自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

カブラハバチの越冬幼虫

2012-12-25 | 昆虫

カブラハバチの幼虫がわんさか出現する季節になると,ずいぶんやられて来ました。大抵は,どこから,こんなにたくさんの幼虫が現れるのかと驚くほどの数が,野菜に群がります。全身がほんとうに真っ黒。体長が1cm内外。

指を触れただけで,ポロッと葉から離れて落下します。

先日,ミズナで見つけてじっくり腹脚を見ると……。なんと貧弱なことか。ちょこんと付いているだけ。吸盤のはたらきがあるのでしょうか。まるで落ちることを前提にした備えのようにさえ見えます。

容易に落ちるのは明らかに身を守る作戦だと思われます。攻撃的でなく,まったくの防御そのものです。しかし,非常に積極的な防御です。落ちると,地面でからだをUの字に曲げたまましばらくじっとしています。

厳冬期は,大半が地中で蛹になっていることでしょう。まだ蛹になり損なっている個体が,時折雪が降りかかる葉にいるというわけです。アオムシ同様,大した耐寒性を有しています。葉にくっ付いているのは,もちろんそれを食しているからなのです。実際,口を動かして貪欲に食べています。葉は,ある場所では無惨に食べられています。

個体は意外に元気そうです。地面に落ちた個体を葉においておくと(上写真),すこし経ってからからだを伸ばして動きかけました。ついでに,排泄物も出しました。

歩くのが結構速く,排泄物を落としてこんなに移動しました。

先に野菜とかミズナとか書きましたが,わたしがこれまでに被害を被ったものでいちばんひどかったのはダイコンです。軒並み,葉が葉脈だけになりました。農薬を撒くのが嫌なので,そのままにしていると,少しだけ葉が復活しました。しかし,収穫量は激減です。太さも期待外れ!

この幼虫は他にアブラナ,カブなどのアブラナ科植物の葉を食い漁るので,俗に「菜の黒虫」と呼ばれているとか。わたしは「黒虫」とだけ呼んできました。確かに,アブラナ科植物を栽培するにはこの虫に相当やられるのを覚悟しなくてはなりません。

ところがふしぎなことに,「これぞ,カブラハバチの成虫だ」というものを実物では見たことがないのです。あるいは,見ているのにそれと気づいていないのでしょうか。たくさんいるはずですが,日常的にはまったく気にかけていないのでしょうか。成虫の出現期には,是非,この目でしかと目撃したいものです。

ところで,この虫のことで気になることがいくつかあります。上で書いたこととも重なる点がありますが,敢えて書いておきます。

その1。色が真っ黒いこと。緑色の葉に黒い地肌! 目立つといえばそのとおり,はっきり目立ちます。天敵には見えやすいはず。体表温度の加減からいえば,激しい影響があると思われます。以上はデメリットらしき点。メリットらしい点といえば,地面に落ちると土の色と混ざってわかりにくくなるぐらいでしょうか。つまり,土色に似せた保護色とか。これは人間の勝手な解釈に過ぎないでしょうが。

その2。体表が驚くほど凸凹していること。筋肉モリモリといった感じすらします。頻繁に地面に落ちているような気がしますから,振動から受ける影響を最小限にとどめるとか,からだの曲げ伸ばしを柔軟にできるとか,そんなメリットがあるのかもしれません。

その3。自然界の天敵は何なのでしょう。咄嗟にはクモやスズメ,ヒヨドリ,カマキリ,そんなものが浮かびます。しかし,自分の目で確かめたわけではありません。これはあくまで理屈上の話です。

それにしても,ふしぎな,そして耕作者には迷惑な幼虫です。