こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ありがとう

2015年10月25日 00時06分54秒 | Weblog
 ありがとう…そうお礼を言いたいのに、どうしても素直になれない。あなたのせい。結婚して三十四年、ズーッと甘やかしてきたでしょ。今更弱みを見せるなんて出来っこない。
 あの日、私は高校生、あなたはレストランのコックさん。十三違いの子どもと大人。あなたのアマ劇団メンバーに志願したのが出会いのきっかけ。高校演劇部で頑張っていた私、卒業後も芝居が続けたくてあなたに会った。
 うだつの上がらない容姿にガッカリしたけど、話しているうちにあなたの誠実さと情熱を感じた。入団を即決したのは、あなたの魅力に惹かれたから。いま正直に白状する。
 三年後喫茶店をオープンし、アマ劇団の運営とでフル活動のあなた。その姿にピンと来た。この人は私がいないと駄目だ。思い込んだら止まらない。無理矢理アルバイトに押しかけた。「ありがとう。助かるわ」と余計なお節介に笑顔を見せてくれた優しいあなた。
 近くにいて気付いた。あなたのスゴさ、そして誠実な生き方。私、恋したんだ。
芝居と仕事以外は不器用で、恋人もいないなんて可愛そう。また押しかけちゃった。今度はあなたの嫁さんになってあげるって。「オレなんか何の取り柄もないし、甲斐性なしのオッサンやで、やめとけよ」と本気にしない。でも子ども扱いされた悔しさから、無理矢理あなたが根負けするまでアタックし続けた。
 結婚してからも、あなたはいつも控え目で優しかった。私のワガママを全部受け止めてくれた。おかげで、結婚生活三十四年、子どもも四人授かってとても幸福だった。
 最近、定年退職したあなたの元気の無さが気になる。妻の私がワガママで高飛車だから、余計に参っているんだろうな。判ってるけど、私やっぱりあなたに甘えるしか出来ないの。
「オレ、結局何もしてやれなかったなあ」
 あなたの口癖。そうじゃない、あなたは私の大切な恩人。だから、お礼を言いたい。「ありがとう、幸福をくれたあなた。大好き!」

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