語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官

2016年06月20日 | 社会
 (1)自民党が、“創価学会党”である公明党と連立政権を組んだのは1999年だ。
 だが、その3年前には、自民党の機関誌「自由新報」の「新進党=創価学会ウォッチング」で、8回にわたり学会批判が掲載された。1996年年頭号から1997年10月21日付け号まで。内藤国夫・ジャーナリストと俵孝太郎・政治評論家が交互に執筆した。
 連載の開始に当たって同紙編集部は、新進党の党首選挙が小沢一郎と羽田孜の対決になったことに触れ、「声を大にしていわなければならないこと」として、「新進党が政権を担うに足る国民政党をめざすとするならば、党の根本にかかわる問題として党首選挙で最大の争点にならなければならないはずの創価学会との関係について、なんの論争も起きていない点」を指摘している。
 この指摘は、それから20年後の今、そのまま自民党にはね返ってくる問題だ。

 (3)驚くべし、このシリーズの40回(1996年11月5日付け)で内藤は、自分の居住地の衆議院神奈川2区で「当選が、至難視された新人候補の菅義偉氏」を応援した、と報告している。
 内藤は、菅を「小此木彦三郎通産大臣(当時・故人)の秘書官を経て横浜市議を二期務めたあと代議士への飛躍に挑戦した侠気(おとこぎ)にあふれる男」と紹介している。
 内藤は、それまで総選挙レベルで自民党の候補者に投票したことはなかった。それが、妻子を説得してませ菅に投票させたのは、菅が「選挙期間中、党本部がハラハラするほど厳しい創価学会批判演説をやってのけた」からだ。
 「当確です」
の連絡を受けて、内藤は菅の選挙事務所まで出かけ、菅の当選御礼の挨拶を聞いた。笑顔ではなく悲壮感さえ漂っているように見えたのは、同区で競った相手が学会出身で、現職の上田晃弘だったからだろう。学会は連日1万人前後の全国動員をかけて上田を全面支援した。
 表情を引きつらせながら菅は次のように語った。
 「私は選挙期間中、政教分離の大切さをずっと訴え続け、創価学会という巨大組織と真っ向から戦った。私の学会批判選挙に対する妨害があまりにも激しく、政党同士の戦いとは思えなかった。戦った相手は宗教団体だったと私は思っている。こういう選挙はもう二度としたくない」
 <例>選挙期間中の同年10月18日15時過ぎ、選挙カーに乗った菅が演説していると、
 「創価学会を批判するな」
と中年の女性が4、5人絶叫しながら、乗っている自転車もろとも選挙カーにぶつかってきた。また、割れんばかりに窓ガラスを叩いた。
 身の危険を感じた菅陣営は、最終日の19日に選挙カーの前後に警備車を2台つけて突発事件の発生に備えた、という。

 (4)菅はちょうど20年前のこの時の体験を忘れたのか?
 それとも学会の怖ろしさが身にしみて、以後、自ら学会への接近を図ったのか?

 (5)周知のように、官房長官として、いま安倍晋三内閣を支える菅は、自公「合体」政権の立役者として、佐藤浩・創価学会副会長と太いパイプを持ち、「政教一致」の政治を切り盛りしている。
 「政教分離の大切さをずっと訴え続け、創価学会という巨大組織と真っ向から戦った」かつての“初心”は、とうの昔に捨て去ったらしい。
 泉下の内藤は、それをどう思っているだろうか。
 自民党と創価学会という水と油との野合の内幕を暴いた佐高信『自民党と創価学会』(集英社新書)は版を重ねているが、菅のような鉄面皮の政治家や、彼と手を組んだ学会の信者には届いていないらしい。

□佐高信「激しい創価学会批判で当選した菅義偉 ~新・政経外科~」(「週刊金曜日」2016年6月17」日号)
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 【参考】
【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任
【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合
【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~
【政治】岸信介の悪さの研究
【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~
【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~
【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~
【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~
【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~


