(1)本屋大賞は、書店員が売りたい本を選ぶ。
今年の本屋大賞は、百田尚樹『海賊と呼ばれた男』(講談社)が選出された。
(3)『海賊と呼ばれた男』は、出光興産の創業者、出光佐三がモデル、とされる。
出光は、1953年、国際的に孤立していたイランにタンカーを送り込み、石油メジャーに対抗して日本に石油を輸入した。いわゆる「日章丸事件」で、これを知った百田は、どうしても描かなければならないという使命感を抱いたらしい。
だが、出光は手放しで褒めてよい会社ではない。
(4)出光興産の創業者、出光佐三は、1販売店から従業員1万人、年間売上高1兆5千億円まで大きくした社主だ。その人間尊重の大家族主義によって労働組合はタブーだった。
定年制がなく、首切りがない温情主義は、他方で、自分の意見や生き方に異議を申し立てる役員や社員は容赦なく切り捨てた。
(5)百田は、(4)のようなマイナス面を描かない。
そんな百田は、「Will」2012年10月号で安倍晋三と対談し、最大限に安部を持ち上げた。そこで百田は、「戦後レジームからの脱却」ではなく「自虐史観からの脱却」と主張することを提案した。「橋下徹・大阪市長については大変、期待しています」
書店員たちは、こんな百田の実像を知った上で選んだのか?
□佐高信「本屋大賞の男」(「週刊金曜日」2013年5月10日号)
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