誕生!家族っ子、すず実
きょうだいは多いほうがいい
まったく躊躇もせず悩みもせずに、本当に自然体で妊娠と出産に臨んだ4人目の赤ちゃんが、わが家の幸福の使者、すず実である。
「男の子が二人屋のに、女の子は奈津実1人じゃかわいそうでしょう。奈津実に妹をつくってやろうよ。きょうだいは多いほうが頼もしくていいじゃない」
「そうやな。そないしたろか」
わたしの提案に夫はすぐに乗ってきた。いたって子煩悩なとことのある彼が、宝物の増えることに異存のあるはずがない。
ただ夫は、もう48最。もし赤ちゃん誕生となれば、おじいちゃんと孫に見られてもしかたないだろう。そのへんのことでこだわりがあるかもしれないと危惧していたが、すべてにわたって楽観的な夫には無用な心配だった。
5年前に2人きりのきょうだいだった1最違いの兄を亡くした夫。そして、ひとりっ子として育ったわたし。そんな二人にとって、賑やかしい兄弟姉妹の存在は夢でもあった。
それぞれの歓迎
わが家の子どもたち、中1の長女奈津実、小6の誠悟、小2の龍悟たちにも聞いてみた。
「もしも、妹か弟ができたら、いいかな?」
「ホント!ワーッ!うれしいな。あたしが可愛がってやるもん」
と、手放しの喜びようを見せた奈津実。
「いいよ、ぼく」
と、クールに構えて答えた誠悟。
彼にとっては面映ゆい質問だったに違いない。そんな年ごろにさしかかった男の子である。でも、彼の心の中が喜びに埋められているのは、母親の私にわからないはずがない。
「うれしいな。ねえねえ、いつできんの?あした?あさって?」
と、一番無邪気に騒いだのは龍悟だった。
家族の歓迎を受けて迎えた妊娠。そして出産に至るまでの、夫を先頭にした家族それぞれのやり方による私への思いやり行動は感激ものだった。
いい家族に囲まれた幸せをつくづく噛みしめる毎日は、おなかの赤ちゃんにもよく通じたに違いない。
そして迎えた出産だった!まるで初めてのお産を経験するようにひどく痛い思いをした。7年のブランクは、やはり相当に影響したようだ。でも、2男の龍悟を取り上げてもらった産婆さんは、今度も手際よく優しく私を誘導してくださった。おかげで無事に出産!
いま、すず実は4か月。まだ寝返りは打たないが、動くものを目で追いかけたり、呼び掛けると振り返ったりと、何ともいえない可愛いしぐさの連発である。
名付け親は私と奈津実
すず実の名前は、私と奈津実が名付け親になった。
奈津実は短大時代の恩師、誠悟は仲人さん、龍悟は夫が名付け親だから、今度は母親がしゃしゃりでた。
思案に思案を重ねた末に、平仮名で『すず』と決めた。ところが、これに不満をもらしたのが、意外にも長女の奈津実だった。
「誠悟、龍悟って、男の子2人が『悟』の漢字がついて統一されているのに、なぜ私と赤ちゃんは別々なの?女の子だから?」
と、いちゃもん(?)をつけた。
「やっぱり兄弟とか姉妹の名前は同じ漢字で締めくくるべきだ」
と、強硬(?)に主張した。
その言い分は至極ごもっとも。母親は一歩譲った。だから、赤ちゃんは『すず実』と命名された。
『すず実』は名実ともに、奈津実の妹になったのだ。
すず実は家族の惜しみない愛情に包まれて順調に育っている。おねえちゃんとおにいちゃんらは学校から帰ると、何はさておいてもまず赤ちゃんに満面笑顔でご挨拶(?)だ。
「ただいま!すずちゃん。おにいちゃんだぞ」
「ダアダア」
「おにいちゃん帰ってきたで。すずちゃーん」
「ダアダア」
「ただいま、元気してたかな?すず実ちゃん、ハーイ!」
これは奈津実おねえちゃんである。『すずちゃん』ではなく『すず実』にこだわっているのが何とも頬笑ましい。
「ダアダア、ダアー!」
と、すず実もお姉ちゃんだけには特別な反応を見せているようだ。 (続く)
(バルーン大賞受賞作・平成9年4月)
