼで食うめしは、また格別にうまいぞ」


 日焼けして真っ黒な父が満面笑みを浮かべていた。もう遠慮はいらない。兄弟は競うように、おむすびへ一番に手を伸ばした。


 うまかった。麦めしのおむすびをはるかにこえた美味しさだった。家で漬けたタクアンも、白いおむすびと名コンビを組み、味を引き立てあっている。家ではお目にかかれない白いおむすびを、腹がはち切れんばかりに食べた。


「えらい食いっぷりやのう。こいつら大物になりよるで」


 満腹感と幸福感は一体になった。


 小学校に持っていく弁当は、その分だけ白い米のごはんを炊く。麦めしを炊く際に、白米を詰めた金網の専用容器を突き刺して一緒に炊いた。弁当が麦飯の時はカツオを醤油で和えて絨毯のように敷き詰める。醤油味の効いた麦めしは別の味になった。それでも隣の席に広げられた白いごはんの弁当が羨ましくて堪らなかった。白いおむすびが口にできる農繁期の手伝いは、まさに夢の実現だった。


「交通事情もなんとか落ち着いてきましたんで、三宮の小学校で炊き出しに行きますよって、皆さんの参加お願いします」


 PTAの呼びかけで、神戸の震災被災地支援ボランティア活動に参加した。


 避難所の小学校は騒然とした雰囲気だった。校庭の片隅に設けられた仮設トイレの光景が、厳しい現実を突きつける。待機時間に三宮駅前へ。倒壊した建物や、かろうじて倒れずにいるビルが視界に入る。思わず身震いした。


「頑張ってください!」


「ありがとうございます」


 声を掛け合い、夢中でおむすびを手渡した。


「おいしい!」


 声の主をみやると、幼い子供がおむすびにかぶりついていた。懸命に頬張っている。こんなうまいものが他にあるもんかと、必死に食っている。幸せな表情が生まれている。


(おむすびは、飢えて疲弊した心と体を癒してくれるんだ)おむすびの不思議な力を思った。


(頑張れよ)


 独りごちながら、おむすびを配り続けた。 

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負けん気

2017年10月14日 01時17分26秒 | 文芸
怪しいなあ
空模様はどんより
こんな日は
外に出るのが億劫
若いときには
考えられなかった怠け心が
たまらない
頭から
年齢を追い払い
一挙に
お出かけムードへ
切り替える
弾みよく一歩を
歩みだせばいい
あとは惰性におまかせ
きっと
なにかが
目を楽しませ
心にリズムをもたらせ
夢中にしてくれる
それが
お出かけの醍醐味
アッ!
コスモス畑
その季節がいっぱい
私の頬を撫ぜて
あれ?くすぐったい
記憶に刻まれた
若い感性が
顔を出す
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お片付け

2017年10月13日 09時11分54秒 | 文芸
昨今、
ゴミ屋敷の話題が多い。
現代人は片づけが
どうも苦手なようだ。

 かくいう私も
日々の片付けは苦手である。
ところが、
わが家は
ゴミ屋敷になることがない。
なぜなら模様替えが
大好きなのだ。
ひと月に二回くらい
自室の雰囲気を変えては、
ほくそ笑んでいる。

 部屋でぼんやりしていると、
急に思い立つ。
あの書棚は壁際に、
机は右隅に…
うん、これならすっきりと
使い勝手いい部屋に
なるじゃないか!
妄想の中
自画自賛のレイアウトが
出来上がる。

 後は、
無我夢中である。
乱雑に
部屋や机上をおおう
煩雑としたものを
部屋の中央に積み上げて、
家具を据えると
決めた場所を
まず徹底して掃除する。
そして家具を移動。

 家具さえ配置できれば、
後の片づけは
あっという間。
これが面白いように進む。

 部屋だけでなく、
我が身心も
模様替えできる。
だから片付けは、
いつも後回しなのだ。
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つれづれ

