(「年賀状書いてくれや」
いきなり父の頼みに驚いたの。八十半ばだが、まだまだ元気である。しかも昨年までは自分で年賀状をせっせと書いていた。筆を走らせた達筆賀状は、家族や親せきから代筆を頼まれるほどだった。それが代筆を依頼する側に回ったのだ。
「手が震えて、うまいこと書けんのじゃ」
やはり加齢のなせるw座だった。
「親父みたいに達筆じゃないぞ、俺。それでもいいか?」
父の顔に迷いが現れた。だからといって問題が解決するわけではない。思案する父の様子が見ていられなくなった。
「パソコンで作れるけど、それでもよかったら」
「ん?パソコンかい……それは……?」
論より証拠だと考えた。パソコンを起動させると、ネット画面を開いた。
「年賀状書いてくれや」
いきなり父の頼みに驚いた。八十半ばだが、まだまだ元気である。しかも昨年までは自分で年賀状をせっせと書いていた。筆を走らせた達筆賀状は、家族や親せきから代筆を頼まれるほどだった。それが代筆を依頼する側に回ったのだ。
「手が震えて、うまいこと書けんのじゃ」
やはり加齢のなせるワザだった。
「親父みたいに達筆じゃないぞ、俺。それでもいいか?」
父の顔に迷いが現れた。だからといって問題が解決するわけではない。思案する父の様子が見ていられなくなった。
「パソコンで作れるけど、それでもよかったら」
「ん?パソコンかい……それは……?」
論より証拠だと考えた。パソコンを起動させると、ネット画面を開いた。
「パソコンのう?ハイカラ過ぎるんちゃうか」
「ほら、こない簡単にできるんや」
年賀状制作でウェブ検索した。あっけにとられた顔で画面を食い入るように見つめる父が可愛く見えた。年賀状デザイン集を選んで開いた。
年賀状の一覧が画面に広がった。
「おお~!こりゃ見事なもんじゃ」
デザイン例から和風を選ぶと、父の目は丸くなった。伝統的な新年の絵柄を背景ににした達筆な筆使いの年賀状が並んでいる。
「こんなのをパソコンで作れるんかい?」
父が指さした年賀状は、謹賀新年の文字が漆黒の隅を含んだ筆で書かれたものだった。父が例年書きあげていた年賀状に似ているが、その差は歴然だった。
「パソコンやったら簡単じゃ。ネットで年賀状のデザインや絵柄が無料で手に入れられるさかいな」
「うんうん。ほうけ、これやったらええがな」
父の耳に私の解説は届かないようだった。プリンター機器のサイトや郵便局のサイトと、続けざまに開くたび、父は感激した。
結局、父の年賀状は、無料アイテムを拾い出してダウンロード。それを組み合わせて仕上げた。宛名から差出人名まですべて筆文字で統一した。父の喜びようは、私に幸福感をもたらせてくれた。
翌年も父の依頼に応えてオリジナルな年賀状を作った。
「どないや。わしにもできへんか?」
父はパソコンで自分の年賀状を作ることに芽生えた。根気強く付き合って、父にパソコン操作を伝授した。サイトを開くことを覚えた父は、すぐ夢中になった。年賀状作成などお構いなしで、ネットサーフィンを楽しみ始めた。
自宅にパソコンがないので、父はわざわざ息子の家に日参した。これまで「あー」「いー」「うん」「おう」ぐらいで済ませていた親子の会話は、なんとも豊かなものに変わった。
親子の絆を再生してくれたパソコン、いやネットに、感謝してもし足りない。
いきなり父の頼みに驚いたの。八十半ばだが、まだまだ元気である。しかも昨年までは自分で年賀状をせっせと書いていた。筆を走らせた達筆賀状は、家族や親せきから代筆を頼まれるほどだった。それが代筆を依頼する側に回ったのだ。
「手が震えて、うまいこと書けんのじゃ」
やはり加齢のなせるw座だった。
「親父みたいに達筆じゃないぞ、俺。それでもいいか?」
父の顔に迷いが現れた。だからといって問題が解決するわけではない。思案する父の様子が見ていられなくなった。
「パソコンで作れるけど、それでもよかったら」
「ん?パソコンかい……それは……?」
論より証拠だと考えた。パソコンを起動させると、ネット画面を開いた。
「年賀状書いてくれや」
いきなり父の頼みに驚いた。八十半ばだが、まだまだ元気である。しかも昨年までは自分で年賀状をせっせと書いていた。筆を走らせた達筆賀状は、家族や親せきから代筆を頼まれるほどだった。それが代筆を依頼する側に回ったのだ。
「手が震えて、うまいこと書けんのじゃ」
やはり加齢のなせるワザだった。
「親父みたいに達筆じゃないぞ、俺。それでもいいか?」
父の顔に迷いが現れた。だからといって問題が解決するわけではない。思案する父の様子が見ていられなくなった。
「パソコンで作れるけど、それでもよかったら」
「ん?パソコンかい……それは……?」
論より証拠だと考えた。パソコンを起動させると、ネット画面を開いた。
「パソコンのう?ハイカラ過ぎるんちゃうか」
「ほら、こない簡単にできるんや」
年賀状制作でウェブ検索した。あっけにとられた顔で画面を食い入るように見つめる父が可愛く見えた。年賀状デザイン集を選んで開いた。
年賀状の一覧が画面に広がった。
「おお~!こりゃ見事なもんじゃ」
デザイン例から和風を選ぶと、父の目は丸くなった。伝統的な新年の絵柄を背景ににした達筆な筆使いの年賀状が並んでいる。
「こんなのをパソコンで作れるんかい?」
父が指さした年賀状は、謹賀新年の文字が漆黒の隅を含んだ筆で書かれたものだった。父が例年書きあげていた年賀状に似ているが、その差は歴然だった。
「パソコンやったら簡単じゃ。ネットで年賀状のデザインや絵柄が無料で手に入れられるさかいな」
「うんうん。ほうけ、これやったらええがな」
父の耳に私の解説は届かないようだった。プリンター機器のサイトや郵便局のサイトと、続けざまに開くたび、父は感激した。
結局、父の年賀状は、無料アイテムを拾い出してダウンロード。それを組み合わせて仕上げた。宛名から差出人名まですべて筆文字で統一した。父の喜びようは、私に幸福感をもたらせてくれた。
翌年も父の依頼に応えてオリジナルな年賀状を作った。
「どないや。わしにもできへんか?」
父はパソコンで自分の年賀状を作ることに芽生えた。根気強く付き合って、父にパソコン操作を伝授した。サイトを開くことを覚えた父は、すぐ夢中になった。年賀状作成などお構いなしで、ネットサーフィンを楽しみ始めた。
自宅にパソコンがないので、父はわざわざ息子の家に日参した。これまで「あー」「いー」「うん」「おう」ぐらいで済ませていた親子の会話は、なんとも豊かなものに変わった。
親子の絆を再生してくれたパソコン、いやネットに、感謝してもし足りない。