きょうだいは多いほうがいい
まったく躊躇もせず悩みもせずに、本当に自然体で妊娠と出産に臨んだ4人目の赤ちゃんが、わが家の幸福の使者、すず実である。
「男の子が二人屋のに、女の子は奈津実1人じゃかわいそうでしょう。奈津実に妹をつくってやろうよ。きょうだいは多いほうが頼もしくていいじゃない」
「そうやな。そないしたろか」
わたしの提案に夫はすぐに乗ってきた。いたって子煩悩なとことのある彼が、宝物の増えることに異存のあるはずがない。
ただ夫は、もう48最。もし赤ちゃん誕生となれば、おじいちゃんと孫に見られてもしかたないだろう。そのへんのことでこだわりがあるかもしれないと危惧していたが、すべてにわたって楽観的な夫には無用な心配だった。
5年前に2人きりのきょうだいだった1最違いの兄を亡くした夫。そして、ひとりっ子として育ったわたし。そんな二人にとって、賑やかしい兄弟姉妹の存在は夢でもあった。
それぞれの歓迎
わが家の子どもたち、中1の長女奈津実、小6の誠悟、小2の龍悟たちにも聞いてみた。
「もしも、妹か弟ができたら、いいかな?」
「ホント!ワーッ!うれしいな。あたしが可愛がってやるもん」
と、手放しの喜びようを見せた奈津実。
「いいよ、ぼく」
と、クールに構えて答えた誠悟。
彼にとっては面映ゆい質問だったに違いない。そんな年ごろにさしかかった男の子である。でも、彼の心の中が喜びに埋められているのは、母親の私にわからないはずがない。
「うれしいな。ねえねえ、いつできんの?あした?あさって?」
と、一番無邪気に騒いだのは龍悟だった。
家族の歓迎を受けて迎えた妊娠。そして出産に至るまでの、夫を先頭にした家族それぞれのやり方による私への思いやり行動は感激ものだった。
いい家族に囲まれた幸せをつくづく噛みしめる毎日は、おなかの赤ちゃんにもよく通じたに違いない。
そして迎えた出産だった!まるで初めてのお産を経験するようにひどく痛い思いをした。7年のブランクは、やはり相当に影響したようだ。でも、2男の龍悟を取り上げてもらった産婆さんは、今度も手際よく優しく私を誘導してくださった。おかげで無事に出産!
いま、すず実は4か月。まだ寝返りは打たないが、動くものを目で追いかけたり、呼び掛けると振り返ったりと、何ともいえない可愛いしぐさの連発である。
名付け親は私と奈津実
すず実の名前は、私と奈津実が名付け親になった。
奈津実は短大時代の恩師、誠悟は仲人さん、龍悟は夫が名付け親だから、今度は母親がしゃしゃりでた。
思案に思案を重ねた末に、平仮名で『すず』と決めた。ところが、これに不満をもらしたのが、意外にも長女の奈津実だった。
「誠悟、龍悟って、男の子2人が『悟』の漢字がついて統一されているのに、なぜ私と赤ちゃんは別々なの?女の子だから?」
と、いちゃもん(?)をつけた。
「やっぱり兄弟とか姉妹の名前は同じ漢字で締めくくるべきだ」
と、強硬(?)に主張した。
その言い分は至極ごもっとも。母親は一歩譲った。だから、赤ちゃんは『すず実』と命名された。
『すず実』は名実ともに、奈津実の妹になったのだ。
すず実は家族の惜しみない愛情に包まれて順調に育っている。おねえちゃんとおにいちゃんらは学校から帰ると、何はさておいてもまず赤ちゃんに満面笑顔でご挨拶(?)だ。
「ただいま!すずちゃん。おにいちゃんだぞ」
「ダアダア」
「おにいちゃん帰ってきたで。すずちゃーん」
「ダアダア」
「ただいま、元気してたかな?すず実ちゃん、ハーイ!」
これは奈津実おねえちゃんである。『すずちゃん』ではなく『すず実』にこだわっているのが何とも頬笑ましい。
「ダアダア、ダアー!」
と、すず実もお姉ちゃんだけには特別な反応を見せているようだ。 (続く)
(バルーン大賞受賞作・平成9年4月)