自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

タンポポを訪れた昆虫(その18)

2013-05-07 | 昆虫と花

タンポポの花に,大きな幼虫が付いていました。近寄って確かめると,花を食べていました。

体長は5cm。体色は緑を基調にして,白い紋が行儀よく列になって並んでいます。その紋は黒い縁取りがあります。さらに,体側には橙色の太めの線が,節毎に途切れ途切れにあって,その下には白い線がずうっと続いています。

この特徴を拠り所にして検索した結果,アヤモクメキリガの幼虫とわかりました。鱗翅目ヤガ科セダカモクメ亜科に属するガの仲間です。

これだけ派手なのは,たぶん警告色だからでしょう。敢えて目立つ色合いをして,外敵から身を守る戦略かと思われます。

結局,タンポポはずいぶん食べられていました。この幼虫は,食草の幅が広くて,その他スイバ,ダイズ,ユリ,ジャガイモ,ネギなど多岐にわたっているようです。食樹もあって,サクラの葉も食するとか。

これだけ適応性があるということは,生存に有利だということでもあります。

眼が半円を描くように並んでいます。丈夫な顎をもっています。食欲を支えるための消化器官・感覚器官が整っている一端が窺えます。

このあとの生態なのですが,夏前には地中で前蛹になり,秋を迎えてようやく蛹化すると解説されています。そして11 月に羽化し,成虫で越冬するという話です。つまり,今はもりもり食べなくてはならない時期だというわけです。

 


ジャコウアゲハ観察記(その205)

2013-05-07 | ジャコウアゲハ

アゲハの成虫メスには子孫を残すことがいちばんの関心事。というか,卵を産むために生まれて来ているといっていいでしょう。

羽化して間もなく,そこにオスが現れるのはふつうの光景です。そして交尾します。明らかに,雌雄の判別がなされているのです。それには翅の色合いが大きく関係しているでしょう。

交尾を終えると,産み付けるための草ウマノスズクサを探します。とにかく必死で探します。地上すれすれに生えた雑草にあちこちとまる,木の葉にもとまる,そんな感じで幼虫の食草を探し回ります。

ふしぎな話ですが,とまった瞬間に食草がわかるようにしくみが体内に整っています。感覚器官が発達しているわけです。ただ,100%の確率で見つけることができるかというと,そうでもありません。食草にとまったかと思うと,すぐに離れることもしばしばなのです。見ていると,「オヤッ?」と思えてくるほどです。

それにしても,一瞬にして見分ける能力はどこにあるのでしょう。じつは,前肢の先にとくべつな毛が生えていて,それが食草の表面に触れた瞬間に判別できるのです。下写真の矢印のところに黄色い毛が生えています。この部分に一際密集していて,ブラシ状になっているのがわかります。 

 

この部分だけを拡大してみると,よくわかります。 

 

メスにだけ備わったこの毛がポイントだったのです。このことがはっきりわかったのは研究者(JT生命誌研究館)による追求の成果です。

それによると,この感覚毛が食草に触れた瞬間,食草がもつとくべつな化学物質を感じるのだそうです。つまり,毛から脳へ情報が伝達され,識別されるわけです。ということは,毛が味見をする特殊な装置ということ! 

ひらひら飛びながら,しきりに草や木の葉を触る姿と重ねて考えると,納得できます。生態の扉をまた一つ開いた研究者に拍手,です。