(1)日本における表現の自由について調査した国連特別報告者、デービッド・ケイ米カルフォニア大学教授(国際人権法)は、4月19日、暫定的な調査結果を報告した【注】。
ケイ氏は、
<特定秘密保護法と政府による「中立性」と「公平性」への絶え間ない圧力が、自己検閲を生み出しており、報道の独立性は重大な脅威に直面している>
と表明した。また、
<自民党が憲法21条について、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とする憲法改正草案を出している。これは国連の「市民的及び政治的権力に関する国際規約」19条に違反している>
と警告した。
(2)ケイ氏は、19日に日本外国特派員協会で会見した際、最初に、
<私に会ったジャーナリストの多くは冒頭から「匿名でお願いします」と言った。異例のことだ。彼らの多くが、有力政治家からの間接的な圧力によて、仕事から外され、沈黙を強いられた、と訴えている>
と語った。
(3)ケイ氏はまた、政治的公平を定めた放送法4条を根拠に電波停止に言及した高市早苗・総務相発言を取り上げ、
<政府は放送法4条を廃止し、メディア規制から手を引くべきだ>
と提言した。
(4)ケイ氏が、
<記者クラブ制度は廃止すべきだ>
と断言したのは画期的だ。ケイ氏は、記者クラブを“press club”ではなく“kisha club”と英語表記していて、日本にしかない排他的な情報カルテルと正確に捉えている。
ケイ氏は、
<記者クラブ制度は調査報道を妨げ、メディアの独立性に対する障害になっている>
と指摘。また、
<クラブと閣僚や高官とのオフレコ懇談によって、情報はオープン化しているように見えるが、人民はそれにアクセスできない。懇談やレクチャーのメモはメディア内部で広範囲に回覧されている。しかし、記者クラブ外では不透明さがある。同制度は情報へのアクセスを抑止するツールになっており、人民が、政府が何をしているかを知ることができなくなっている>
と強調した。
(5)ケイ氏は、自民党が2014年11月にテレビ各局に威圧文書を送り、その1週間後にテレビ朝日の「報道ステーション」へ文書を送ったと指摘。その上で、
<オフレコ懇談メモが広く配られ、特に放送関係者は圧力を感じている。例えば、15年2月24日には、菅義偉官房長官がオフレコ懇談で、番組名は言わず、自分の放送法の解釈に合わない番組があると繰り返し批判し、そのメモが記者の間で回し読みされたと訊いた>
と述べた。
(6)ケイ氏はまた、政府の影響力に抵抗できるジャーナリストの横断的な幅広い職業的な組合組織をつくるべきだと延べ、報道評議会の設置を奨励した。
(7)4月20日の主要紙の取り扱いは、
(a)「東京新聞」だけ、ケイ氏の記者クラブ廃止提言を正確に伝えた。
(b)「朝日新聞」は、「記者クラブの排他性も指摘した」とだけ報じた。
(c)「毎日新聞」は、ケイ氏の会見を載せたが、記者クラブに関する発言には25日のメディア面の要旨で触れただけだ。
(d)「読売新聞」は、ベタ記事で放送法改正を訴えたとだけ書いた。
(e)「産経新聞」は、会見記事を載せず、25日にweb版で<国連特別報告者とは一体何者なのか?>などの見出し記事を載せた。
(f)沖縄の二紙は、21日の社説でケイ氏を明確に支持した。
①「琉球新報」は、<氏が提言したように、放送法4条は廃止すべきだ>と主張。
②「沖縄タイムス」も、<ケイ氏は「公平か公平でないかを政府がコントロールしてはならない」と強調する。自由民主主義の核心を言い当てた言葉だ>と評価した。
【注】「【メディア】弾圧 ~国連「表現の自由」調査官が懸念を表明~」
□浅野健一(同志社大学大学院教授)「国連の「記者クラブ」廃止論を隠す大新聞」(「週刊金曜日」2016年5月13日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【メディア】弾圧 ~国連「表現の自由」調査官が懸念を表明~」
「【メディア】オバマの広島訪問に大賛辞の朝日紙、立ち直りは疑問」
「 【メディア】への政治家による圧力は犯罪とならないのか ~停波問題~」
「【メディア】放送の「自由」と「公平・公正」とは ~停波問題~」
「【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~停波問題~」
「【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~」
「【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~」
「【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」」
「【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 」
「【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視」
「【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言」
「【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~」