2017年10月11日 01時24分59秒 | 文芸
11月の
まちライブラリーの
イベント広報チラシを作製。
昨日は朝から配布に回りました。
市の駐車場に車を置いて、
えっちらおっちらと歩きました。
かかった時間は1時間余り。
車ならもっと早く終われますが、
歩きは健康にもいいし、
とにかく小回りがきいて便利です。
結局この日の歩いた歩数は、
16000歩。

家に帰りつくと、
7月の締め切りぎりぎりに出していた、
親孝行の賛歌が佳作に入ったとの通知が、
配達されていました。
よくよく見ると、
表彰式のお知らせ。
伊那までの交通費がでるとのことだが、
出席できずで返送しました。
ベスト3までなら、
何をさておいても出かけたでしょうが、
佳作では……と二の足を踏みます。
二年前には、
(足代相手もちでで旅行だ)と、
佳作であろうと無関係に、
伊那旅行を楽しむところですが、
やはり年を食うと、
億劫が先に立ちます。

庭先に立つと、
酔芙蓉が
なんと蕾をつけています。
あちこちで開花したのを見ていたので、
遅ればせながらの喜びです。

やっぱり
こっちのほうがいいなあ。(笑)
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カギ

2017年10月10日 00時16分54秒 | 文芸
「開けっ放しで
不用心じゃないの!」

 また妻に叱られた。
何度怒られても、
またうっかり玄関の施錠を
忘れてしまう。
確かに物騒な世の中で
うっかりは許されない。
それでも子供のころ
身についた習慣は
抜けない。

 あの当時の田舎は
カギをかける家が少なく、
日中は開けっぱなしでも
平気だった。
集落は
生まれた瞬間からの
知り合いばかり。
気心が知れていて
家族同然で、
犯罪の心配など
これっぽっちもなかった。

 もしも不審者がいても、
隣近所で
注意しあうので大丈夫。
いつでもどこでも
村人の姿が
そこら中に見られるのが
田舎のよさだった。

「今は十九世紀じゃないのよ。
開けっ放しの玄関を
想像しただけで
身震いしちゃうわよ」

 よき昔の話をすると、
また妻がピシャリ!

言い分は正論過ぎて
二の句が継げなくなる。

 玄関は開けっ放しで
村の誰もが我が家のように
出入りしていた時代は遠くなり、
カギが複数
必要な時代に
なってしまったのが
悲しい。
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シークレット

2017年09月09日 00時37分32秒 | 文芸
ワイルド7で
一世を風靡した感のある
漫画家の
7以前の代表作と
いえるのかな。
ちなみに大ファンでした。
センスいい絵です。
表紙絵一つ一つに、
さわやかさが、
あふれています。
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ひととき・その2

2017年08月11日 08時37分57秒 | 文芸
昨日の続きです。

久々の草刈りで、
すっきりした庭を、
再び楽しみました。
酷暑続きの中、
結構
いろんな花が
頑張ってくれています。
例によって、
名前は……(ウニャウニャ)ですが、
去年も眺めた記憶のある花も、
ちゃんと咲いています。


ただ庭続にある畑が
ひどい状態です。
サルは、
夜な夜なやってきているようです。
葉を茂らせているサツマイモも、
餌食になるのは
避けられないでしょう。
それでも、
野菜の中に交じって伸びている雑草を、
引き抜いてやりました。
どちらにしろ、この夏は、
立派なトマト、ピーマン、キューリなどを、
プレゼントしてくれた畑です。
感謝感謝です。
一部かじられたカボチャも、
この間、カボチャ煮ときんぴら、
天ぷらでいただきました。
少し未熟なものでしたが、
おいしかったですよ。

いよいよ、
11日昼過ぎに、
長女と初孫がやってきます。
ぼやっとしていられません。
まずは身近なところから片付けます。
ごみ屋敷に見られたくないですからね。(笑)
さあ3日間、
孫の成長とお付き合いです。
うれしい様な怖いような……?
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