こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

担うんやぞ!

2015年07月31日 21時09分10秒 | 文芸
素人劇団が「リア王」に挑戦

 20数年前の秋。故郷で兵庫県の文化行事として「ひょうご演劇祭」が開催され、市民による劇を上演することになった。
 メンバーの大半は「舞台は初めて」という素人で、アマチュア劇団歴30年のわたしのもとに協力依頼が来た。
 引き受けた私は、あえてシェイクスピアの「リア王」を選んだ。
「県の文化の一翼を担うんやぞ」
 という意気込みを共有するために選んだ大作だった。
 仕事をしながらの基礎訓練、芝居の稽古は過酷で、さらに装置や衣装、小道具も手作り。大変な半年を乗り越え、やがてメンバーに仲間意識が生まれ、地域の文化発展にこうけんするという自覚も芽生えた。
 そして、千人近い観客に見守られた本番の舞台。
 半年前の自信なさげな素人集団が堂々たる演技を見せた。
 このとき誕生した市民劇団は、今も活動を展開し続けている。
(産経・2014・10・28掲載)

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だまされたー!

2015年07月31日 19時51分39秒 | 文芸
値段充分に確認

 自分ひとりで初めて買い物をしたのは、小学生のころだった。
 みにようかんを1個取り、5円玉を出したが、店の人に、
「ごめんね。これ10円よ」
 と指摘された。
カーッと顔が真っ赤になった。ひとつ違いの兄の言葉を真に受けて、5円と思い込んで疑わなかった。悔しくて涙が止まらなかった。
あれ以来、買い物は値段を何度も確かめてからでないと、
「これください」
 と言えなくなった。
 まず広告チラシで値段を見て、また店頭で値段を確認。
 値札に少しでも不安を感じたら、店員に再確認して、それでやっとレジに向かう。
 支払いの段階で恥をかくのは、もうまっぴらである。
 このクセは、消費税率が8パーセントに上がった現在、値段の吟味が十分に出来て、節約につながっている。
(讀賣・2015・2・15掲載)

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あーあー

2015年07月31日 17時21分49秒 | 文芸
婚活

 長男は繁盛しているラーメン店に勤めている。
現状では、女性と知り合うきっかけすら掴むのは無理そう。
 親としては何とか協力したいが、その方法が思いつかない。
 わたしと夫のみたいに、趣味のグループで出会い、出来ちゃった婚でゴールってわけにはいかないのかな。
 息子にそれを求めるのは、やっぱり酷だよな。あーあー、ため息しか出ない。
 でも、何とかしなければ…!
(讀賣・2012・10・24掲載)
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モソモソ

2015年07月31日 11時43分32秒 | 文芸
恵方巻きを食べる

 立春の前日の節分に食べると縁起がいいとされる恵方巻き(巻きず)。
 数年前までは、その巻きずしをわたしが作り、販売していた。5000本前後の予約があり、懸命に巻いた。
 十二支にちなんだ十二品目の具を使い、調理室はてんてこ舞い。まさに時間との闘いだった。
 ノルマがあって、作る側も1人十本以上買う。毎年恒例の出費ではあったが、かなり痛かった。
 しかも帰宅するのは普段より遅くなる。夕食の時間はとっくに過ぎており、家族揃って縁起のいい方角に向いて恵方巻きを丸かじり出来た事なぞ一度もなかった。
 酷い時は翌日にモソモソと食べた。
 福の神はさぞ戸惑い、思案した挙げ句わが家を素通りするしかなかったのではないか。
 今年はたっぷり時間があるので、恵方巻きをじっくり味わい、これまでの分もまとめた服を手に入れたい。
(讀賣・2014・1・26掲載)

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へただなあ

2015年07月31日 08時44分54秒 | 文芸
絵手紙を描いて届けよう

 神戸まで出かけて絵手紙講座を受けた。
 大人になって、絵には縁がなくなっている。
「うまく描けるかなあ?」
 と不安もあったが、素朴さを生かした絵手紙に魅力を感じ、自分の手で描いてみたくて足を運んだ。
 講師の先生は、阪神・淡路大震災を体験後、絵手紙の優しさに出会ったそうだ。
 心の行き届いた手ほどきに、ぎごちなく筆を使う。じれったい下手さ。
「下手でいい。ヘタがいいんです。筆に集中するんです。それが絵手紙の第一歩です」
 と先生。
 なるほど筆に集中していると、イライラが消える。
 そう言えば子どものころ、夢中になって絵を描いていた。純粋だった。
 4枚の絵手紙を描き上げた講座は、懐かしい子ども心を取り戻させてくれたようだ。油絵や日本画などには、いまさら手が出ない。
 でも絵手紙はごく気楽にできる。
 しかも家族や友達とあたたかい心の交流が図れる。
 素晴らしいものに出会えた。ヘタでいい。まず掻こう。そして誰かに届けてみよう。
(神戸・2014・10・2掲載)
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安いのないの?

