こんばんは、京よ。
で、代々のうちの家臣どもが、本家の跡継ぎを巡って大騒ぎしているって。
なんてこったい。
須庭寺の本堂で、百合絵とヤンキー弟の嫁と茶飲みをしていると、バカ弟が爆音をとどろかせて帰ってきた。
「あれでよく檀家が怒らないね」
「慣れたみたいですよ。藤川の名前がものをいうみたいで」
「へえ」
このバカ野郎な弟は本来ならば婿養子になるべきところ、かたくなに拒否をしている。
理由はかっこ悪いらしい。
「最近はやりのビッグ(バイク)には絶対乗らないんだよね。元ゾクの沽券にかかわるのかな」
弟の750ccバイクは、ぴかぴかに磨かれてそりゃもう見事なもんだわ。僧服にあっているとは思わないけど。
「おかえり」
嫁が熱いお茶を出せば、バカ弟は作務衣に着替えたもののだらしなく着崩した姿で茶をずすり。
「今日は、どこへ行ったの」
「知事だよ。法事の打ち合わせ」
と、せんべいをかぶり。
「知事も本家の騒動を知って笑っていたな。体に欠陥があるんじゃないかって」
すると、百合絵が、
「あら、どこかお悪いんですの?」
と、間の抜けた発言をして、思わずみんなで苦笑しちゃったわよ。
「まあ、結婚したくない気持ちもわからくはないが、いい加減立場をわきまえてもらわないと、種馬としての役目が果たせん」
「あら、種馬とはどのような品種ですの?」
う~ん、昔からすっ呆けたお嬢様だとは思っていたけど、この年になってもこれじゃたまらんわ。
おとなしくオーストラリアの本校の修道院にこもってりゃよかったのに、何で日本に帰ってきたのかね。
もてあまされたのかなあ、それなら納得いくけどね。