「たべもの起源事典」(岡田哲著、東京堂出版/ちくま学芸文庫)などによると、たい焼きは明治後期に生まれた比較的新しい食べ物だ。
東京・麻布十番の「浪花家総本店」の初代店主である神戸清次郎氏は、大阪から来た当初、今川焼きの店を始めたが、あまり売れず、次に縁起物であるタイの形の焼き型に流し込んで作ったところ、大人気となったらしい。
タイの形は見ていて楽しいだけではなく、いろいろな味を楽しめる。尻尾まであんこが詰まったものもいいが、尻尾ならではの生地の食感や、ひれの部分がよく焼けてパリパリした感じもいい。
2人で分けるときに、どちらがあんこの多い頭の部分を食べるかが大問題だ。兄弟なら取り合い、恋人なら譲り合う光景が見えてくる。
たい焼きの 頭は君に 我は尾を(飯島晴子「寒晴」所収)
詩人の清水哲男氏によれば、この句は日々の暮らしにゆとりのなかった若い頃の、夫婦の思い出を描いているのだという。「頭は君に」と言ってくれているのは、貧しくても優しかった夫のほうなのだ。
□南雲つぐみ(医学ライター)「たい焼き ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月31日)を引用
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東京・麻布十番の「浪花家総本店」の初代店主である神戸清次郎氏は、大阪から来た当初、今川焼きの店を始めたが、あまり売れず、次に縁起物であるタイの形の焼き型に流し込んで作ったところ、大人気となったらしい。
タイの形は見ていて楽しいだけではなく、いろいろな味を楽しめる。尻尾まであんこが詰まったものもいいが、尻尾ならではの生地の食感や、ひれの部分がよく焼けてパリパリした感じもいい。
2人で分けるときに、どちらがあんこの多い頭の部分を食べるかが大問題だ。兄弟なら取り合い、恋人なら譲り合う光景が見えてくる。
たい焼きの 頭は君に 我は尾を(飯島晴子「寒晴」所収)
詩人の清水哲男氏によれば、この句は日々の暮らしにゆとりのなかった若い頃の、夫婦の思い出を描いているのだという。「頭は君に」と言ってくれているのは、貧しくても優しかった夫のほうなのだ。
□南雲つぐみ(医学ライター)「たい焼き ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月31日)を引用
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<基本的に世の中は不条理。それは受け入れるしかない。一般論では片づかないことのほうが多いのである。高校までの数学では主にXとY、二つの変数しか出てこない。一対一対応なのでパターンを覚えればなんとかなる。
しかし現実世界で扱うのはXとYだけでなくZの要素も出てくる。その訓練ができていないために、多くの人が思わぬ事態に遭遇して「不条理だ」と悩んだり怒ったりするのである。
人付き合いもそうだ。若いうちは同世代と先輩、XとY二つの付き合いで終始しがち。だが上に行ける人間は、それだけでなく下の世代という三つ目の付き合いも大事にしている。会社組織でも上に行くほど現場への影響力が下がる。そのとき、下の世代とも付き合っていると現場で何が起こっているのか、何を考えているのかも肌感覚でつかめる。
物事は常に動くのだから、XYZ三つの変数を見ておくことは大切なのである。
さらには目的論的な思考(終わりから逆算して考える思考法)を行い、時間に対する考え方も新たにすることで「二つの時間」を手に入れることができる。
ギリシア語には時間を表す「クロノス」と「カイロス」という言葉がある。前者は過去から未来へ連続して流れる時間。後者の「カイロス」は一瞬、あるいは人間が主観的に貴重と感じたタイミングを指す。
過去から未来へと途切れなく流れる「クロノス」的な時間は誰にも止めることも、さかのぼることもできない。過去を悔やみ、その時間に戻ってやり直したいと思ってもかなわぬ願いだ。不条理な出来事や過去の自分の行動を思い悩んでも仕方ないのである。
それよりは、過去は過去として受け入れ、新たな行動を起こしながら自分が本当に大事にしたいものを見つけたり、本当の友達と何かを分かち合ったりするような「カイロス」的な時間を過ごすほうが何十倍もこれからの人生にプラスになる。これも複線思考的な時間のとらえ方である。
普通に生きているだけでは「クロノス」的時間の流れの中で漂うだけだが、一つの価値観に縛られず生きることで、自分にとって大事な時間、貴重な出会いなどの「カイロス」的時間を切り取れるようになる。
一つの時間の流れだけで生きるか、もう一人の自分を持って二つの時間を生きるか。この違いはとても大きいのである。>
□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「仲間の不義にどう対処するか」の「XYではなくXYZで考える」を引用
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【参考】
「【佐藤優】高めるべき『非認知能力』とは ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~」
しかし現実世界で扱うのはXとYだけでなくZの要素も出てくる。その訓練ができていないために、多くの人が思わぬ事態に遭遇して「不条理だ」と悩んだり怒ったりするのである。
人付き合いもそうだ。若いうちは同世代と先輩、XとY二つの付き合いで終始しがち。だが上に行ける人間は、それだけでなく下の世代という三つ目の付き合いも大事にしている。会社組織でも上に行くほど現場への影響力が下がる。そのとき、下の世代とも付き合っていると現場で何が起こっているのか、何を考えているのかも肌感覚でつかめる。
物事は常に動くのだから、XYZ三つの変数を見ておくことは大切なのである。
さらには目的論的な思考(終わりから逆算して考える思考法)を行い、時間に対する考え方も新たにすることで「二つの時間」を手に入れることができる。
ギリシア語には時間を表す「クロノス」と「カイロス」という言葉がある。前者は過去から未来へ連続して流れる時間。後者の「カイロス」は一瞬、あるいは人間が主観的に貴重と感じたタイミングを指す。
過去から未来へと途切れなく流れる「クロノス」的な時間は誰にも止めることも、さかのぼることもできない。過去を悔やみ、その時間に戻ってやり直したいと思ってもかなわぬ願いだ。不条理な出来事や過去の自分の行動を思い悩んでも仕方ないのである。
それよりは、過去は過去として受け入れ、新たな行動を起こしながら自分が本当に大事にしたいものを見つけたり、本当の友達と何かを分かち合ったりするような「カイロス」的な時間を過ごすほうが何十倍もこれからの人生にプラスになる。これも複線思考的な時間のとらえ方である。
普通に生きているだけでは「クロノス」的時間の流れの中で漂うだけだが、一つの価値観に縛られず生きることで、自分にとって大事な時間、貴重な出会いなどの「カイロス」的時間を切り取れるようになる。
一つの時間の流れだけで生きるか、もう一人の自分を持って二つの時間を生きるか。この違いはとても大きいのである。>
□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「仲間の不義にどう対処するか」の「XYではなくXYZで考える」を引用
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【参考】
「【佐藤優】高めるべき『非認知能力』とは ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~」
「【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~」