皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

加須市 下三俣 諏訪神社

2020-05-22 23:31:36 | 神社と歴史

 古来、利根川は羽生市の川俣より南に流れ、加須市に入って川幅を広げた。三俣の地名は「鬼島」「中島」「明智島」の三つの洲がその流れを分けていた場所であったからだという。市内を流れる合の川(旧利根川)は近現代の整備により穏やかな流れを見せるが、かつては乱流であったのであろう、市内の神社の多くががその社殿を高く積んでいるのは、川の氾濫から守るためであったと思われる。

 

 縁起によれば、天平十年(739)当地を行脚していた僧教蔵上人が三俣の船人より、鬼島に怪物が蔓延り、衆人を悩ますという話を聞きつけ、一人で島に渡り七日七夜念仏を唱えたという。すると夜中に一人の女が現れて教蔵上人に十念を乞い、上人が十念を授けるとたちまち百丈の白竜に姿を変え、消えてなくなったという。

 そこで白竜の首のあったところに龍蔵寺を建て雌の銀杏を植えた。また白竜の尾の止まったところには下諏訪社(弁財天)を勧請し、雄の銀杏を植えたという。

時代は下って正徳四年(1715)大岡土佐守政春が信州諏訪から改めて諏訪社を勧請し、下社に神像を奉納した。明治になって村社となり別当を兼ねていた高徳寺は廃寺となったという。

会の川の流れが幾度となく氾濫した当地においては治水に時間と経費をかけその守として「お諏訪様」を祀り土地の開拓に当たったという。中でも旗本であった大岡家は武神としても諏訪神社を深く崇敬した。

 化政期まで三俣村であったが幕末に上三俣、下三俣の二村に分かれた。

鎮座地が市街地に近く、昭和になって人口の増加と共に氏神としての信仰の高まりから、祭事の広がりを見せ、増える氏子のために壮健な神輿が奉納されている。

また平成に入ると市街地にふさわしい立派な社務所も建設され、三俣、諏訪の中心地として境内地、社殿とも整備されている。

 

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不動岡高校発祥の地

2020-05-22 22:01:02 | 史跡をめぐり

埼玉県立不動岡高校は県内で最も長い歴史を誇る高校として知られているが、その発祥の地を記念して小さな公園が整備されている。高校の前の道を総願寺不動尊前を通り、500mほど離れた通り沿いに目立つことなく佇んでいる。

昭和十一年創立五十周年を記念して建てられた創建の碑にはその由来が刻まれている。

また、加須市指定史跡となったのは昭和六十年一月。創立百年を迎えた年のことだった。

記念碑の撰文は國學院大學学長を務めた河野省三氏。

明治十一年(1878)三月北埼玉郡不動岡村に小学校教員養成所として第十三番中学講習校を設置

         僅か弐年にして廃止。地方の有志甚だこれを惜しむ

明治十三年(1880)四月 私立會川中学校を創設

明治十七年(1884)七月 不動岡羽生中学校と改称

明治十八年(1885)北埼玉郡立中学校と改称(成田中学を合併)

         校舎敷地設備等整う

明治十九年(1886)中学校令の改正により廃校となる

         識者ら地方教育の前途を憂慮し、互いに励みて、県下唯一の中学校建立す

明治十九年    私立埼玉英和学校 を開校

明治二十七年(1894)私立埼玉和英学校 と改称 

         文部省の認定を受ける

明治三十年(1897)私立埼玉中学校 と改称

         県下より学び来るもの多くその効果広く深くあり

明治三十七年(1904)日露戦争

          戦後国内育英事業に深刻なる打撃 地方の私学はその経営困難を極める

大正十四年(1925) 有志奔走の末土地一万坪及び金三万円を添えて県に寄付し

          四月 県立不動岡中学校 設立

          多年の宿望と幾多の辛苦に報いられ校舎を現敷地に移す

昭和十一年(1936) 有志 発祥の地記念碑を建立

 多くの若者がこの地で学び、希望を抱いて巣立っていったことだろう。その創立の理念は「質実剛健」。真面目で飾り気がなく逞しい事。その言葉の由来は明治政府による「戊申詔書」のあるという。国家発展のために明治天皇が発した詔書で「国民は仕事に励み質素を重んじ、勤勉でなければならない」という内容であったという。

 個性と自由という風潮が豊かさの下に広がった現代であるが、高等教育の目的は本来自らを律し、公に尽くすものにあったのだろう。建学の苦難の歴史がそれを物語っている。

 

 

 

 

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