自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

科学の“たのしさ”にゾッコン,Aさん

2012-12-24 | 随想

理科離れって言われかけてから久しいのですが,久々に「ボク,理科,大好き」ってはっきり口にする子に出会いました。「ほほう,これはこれは」っていう新鮮な感じで,わたしは聞いていました。

この子はAさん。わたしたちの科学教室にときどき訪れる小学校4年生ですの。先月の科学教室では浮沈子を使った水族館を作りました。そのときに来ました。山間部の小学校を会場にお借りして開催したのですが,まちの中からわざわざ来てくれました。そういう熱心さが,作業でも光っていました。「びっくりしたら,びっくりしたように,ふしぎならふしぎなように,こころをそのまま出すことが肝心」と言うと,演示を見てそのとおり反応していました。作り方を説明すると,もう黙々。

もちろん,満足感を持って仕上げることができました。

その後,シューター(ビニル製の細長い袋に空気を入れて投げる遊び道具)で遊びに熱中。ペットボトル2本をジョイントでつないで空気と水を入れ替える遊びに集中。

それが終わって,わたしにこう言うのです。「ボクも,このジョイントがほしい」と。理由を聞くと,家で繰り返してやってみたい,この実験はとてもおもしろい,というわけです。「どうやれば手に入るの」と聞くので,「ふつうは,ネットで買うほかないと思う」と答え,ヒントを伝えておきました。お母さんが迎えに来られたので,同じことを伝え,「もしわからなかったら,わたしに連絡してください」と付け加えておきました。

その後連絡がなかったので,うまくいったのだなと思っていました。「あれだけのこだわりを持って聞いたのだから,手に入れてたのしんでいるだろうな」とわたしは想像していました。

このAさんが先日の科学教室に来ました。万華鏡を作った日です。「わくわくしている」と教えてくれました。そのとおり,ほんとうに,自分の力で工夫してやっていきました。

終わって,満足そうでした。そして,こんなふうに話したのです。

「ボク,理科,大,大,大好き。それで,ジョイントのことだけど,手に入りました。実験をしているんだけど,あんなに回さなくても,軽く揺らすだけで渦がすぐできるよ。ちょっとした動きで水が動くみたい。……」

やはり手に入れていました。ものごとを追いかけてていねいに考えようとする目が,そこには芽生えています。1月の科学教室にも参加したいと話していました。科学教室のねらいは,何かを教えようとするところにあるわけではありません。学校では学べない,科学の風景に触れて,科学するこころを心地よく感じとってもらうところにあります。Aさんのようなリピーターをどんどん発掘したいと思います。