自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

フタモンアシナガバチの巣作り(続々)

2013-05-22 | 昆虫

2日前から,フタモンアシナガバチの姿を見かけなくなりました。巣に戻ってこないと,卵・幼虫の成長はそこで止まります。否応なく餓死せざるをえません。自然の掟です。

心配して,昨夕見ました。やはり姿はありません。やはり成虫になにかがあったのです。これは幼虫たちにとって非常時です。どうなるかと思い,今朝,確認しました。すると,どうでしょう。巣はアリだらけ!

アリは敏感に嗅ぎ分けてちゃんと現れました。たぶん,腐敗臭でもしていたのではないでしょうか。

カメラを据えて,しばらくの間,観察していました。アリたちは巣穴に潜り込んで,ときには幼虫の身を持ち出してきました。

そして,間もなく,数匹が力を合わせ幼虫のからだを引きずり出しました。それでも出にくいと,そこを通りかかったアリが助けました。

こんな状況が,他の巣穴にも見られました。

幼虫が引っ張り出され,部屋のなかにはアリが入って,食べ尽くします。

ついに,成虫は帰ってくることはありませんでした。自然界は危険に満ちています。食物連鎖のバランスのなかで,それぞれのいのちは生き長らえていきます。厳しいといえばそうですが,それは人間の感情を入れた解釈なのであって,“食べる・食べられる”という関係は粛々として,そして綿々として続いていきます。

 


ジャコウアゲハ観察記(その219)

2013-05-22 | ジャコウアゲハ

アゲハは,ふつう葉の裏側に産卵します。それはその方が,天気や外敵等による被害を最小限にとどめる上で都合がよいからでしょう。ことばを換えると,安全対策の理に叶っているといえそうです。

しかし何度か取り上げてきたことなのですが,必ずしも裏側というわけでなく,時として他の箇所にも産卵する場合があります。葉の表側に産み付けられた卵を初めて見たとき,わたしは「これは珍しい!」と感じた記憶があります。

以来気になって見ていますが,確かに例外例でありながら,意外に見かけることがあるのです。もしかすると,1%ぐらいの確率で産み付けられるのかもしれません。

庭の植木鉢で,1枚の葉に3個もの卵が行儀よく並んでいるのを見かけました。こういう例はいたって珍しいといえるでしょう。

肝心なのは,どうやってそういうことが起こりうるか,想像してみることでしょう。そこに動物行動学のおもしろさが垣間見えそうです。わたしの推測は次のとおりです。

3個は,同一成虫が同じときに産み付けたものと考えてまちがいはないでしょう。「では,なぜ表側に?」。これがふつう浮かんでくる疑問です。産卵中の格好を描くと,必ず前足を高いところに引っ掛けてからだを固定します。そうして,腹をぐうっと曲げる姿勢に移って,葉の裏に卵をくっ付けます。それが終わると,ひととき休んで,また同じ動作を繰り返します。3個産む場合は,三度です。すると,必然的に卵は互いに近くに付くことになります。

表側になったのは,たぶん,排卵口が接触した箇所が偶然そこだったからでしょう。アゲハは葉の裏に産み付けたとばかり思っているはずです。だって,その感覚こそが生まれつき備わった本能なのですから。

この程度のズレ,多様さは起こって当然です。自然の事象・現象はいつも模範解答のような結果を提示してくれるわけではありません。杓子定規に考えるとたいへん。観察者はファジーさをたのしめばいいのです。