【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~

2016年06月20日 | 批評・思想
 鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの波乱に満ちた人生からは、さまざまな教訓を引き出せる。それは時代や読む人の関心によって異なる。
 彼は、教育への投資や公共図書館の重要性を説く。貧しくて学校に通えなかったカーネギーは、必要な知識を図書館で得た。その経験から、意欲のある少年少女のためにお金でできる最も良いことは、図書館を充実させることだと言う。経済格差が広がる現下のわが国でも、図書館の意義はすこぶる大きい。
 地方自治にも一家言ある。故あってか米国ではなく故郷の英国を例に取り、高潔で公共心のたくましい議員によって運営される自治体を高く評価する。
 批判されることの多いわが国の地方議会の在り方を考える上でとても参考になる。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「教育、図書館、議会の力 ~名著未読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2016年6月25日号)の「Book Reviews」から引用
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 【参考】
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~


【医療】ブタの心臓を人間へ ~異種移植~

2016年06月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)「生命倫理」が壁となり、技術の暴走を防ぐ役割を果たしてきた二つの分野で、その壁が破られようとしている。
  (a)人間の受精卵の遺伝子操作。
  (b)他の動物の組織や臓器を人間に移植する異種移植。

 (2)(1)-(a)については、2015年、中山大学(中国)の研究者がゲノム編集技術を用いて人間の受精卵の遺伝子操作を行い、その成果を書いた論文を科学誌に拒否されるなど物議を醸した。
 それがきっかけになり、2015年12月、20ヵ国の科学者が集まり、国際会議が開かれ、その結果、基礎研究に限定したものの受精卵操作を容認した。
 日本でも4月22日に内閣府・生命倫理専門調査会が、やはり基礎研究に限定して容認する報告をまとめることが明らかになった。

 (3)(1)-(b)については、日本では「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」に基づき、これまで事実上、異種移植を認めてこなかった。
 しかし、このたび厚生労働省の研究班が、この指針を見直すことにし、新指針を同省審議会にかけることになった。対象は、ブタの膵臓にあるランゲルハンス島(膵島)のⅠ型糖尿病患者への細胞移植だ。Ⅰ型糖尿病患者は生涯にわたってインシュリンを注射しなければならないが、その負担が軽減されるというのが理由だ。

 (4)これまで異種移植が認められてこなかった背景には、
  (a)拒絶反応
  (b)ブタのDNAに内在するウイルスの遺伝子が人間に持ち込まれる危険性
の二点がある。
 (a)に係る研究は二つ。
  ①ブタの細胞の遺伝子を操作する方向で開発が進められてきた。米ハーバード大学の研究チームが取り組んできたのが、ゲノム編集技術を用いてブタの細胞の表面にあるマーカー遺伝子を破壊し、人間の免疫細胞がブタの細胞を異物と認識しないようにするもの。
  ②ブタの細胞の表面を特殊な膜で包み、免疫細胞が攻撃しないようにするやり方。国立国際医療研究センターがこの方法での異種移植を計画している。

 (b)の問題では、厚労省研究班は、これまで海外で行われたブタの膵島細胞移植の臨床研究では人間への感染例が見られなかったということを、異種移植容認の根拠にしている。
 しかし、それだけでは移植例が少なく、期間も短く、リスクが大きい。
 そのため、今回の指針改定では、30年の経過観察期間を設定する予定だ。

 (5)そこで今、注目されるののがゲノム編集技術を用いたウイルス遺伝子の不活化だ((4)-(a)-①)。
米ハーバード大学の研究チームが、ブタのウイルス関連遺伝子を同時に62個破壊し、ウイルスの感染力を1,000分の1にしたと報告している。
 2016年3月には、大塚製薬工場の研究チームが、アルゼンチンで糖尿病患者へのブタの膵島細胞移植を行い、国内の学会で「効果があった」と報告している。
 まだ日本国内では倫理違反になるため、海外で移植を行ったようだが、これも別の意味で倫理違反と言われても仕方ない行為だ。
 
 (6)米ミズーリ出会い学の研究チームは、「ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」というウイルス感染症にかかりにくいブタを開発している。
 中国の企業BGIは、ミニブタより小さな「マイクロブタ」を開発し、ペットとして売り込もうとしている。
 ブタのゲノム編集が活発化すると、ブタの心臓の人間への移植へと進む可能性がある。すでにブタの心臓をヒヒに移植し、2年半生存させた、という報告があって、膵島の次は心臓だと移植医療は考えているからだ。

□天笠啓祐「なぜ今、異種移植を容認? ゲノム編集技術で進むリスクの抑制」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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