へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

鎧兜のおじさん、すり抜けて遊ぶ

2011-06-17 23:09:52 | へちま細太郎

鎧兜のおじさんが、できあがった文化祭の台本を持って現れた。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん」
「何言ってんだか」
ぼくは、ぷかぷか浮くおじさんを見上げて、思わず笑いが出る。
「何やら、陰謀の匂いが漂う学び舎であるの」
周囲をきょろきょろして、
「あんなやつまで出てきたぞ」
と、指をさせば、鳥羽伏見のおじさんが真っ青な顔をして廊下の宙を右往左往している。
そこへ赤松がひょこひょこ歩いてきて、おじさんのからだをすり抜けて行った。
「げ」
鳥羽伏見のおじさんは動きを止め、赤松を見下ろしていたがやがてふわりとその背中にはりつき肩にあごを乗せ、ぼ~とした表情で赤松とともに去っていってしまった。
やがて、
「ぎええええ」
「ひええええ」
という悲鳴が聞こえてきた。
「何でみんな赤松に取りつくんだ?」
「磁場がいいんだろ」
鎧兜のおじさんは、やがて鎧をがちゃがちゃいわせて廊下にふわふわ浮いていった。
「おお、たかひろ、いい女だの~」
入り口でたかひろをすり抜けていくと、
「いつまでたっても慣れねえ」
と、怪訝な表情の彼女にわけも言わずぜえぜえ言ってる。
「陰謀陰謀、楽しいな」
おじさんは、鳥羽伏見のおじさんを追いかけるように空中を泳いでいってしまった。
「また、やっかいな事態にならないといいけど」
好奇心旺盛な先祖をもつ、ぼくへちま細太郎でした。

コメント
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