「【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~」
ケイ氏は、
<特定秘密保護法と政府による「中立性」と「公平性」への絶え間ない圧力が、自己検閲を生み出しており、報道の独立性は重大な脅威に直面している>
と表明した。また、
<自民党が憲法21条について、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とする憲法改正草案を出している。これは国連の「市民的及び政治的権力に関する国際規約」19条に違反している>
と警告した。
(2)ケイ氏は、19日に日本外国特派員協会で会見した際、最初に、
<私に会ったジャーナリストの多くは冒頭から「匿名でお願いします」と言った。異例のことだ。彼らの多くが、有力政治家からの間接的な圧力によて、仕事から外され、沈黙を強いられた、と訴えている>
と語った。
(3)ケイ氏はまた、政治的公平を定めた放送法4条を根拠に電波停止に言及した高市早苗・総務相発言を取り上げ、
<政府は放送法4条を廃止し、メディア規制から手を引くべきだ>
と提言した。
(4)ケイ氏が、
<記者クラブ制度は廃止すべきだ>
と断言したのは画期的だ。ケイ氏は、記者クラブを“press club”ではなく“kisha club”と英語表記していて、日本にしかない排他的な情報カルテルと正確に捉えている。
ケイ氏は、
<記者クラブ制度は調査報道を妨げ、メディアの独立性に対する障害になっている>
と指摘。また、
<クラブと閣僚や高官とのオフレコ懇談によって、情報はオープン化しているように見えるが、人民はそれにアクセスできない。懇談やレクチャーのメモはメディア内部で広範囲に回覧されている。しかし、記者クラブ外では不透明さがある。同制度は情報へのアクセスを抑止するツールになっており、人民が、政府が何をしているかを知ることができなくなっている>
と強調した。
(5)ケイ氏は、自民党が2014年11月にテレビ各局に威圧文書を送り、その1週間後にテレビ朝日の「報道ステーション」へ文書を送ったと指摘。その上で、
<オフレコ懇談メモが広く配られ、特に放送関係者は圧力を感じている。例えば、15年2月24日には、菅義偉官房長官がオフレコ懇談で、番組名は言わず、自分の放送法の解釈に合わない番組があると繰り返し批判し、そのメモが記者の間で回し読みされたと訊いた>
と述べた。
(6)ケイ氏はまた、政府の影響力に抵抗できるジャーナリストの横断的な幅広い職業的な組合組織をつくるべきだと延べ、報道評議会の設置を奨励した。
(7)4月20日の主要紙の取り扱いは、
(a)「東京新聞」だけ、ケイ氏の記者クラブ廃止提言を正確に伝えた。
(b)「朝日新聞」は、「記者クラブの排他性も指摘した」とだけ報じた。
(c)「毎日新聞」は、ケイ氏の会見を載せたが、記者クラブに関する発言には25日のメディア面の要旨で触れただけだ。
(d)「読売新聞」は、ベタ記事で放送法改正を訴えたとだけ書いた。
(e)「産経新聞」は、会見記事を載せず、25日にweb版で<国連特別報告者とは一体何者なのか?>などの見出し記事を載せた。
(f)沖縄の二紙は、21日の社説でケイ氏を明確に支持した。
①「琉球新報」は、<氏が提言したように、放送法4条は廃止すべきだ>と主張。
②「沖縄タイムス」も、<ケイ氏は「公平か公平でないかを政府がコントロールしてはならない」と強調する。自由民主主義の核心を言い当てた言葉だ>と評価した。
【注】「【メディア】弾圧 ~国連「表現の自由」調査官が懸念を表明~」
□浅野健一(同志社大学大学院教授)「国連の「記者クラブ」廃止論を隠す大新聞」(「週刊金曜日」2016年5月13日号)
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
「【メディア】弾圧 ~国連「表現の自由」調査官が懸念を表明~」
「【メディア】オバマの広島訪問に大賛辞の朝日紙、立ち直りは疑問」
「 【メディア】への政治家による圧力は犯罪とならないのか ~停波問題~」
「【メディア】放送の「自由」と「公平・公正」とは ~停波問題~」
「【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~停波問題~」
「【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~」
「【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~」
「【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」」
「【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 」
「【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視」
「【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言」
「【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~」
「【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~」