へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

文化祭前にとんだ事件

2011-06-20 22:46:30 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

団部にいる秀兄ちゃんが、教室にやってきた。
「翔(かける)いるか」
本名で名前を呼ばれるなんて、家族にだっていないからもすんげえ違和感がある。
「なあに」
だから、ぼくも先輩に対するそれじゃなくて、親戚のお兄ちゃんのそれで応対した。
「かけるって誰だ」
教室でひそひそいう声に、
「ばか、細太郎のことだよ」
「ああ、あいつの本名かあ」
という変な会話がうねっていた。
「で、何」
ぼくは、秀兄ちゃんのところに行くと、団部の先輩たちもいる。
「げっ」
ぼくは強引に団部につれていかれるのかと思い、身構えたけど、
「嫌がるものを無理強いはしない、安心しろ」
と、先輩が答えた。
「じゃ、何のようだよ」
ぼくがハスに構えて先輩を見ると、直立不動の秀兄ちゃんはぼくをじっとみる。
「何」
「近藤家は、代々事務方で勘定方だったよな」
「はい?」
いきなり変なことを言われて、聞き返した。
「事務方?勘定方?何それ」
「美都藩35万石を支えてきた勘定方の近藤家といえば、その事務能力は幕府にも知れているほどだ」
あ~、そうなの。
「鳥羽伏見の戦いにおいての活躍では、殿の愛妾を賜るほどだったともきいている」
あ、それは単なる成り行きでそうなったって、鳥羽伏見のおじさんが言ってたから、そんな大層なものじゃないよ、と言いたいけど頭がおかしいと言われたくないから黙っていた。
「そこでだ、翔の家には若殿が居候しているときいたが、本当か」
「そうだけど…若殿って、バカ殿じゃないの~?副住職さん姉弟も含めると藤川家3バカトリオともいうけど」
と、笑いながら話すと、
「副住職というと、ご分家の孝洋さんだな」
「田舎ゾクのアタマだよ」
「それはいい、ところで、今、我々武断派は実孝さんを当主に推薦して動き始まっている」
「ナンパ兄ちゃんね」
と、ぼくがいったところでぎろりと睨まれた。
「実孝さんはそんな人じゃない」
そんな人なんだと思うけど。ぼくはそんなに親しくないけど、たまに見かけると藤川先生より気が短そうに思えるんだけどなあ。
「事務方代表の近藤家がどちらを推すのか、態度を明確にしてほしいと、叔母さんに話しておいてほしい」
秀兄ちゃんは、それだけ話すと、正確な回れ右をして先輩たちと高校校舎へと戻っていった。
「なんだあれ」
心配でドアに持たれていたしんいちが、あきれてため息をついている。
「ぼくんちも事務方だって、おとうさんがいっていたよ。今、旧家臣団が揉めているんだってさ」
「なんで、そんな騒ぎになっているの?」
「さあねえ」
「私、知ってるよ」
と、立ち聞きしていた野茂が声をかけてきた。
「藤川先生がこないだした見合いをまた断っちゃったんだって。それで、見合いを設定した武断派のもとご家老さんが怒っちゃったことから騒動が始まったみたいだよ」
「へえ」
何で野茂が知ってんの?と、この情報通な才媛をつくづく眺めると、
「だって、うちも武断派だし、そのご家老さまって母方のおじいちゃんだから」
「え?」
孟宗学園は、美都藩のミニチュア版か?
なんなんだ、この学校は…。
やっぱり、はいらきゃよかった、としんいちと顔を見合わせた。
「はあ」

コメント
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