ほしちゃんの「続・なるようにしか、ならん」。

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「芋たこなんきん」、ありがとう…

2022-09-17 16:35:00 | エンタメ

酷評されっぱなしのままラストを迎えようとしている朝ドラ「ちむどんどん」の一方で、BSプレミアムで再放送中の2006年下期の朝ドラ「芋たこなんきん」が本日最終回を迎えた。
私は朝ドラを真剣に観るようになって10年ちょっとのシロウトだが、このドラマは大阪制作の良いところが全て込められた力作・快作で、本当に素晴らしい作品だったと思う。

このドラマの原案は故・田辺聖子。
まずヒロイン町子を演じる藤山直美と「カモカのおっちゃん」こと徳永健次郎を演じる國村隼の演技が素晴らしかった。
町子は初婚だが健次郎は再婚で、照れて横を向いたままの健次郎のプロポーズから結婚当初は別居婚。そして5人の連れ子がいる徳永家に住む事になったのだが、町子は自分とは血のつながっていない子達に自分の事を敢えて「おばちゃん」と呼ばせ、馴染んでいった。
この町子・健次郎夫婦はとにかく、しゃべるしゃべる。うまくいかない夫婦の典型がコミュニケーション不足だが、この夫婦はどんなに疲れていても夜になると焼酎を急須に入れて差しつ差されつ。

通常、長丁場になる朝ドラはヒロインの幼少期からスタートし、成長とともに俳優も代わっていく場合がほとんどだが、このドラマはあくまで現代が軸でヒロインの過去は全て回想で描く、というスタイルも斬新だった。回想での町子の父親にTOKIOの城島茂、母親に鈴木杏樹、祖父に岸部一徳などいずれも芸達者が揃い、回想にありがちな鬱陶しさは微塵も感じなかった。

またこのドラマは、日常の描写の丁寧さも見応えがあった。
同時に放送されている「ちむどんどん」が粗すぎるため余計にそう思うのだが、子ども達の成長期にありがちな小さなトラブルなどを細かく拾い上げ、リアリティに満ちた世界観を醸し出していた。
いくつも名シーン・名セリフはあるのだが、個人的には
①健次郎が町子にプロポーズした時の
「中途半端と中途半端が一緒になったら、人生満タンや!」。
②子ども達の運動会に行けなかった町子のために家で家族全員で組体操のピラミッドを作り町子に見せるシーン。あのピラミッドは泣けた…
③秘書・矢木沢純子(いしだあゆみ)が秘書を辞めて実家に帰ろうとするところを町子が懸命に説得。
「純子さんのおかげで、今まで12冊の本を出せました。13冊目も、よろしくお願いします」
と頭を下げ本を矢木沢に渡す。その本を父の枕元で読む矢木沢は本に町子の略歴のメモが挟んであるのに気づき、その略歴の最後に
「1967年10月 矢木沢純子と出会う」
と町子が追記してあるのに気づき号泣したシーン。
町子が矢木沢に
「私ね、純子さんに手紙を書こうとしたんですけど…(間)なんも書けませんでした」
の(間)で、町子はボロボロと涙を流したのだがその全く同じタイミングで涙腺が崩壊した視聴者は多いのでは。
④健次郎臨終の寸前、末娘の亜紀に子どもが生まれたと聞き見舞う家族全員で「こんにちは赤ちゃん」を歌ったシーン。
物語の最初の方で、健次郎の元に謝罪に訪れた町子。産気づいた見知らぬ女性が徳永医院で分娩する事になり、そこに偶然居合わせた町子が立ち会うのだが、生まれてすぐに町子が唄ったのが「こんにちは赤ちゃん」。
なんと、半年後の回収だ。
⑤町子がツチノコの声を「チー」とマネする(笑)。

大阪制作では前作「カムカムエヴリバディ」の評判が非常に高かったが、私は2003年下期の「てるてる家族」とこの「芋たこなんきん」は歴史に残る名作だ、と強く推したい。
(2007年下期の『ちりとてちん』を観ていなかったもので…)
しかし、あのおりんさん(イーデス・ハンソン)の「たこ芳」の関東煮、食べてみたかったなぁ…