(1)マイナンバー法案が今国会で成立しそうだ。
(批判1)国家による個人情報独占管理
(批判2)情報漏洩でプライバシーが丸裸
実は、この法案には(1)の批判とは次元の異なる深刻な問題がある。
(2)問題1・・・・この法律ができても、国民が期待したことは実現しない。
<例1>マイナンバーができても、事業経営者、農家、政治家などの脱税を取り締まることはできない。銀行口座の名寄せもしないし、口座とマイナンバーのリンクもしない(個人情報保護のため民間には使わせない、と既得権益層を守るために言っている)。サラリーマンだけに厳しい不公平な税金徴収構造はそのまま温存される。むろん、政治資金の監視にも使えない。
<例2>医療機関の診療報酬チェックにも使えない。そもそもレセプトの電子化の義務化さえ、医師会の反対でできていない。電子カルテを患者がどこでも自由に持ち歩く・・・・などということもできない。
<例3>生活保護不正受給防止のための所得把握にも使えない。
(3)では、メリットはあるのか?
引っ越しの際に市役所に提出する書類が1枚で済む。・・・・その程度のメリットしかない。
(4)住民基本台帳のシステム構築に400億円近く、維持運用経費を毎年150億円程度かけてきたが、住基カードの普及はわずか5%。誰も知らないから身分証明にも使えなかった。カードはそのままお蔵入り、壮大な無駄遣いに終わった。
今回も同じ轍を踏むのではないか。
(5)官僚は、検討の段階で2つのワーキンググループだけを作った。すなわち、(a)個人情報保護と(b)情報連携基盤技術のGWだ。そこには、官僚とお抱えの「ITゼネコン」なるITベンダーたちの思惑があった。
(a)のWGで「個人情報保護を徹底すべき」と綺麗ごとを並べ、(b)のWGで「そのためには住基ネットとは別に巨大なシステムが必要」という結論を導いた。さらに、新たな連携システム構築に3,000億円、その他諸費用込みで5,000億円が必要、などと算盤をはじいた。
連携システムはせいぜい100~200億円だ、と新進IT企業から指摘され、政府は今、300億円でできる、と言い始めた。10倍以上サバを読んでいたわけだ。が、彼らはまだ諦めていない。新たな機構のシステムに数千億かかる、などと言い出している。
(6)問題2・・・・希望者向けだった住基カードと異なり、今回は全員にカードを配る。
カードの代わりに携帯やスマホなども使ったほうが便利だが、それではICカード関連企業が儲からない。だから強制発行とした。
官僚向けのオマケもある。事業仕分けで10人もの天下りを受け入れている、と問題になっていた総務省の団体を衣替えし、より強固な天下り機関として延命させる計画だ。
(7)なぜこんなことになるのか。
「個人情報保護」という錦の御旗を使って医師会などの反対を後押しし、(5)で述べた新たな機構の巨大システムを利権に仕立てていく。
その過程で、官僚お得意の霞ヶ関文学を駆使して、あたかも最高裁が「政府による個人データの一元管理は違憲だ」と言ったかのように宣伝している。国民もマスコミも彼らに操られ(そのことに気付かず)、「反対」を叫んできた。
かくて、「ITゼネコン」と官僚が癒着してできた利権構造がますます肥え太る。
□古賀茂明「焼け太る官僚とITゼネコン ~官々愕々第62回~」(「週刊現代」2013年5月11・18日号)
【参考】
「【消費税】その欠陥構造 ~政府案では所得分配の公平性を保てない~」
「【消費税】増税に係る民主党案と自民党案との異同 ~財務族~」
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(批判1)国家による個人情報独占管理
(批判2)情報漏洩でプライバシーが丸裸
実は、この法案には(1)の批判とは次元の異なる深刻な問題がある。
(2)問題1・・・・この法律ができても、国民が期待したことは実現しない。
<例1>マイナンバーができても、事業経営者、農家、政治家などの脱税を取り締まることはできない。銀行口座の名寄せもしないし、口座とマイナンバーのリンクもしない(個人情報保護のため民間には使わせない、と既得権益層を守るために言っている)。サラリーマンだけに厳しい不公平な税金徴収構造はそのまま温存される。むろん、政治資金の監視にも使えない。
<例2>医療機関の診療報酬チェックにも使えない。そもそもレセプトの電子化の義務化さえ、医師会の反対でできていない。電子カルテを患者がどこでも自由に持ち歩く・・・・などということもできない。
<例3>生活保護不正受給防止のための所得把握にも使えない。
(3)では、メリットはあるのか?
引っ越しの際に市役所に提出する書類が1枚で済む。・・・・その程度のメリットしかない。
(4)住民基本台帳のシステム構築に400億円近く、維持運用経費を毎年150億円程度かけてきたが、住基カードの普及はわずか5%。誰も知らないから身分証明にも使えなかった。カードはそのままお蔵入り、壮大な無駄遣いに終わった。
今回も同じ轍を踏むのではないか。
(5)官僚は、検討の段階で2つのワーキンググループだけを作った。すなわち、(a)個人情報保護と(b)情報連携基盤技術のGWだ。そこには、官僚とお抱えの「ITゼネコン」なるITベンダーたちの思惑があった。
(a)のWGで「個人情報保護を徹底すべき」と綺麗ごとを並べ、(b)のWGで「そのためには住基ネットとは別に巨大なシステムが必要」という結論を導いた。さらに、新たな連携システム構築に3,000億円、その他諸費用込みで5,000億円が必要、などと算盤をはじいた。
連携システムはせいぜい100~200億円だ、と新進IT企業から指摘され、政府は今、300億円でできる、と言い始めた。10倍以上サバを読んでいたわけだ。が、彼らはまだ諦めていない。新たな機構のシステムに数千億かかる、などと言い出している。
(6)問題2・・・・希望者向けだった住基カードと異なり、今回は全員にカードを配る。
カードの代わりに携帯やスマホなども使ったほうが便利だが、それではICカード関連企業が儲からない。だから強制発行とした。
官僚向けのオマケもある。事業仕分けで10人もの天下りを受け入れている、と問題になっていた総務省の団体を衣替えし、より強固な天下り機関として延命させる計画だ。
(7)なぜこんなことになるのか。
「個人情報保護」という錦の御旗を使って医師会などの反対を後押しし、(5)で述べた新たな機構の巨大システムを利権に仕立てていく。
その過程で、官僚お得意の霞ヶ関文学を駆使して、あたかも最高裁が「政府による個人データの一元管理は違憲だ」と言ったかのように宣伝している。国民もマスコミも彼らに操られ(そのことに気付かず)、「反対」を叫んできた。
かくて、「ITゼネコン」と官僚が癒着してできた利権構造がますます肥え太る。
□古賀茂明「焼け太る官僚とITゼネコン ~官々愕々第62回~」(「週刊現代」2013年5月11・18日号)
【参考】
「【消費税】その欠陥構造 ~政府案では所得分配の公平性を保てない~」
「【消費税】増税に係る民主党案と自民党案との異同 ~財務族~」
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