自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

突然のヤモリ

2014-02-19 | 生物

夏,夜になると窓ガラスを盛んに訪れ,昆虫を貪り食っていたヤモリは今,冬眠中。扁平な体型にピッタリ合う場所を見つけて,静かに休眠しています。

農業用資材を整理していると,そのヤモリが肥料袋の下から突然出てきました。「アッ,こんなところにヤモリが! 申し訳ない!」と瞬間思いました。「せっかく居心地よく眠っていたのに!」。ヤモリはそう感じたようで,迷惑そうでした。緩慢な動きは,その気持ちをぴったり表しているみたいに感じました。

迷惑ついでに,「せっかくなので,ゆっくり写真を撮らせて」と思いたちました。動きがほとんどないので,被写体としては上等です。素人観察者としても,それなりにからだを注意深く見ていけます。

瞳孔が僅かに縦方向に開いています。視神経がはたらいて,外界を意識している証拠です。 


尻尾が切れています。危険な目に遭った際自分で切ったか, 外敵に襲われたか,でしょう。尻尾の付け根がやや膨らんでいるように見えます。オスではないでしょうか。

 
切れた部分を見ると,丸みを帯びて体内器官を保護しているのがわかります。たぶん,尻尾は再生へと向かうでしょう。


左の前肢を見ると,先に爪が付いています。この爪は相手を引っ掻いたり,木・板のような軟らかなデコボコ面を昇り降りする際に力を発揮すると思われます。


鼻を見ていると,口を僅かに開きました。尖った歯が隙間をつくって並んでいます。肉食動物であることがうかがえます。 


すっかり休んでいるときは,瞳孔は完全に閉じています。眼球全体が,外に膨らんだようにして付いています。この付き方は,前方の餌を凝視するのに役立ちそうです。

目の後方には,耳孔が開いています。空洞になって,奥に続いています。この構造で,小さな音を敏感にキャッチします。ガラスに付いたヤモリを捕獲しようとして,そっと近寄っても,みごとに逃げられてしまうのが常ですから。 

 

 
とくべつに仰向けになってもらって……。


そうして,肛門(矢印)の位置と肢裏(指裏)を確認しておきました。


指裏には,“指下板”と呼ばれるウロコ状の突起が並んでいます。それは,昔使った洗濯板のデコボコにそっくり。突起には細かな毛が生えていて,接触面の僅かなデコボコに引っ掛けで移動します。その威力は,ご存知のようにガラス面でも如何なく発揮されます。


ヤモリが大好きな人がいます。大の苦手という人もあります。ヤモリは漢字で,“守宮”“矢守”などと書きます。字義は『家守』。家を守るという,ありがたい文字が当てられた動物なのです。毒を持っているわけではありません。

ときにはそんなことを思いながら,静かに見守っていきたいですね。被写体になってくれた『家守』さんに感謝。あとしばらく,休んでおくれ。