2015年07月31日 02時49分16秒 | 文芸
男の手料理愛をひとつまみ



 昨春、退職を機にわが家の食事づくりを担当するはめになった。

 さっそくレシピ本や料理サイトを見て和洋中に挑戦だ。意気込みは充分だが、いざ調理となると、思惑違いの連続。

「ボク、食べる人」のときは考えもしなかった食費の限界。現実は厳しかった。予想外の体験で、妻がいかに苦労していたか、やっと分かった。

 レシピ通りの食材調達など無理。自家栽培の野菜中心にならざるを得ない。試行錯誤を重ねて、ようやくわが家なりの調理法がつかめたのは半年後だった。

 食材や調味料の買い出しはチラシとの睨めっこ。スーパーや安売りの目玉商品を求めて走る。

 おかげでモノの値段を覚えた。安い食材で、うまい料理。言うは易く行うは難し。しかし、家族への思いやりを忘れなければ、美味いものが出来上がる。そして。それは家族の笑顔を生み出す。

 女性に委ねがちだった家事・料理が、男の手に移ってもおかしくない時代だ。

 誰が担うにせよ、根底に家族への愛があればいい。

 さあ、今年こそ、隠し味に愛をひとつまみだ。

(朝日・2013・1・1掲載)


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バラッバラッ!

2015年07月31日 01時34分33秒 | 文芸
昆虫
 
夏が来た。田舎の夏だ。
 小学生のころは、朝早くからカブトムシやクワガタが群がるクヌギの木を求めて、雑木林を走り回ったものだ。
 甘い匂いのする樹液が幹の穴を満たしたところに昆虫たちは集まっていた。カナブンがウジャウジャ。蜂もブ~ンブ~ン!
 穴場の木は村中の子どもが熟知していたから競争だった。
 とはいえ、50数年前は昆虫の宝庫。他の子度らに後れを取っても、必ず何匹かを手にすることができた。
 蜂を追い払ってから、来の幹を蹴飛ばす。
 バラバラッと雨あられのように昆虫が降ってくる。カブトムシもクワガタも捕り放題。
 あれは夢だったのか?現在、いくつかの雑木林は跡形もない。穴場の木も切り倒されていたり、あっても樹液の蜜が涸れていたりで、昔の面影はない。
 試しに神社の山門脇にある、昔馴染みの大木を蹴ってみた。体当たりして揺すってみた。ビクともしない。何も落ちてこない。
 虫捕り網を手にした子どもの姿もほとんど見かけなくなった。時の流れは、村の子どもから、虫捕りの楽しみも奪ってしまったらしい。
(サンデー毎日・掲載)

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春が来た

2015年07月31日 00時02分27秒 | 文芸
練習成果舞台で披露

 昨年春、主婦や会社員ら20数人が集まり、地元の伝説上の美女、根日女(ねひめ)を題材にしたオリジナル作品で市民劇団「おおきな木」を旗揚げした。
 その第2回目の公演が、この4月に舞っている。旗揚げ公演では市内初の市民劇団ということもあり、観客を集めることが出来たが、今回はどうだろう。
 息の長い活動を続けるためにも、1回1回が勝負。
 1年間、積み重ねてきた練習の成果を一挙に本番にぶつけようと団員も一生懸命だ。
 劇団にとって本当の出発を祝える春にしたい。
(讀賣・1994・3・30掲載)
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おばけだぞー!

2015年07月30日 21時52分57秒 | 文芸
わが地元加西市の夏祭りは「サイサイ祭り」、今年は8月2日です。毎年楽しみしていて家族で参加していた。打つ上げ花火も楽しみのひとつで、市民総出を銘打った総踊りも何となく祭りの雰囲気を醸し出しています。ところで、5年前には息子がふたり、家を出て名古屋の方へ。3年前は長女が結婚へ。今や家族3人状態出、次女はもうお年頃、親と一緒に行くのを渋り恥また野田。夫婦二人で行くのもだんだん、飽きて、足が遠のき始めた。それがかなりさびしく思いかけた時、偶然ネットで見つけた「サイサイ祭り・お化け屋敷を手伝ってもらえる人募集!主催は若者グループだが、思い切って申し込んだ。見物にいけないなら参加と決めたのだ。自分の孫ひ孫ぐらいの若者たちに交じって、祭りの前夜の会場仕込みから始まって、本番にはお化けに扮して、子供たちの叫びを大いに楽しんだ。それが病みつきになった。今年は3年目。連絡を受けてすっかるやる気十分。でも、この酷暑、はたして、この老骨がどこまで頑張れるか、はなはだ自信が心もとない。ドリンクをガッポリ用意して、とにかくやるっきゃないよなあ。うん!

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メンツ?

2015年07月30日 20時33分11秒 | 文芸
結婚したとき、妻は短大を卒業して半年たつかたたぬかで、何も知らない純情娘だった。
 当然、家庭は13年分余計に人生を送って来た小生の独壇場!
 家計だって大黒柱の小生の思うがままで、わが世の春を謳歌たものだ。それでも、ただひたすら夫を信じ、頼り切っていた妻の可愛さといったらなかった。
 だが、栄枯盛衰は世の常とでもいうべきか。いまや立場は大逆転。子ども3人、女房は自分の分身を増やして、孤立化した小生の天下を完全に乗っ取ってしまったのである。
「お前、結婚したとき、生涯亭主を立てるといっただろうが!」
 と少しでもグチれば、
「何いってんの。甲斐性なしの亭主立てて、一家心中しろっての。冗談言わないでよ」
 これが、あの可愛かった女房がいう言葉か…。
 しかし、よく考えてみれば、あいつのいう通り。
 商売の失敗で、失業…!そんな不甲斐ない小生を立てろっていったって、やっぱり無理難題だよな。でも、オレにも男のメンツってもんが…。
 とはいっても、今の生活もまんざらじゃあない。主導権を相手に渡しておけば、とにかくラク。
「バイトの時間に遅れるわよ」
「は~い」
「これ、今日のお小遣いね」
「は~い」
 もう主導権を奪い返す気力は、ただただ萎えるばかり……?
(週刊ポスト・掲載)


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