へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

水戸黄門と美都田吾作

2011-06-09 22:58:06 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

ぼくらのクラスが文化祭で発表する「水戸黄門」は、普通にやっただけでは面白くなかろう、とたかのりが余計なことを言い出して、藤川家のご先祖様である「美都田吾作」との対決にしようぜ、ということになってしまった。
「田吾作のさ、料理食ったやつがげりっぴーになっちってよ、そこへ黄門が首を突っ込んでややこしくなる、という内容はどうよ」
何考えてんだ。
「だれが田吾作やるんだよ、やだよ、ぼくは」
「俺もやだなあ」
と、ベランダを向いていたみきおが窓を指をさす。
「だって、ほら」
「あ」
ベランダには田吾作をぶったたく近衛少将さんがいた。ぼくらにしかみえないけど。
「あれを見ちゃうと、誰だってそう思うよ」
「黙れ雛人形だもんなあ」
「でも、何で学校にいるの?」
素朴な疑問がわいた。そうだ、なんでいるんだ。
「あれは、埋められた銅像を掘り返せと抗議しにきておる」
ぼわんと現れたのは、鎧兜のおじさんだ。
「久しぶりじゃの、地方公演にいっとった」
地震以来、おじさんの劇団は、ボランティア公演をしていた。半分はギャラが必要のないの劇団だから…。
「バカ殿に文句を言っているらしいが、シカとされているようじゃの」
「それはそうだよ」
おじさんを見て、なんだかほっとするぼく。
「まあ、なんだな、芝居のことならまかせておけ。脚本も頼んでやる。黄門と田吾作の対決でよいのだな?」
「さすが、鎌倉武士、話が早い」
たかのりはおじさんと握手握手。
「本物はどこにもいっとらんと愚痴っておったようだが、何構うもんか。わしは藤原家と源氏の合わせ技で印籠なんぞに負けないからの」
と、いうだけ言って消えてしまった。
「相変わらず、近藤家の先祖は変なのばっかりだなあ」
たかのりは笑ったが、そういえばたかのりたちは近衛少将さんの子孫だけど、鎧兜のおじさんの子孫ではないんだっけな。
うらやましいだろう、と内心思ってぼくは、合同で出す出店のことで電卓をたたく野茂を見た。
本音を言えば、野茂とだったらシンデレラやってもよかったんだけどなあ。
けっこう絵になると思うよ。うん。

コメント
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