私が隔週で楽しみにしている土曜夜のTV番組「ジョブチューン」のスペシャルが元日の夜にあり、私も楽しませていただいたのだがその放送が大炎上となった。
ファミリーマート・セブンイレブン・ローソンの大手コンビニ3社の人気商品を超一流料理人がジャッジするのだが、その中でファミマの「和風ツナマヨネーズおにぎり」を小林某というシェフが口にしようとしなかったのだ。
アナウンサーが
「…どうされましたか?」
と伺うと
「いや、いいです。食べたいっていう気にさせない」。
アナウンサーとファミマ社員が
「人気商品ですので、どうか召し上がって下さい…」
と促すと、
「ビジュアルって大事じゃないですか。おいしい、おいしくないはその先なんです」
と、独自の理論を展開。
現場はもちろん、我々茶の間も凍りついた。
まるで、握手を求めた相手に殴りかかられたような雰囲気だ。
ファミマ社員は
「沢山の皆様にご支持をいただいている商品ですので…」
と、涙を流しながら懸命のプレゼン。
ようやく小林シェフは重い腰を上げてひと口だけ試食し、不合格のジャッジを下したのだがその後TBSはもちろん、シェフのレストランに対してもネットの攻撃が殺到したそうなのだ。
果たして、そんなにおいしくないのか。
去年のローソンの喜多方ラーメンしかり、不合格となった商品の方に惹かれてしまう。
いくらシェフに酷評されようと、人気商品だけあってこんなに並んでいる。
ひょっとして、私のような不合格狙いの客が増えてさらに売れているのだろうか…?
手に取ってみる。

開封してみる。

大量生産商品なのに、まるで1個1個手で握ったような自然なフォルム。
三角形のおにぎりは海苔がフィルムで分離されており、左右から引っ張る事で海苔とごはんが合わさりパリッとした食感が楽しめるのだが、この直巻きされたウェットな海苔の方がむしろ昔母親に握ってもらったかのような郷愁を覚える。
小林シェフは、このビジュアルの一体何が気に入らなかったのか?
かじってみる。

まず、ごはんにはしっかり味がついている。
もう少し塩分は控えめでもよいのだが、コレぐらい濃くしないと悪くなってしまうのだろうか?
ツナはほとんどわからないぐらいしか入っていないように見えるが、味はする。
コレはコレで、全然悪い商品などではないように思える。
むしろこのクオリティが日本全国の店頭で税込みたったの118円で提供されている、という事は驚きでしかなく、いくらものづくりが衰退しただのGDPが3位に後退しただのと言われようとニッポンとは本当にスゴい国だ、と心から思う。
私は実家がうどん屋だった事もあり、食事を作って下さった方へのリスペクトはある方だとは思っている。
作った人を前にして
「ビジュアルが悪いから、食べる気になれない」
などとのたまう失礼さは、持ち合わせていない。
小林シェフは、軽井沢で1日1組限定、客単価4万円のフルコースを提供するレストランを営まれているそうで、それは大変立派な事なのだがいくらTVの企画とはいえこのおにぎりを何処と比べているのか。
酷評されたおにぎりを通して、物質は豊かになったが人の心は却って貧しくなってしまったこの国の縮図が見えるのである…