『桜咲く 電文届いて 四十二年』
(さくらさく でんぶんとどいて しじゅうにねん)
『俗に言う 花は莟と 再覚す』
(ぞくにいう はなはつぼみと さいかくす)
『水温む 吾子の写真の 笑い顔』
(みずぬるむ あこのしゃしんの わらいがお)
『春不況 みんながみんな 下を向く』
(はるふきょう みんながみんな したをむく)
『晩年か 若年かと 春うらら』
(ばんねんか じゃくねんかと はるうらら)
『豆の花 静かに咲きし 豆の花』
(まめのはな しずかにさきし まめのはな)
『逃げ水に 景色歪んで 我立てり』
(にげみずに けしきゆがんで われたてり)
『仏前の 彼岸の菓子を 盗み食う』
(ぶつぜんの ひがんのかしを ぬすみくう)
『春深む コートを囲む カラス網』
(はるふかむ こーとをかこむ からすあみ)
『麦飯に とろろを掛けて 春朧』
(むぎめしに とろろをかけて はるおぼろ)