こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

あのころ

2019年01月18日 09時33分47秒 | Weblog
定年退職して、しばらくすると、「ハッ!」と気づいた。何にもないのだ、自分のすることが。したいことも…ない。家でゴロゴロも、長くなると飽きるし、家族の嫌みを聞き流しながらで、空しいだけだ。
(これは大変だぞ。まだ十年以上も生きていかなければいけないのに、どうする?)
 ふら~っと家を出た。目的もなく歩いた。いつの間にか辿り着いたのは……。
 廃止寸前まで追い詰められながら、図太く生き残った国鉄赤字ローカル路線。今は北条鉄道に変身して一時間に一本レールバスを走らせている。その始発駅、北条町駅の駅舎だった。高校の通学や勤め始めた加古川へ行くのに、毎日利用した駅舎は、もうアk下も形もない。立派なビルになっている。
 ふと思いついた。学校につながる乗り継ぎ駅まで五つの小さい駅がある。その駅舎はどうなっているだろうか?懐かしい思い出を追っかけ巡ってみよう!……かと。
 線路に沿って歩いた。田園地帯のど真ん中を縦断するレールバスの軌道の側道や、農道、あぜ道…と、その場任せで歩いた。
 時々レールバスが一両仕立てでとことこと走る。のんびりした風景が続く。いつしか心は穏やかな癒しを手にしていた。
 北条鉄道の終着駅、粟生駅に辿り着いた時、わたしが余生の日々に感じた焦燥感は微塵もなかった。胸を張ると、生きている実感があった。晴れ晴れした気持ちはいつ以来だろうか。
プラットホームにレールバスが到着スト、ぞろぞろと乗客が降り立った。学生の姿がかなり目立つ。わたしが通ったように彼らも頑張っている。あの頃の記憶が鮮やかに蘇る。
あの日以来、ローカルトレイン北条鉄道の沿線ウォークは、今も続いている。生きることであくせくする日々のストレスを忘れさせてくれる。四季折々の魅力を惜しげもなく楽しませてくれる、何とも贅沢な散歩である。
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