ソメイヨシノ百年,ヤマザクラ三百年。こういわれることがあります。ソメイヨシノの寿命は長くても百年あたりで,ヤマザクラはそれよりずっと長生きするというわけです。これは品種の特性でどうしようもないことです。
山に入ってヤマザクラを見て,「枯れているなあ」「弱っているなあ」と感じることはめったにありません。その点,ソメイヨシノは逆です。春を彩るすてきな花なのに,じつに弱々しいのです。人の手厚い見守り抜きでは育ち切れません。幹に穴が開いたり,樹皮がボロボロ崩れたり。管理にもよるでしょうが,生命力という点から見ると両者には雲泥の差があります。
近くの公園で育つソメイヨシノは軒並み地衣類で覆われ,一目でなんだか気の毒なような。地衣類は寄生植物ではないので寿命には直接関係しないといわれますが,こうした姿はわたしには健康には見えないのです。とくに樹齢がかなりのサクラともなると,貫禄の地衣類といった感もしますが,中には樹皮がめくれ,幹が腐りかけている例も散在します。
近寄って一本一本見てみました。「うーん」。
樹皮が剥がれた部分が露わになっています。雨が入ってどんどん朽ちていくでしょう。
これらの木々が枯れかけるのはそう遠くないでしょう。後継木を植栽しない限り,空白期間ができるのは目に見えています。“ソメイヨシノ百年”が念頭に置かれていそうにありません。こういう例では先見性をもって手を打っていくのがよさそう。