語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【心理】差別の発生と解消 ~男女、人種、身体~

2018年02月03日 | 心理
 <「維摩(ゆいま)経」の中に、シャーリプトラが天女に向けて「あなたは神通力があるのに何故女身を転じて男の身にならないのか」と尋ねる箇所がある。天女は答える。幻には一定の特性はなく、一定の特性がない以上どうしてそれを別なものに転ずる必要がありましょうか。一切の女人は女身を現しているだけの幻にすぎないのです。そういって、問いかけたシャーリプトラを女に変えてしまい、逆に天女が男となって、どうしてあなたは女身を転じて男にならないのかと皮肉な反問をする。結論は、一切のものは、男に非ず女にも非ず、死ぬこともなく生まれることもなく、有ならず無ならず・・・・>【注】

  【注】高橋和巳「女と胡蝶」(『孤立無援の思想』、河出書房、1966)

 *

 (1)ジェーン・エリオットは、米国アリゾナ州ルイスビルの小学校教師である。
 1968年、キング牧師の暗殺を契機に、自分の学級で人種差別の問題をとりあげた。その実験授業は、こんなものだった。

 (2)初日、青い目の人は茶色い目の人より優秀だ、と切り出して、青い目の子ども達を特権的に扱う一方、茶色い目の子ども達には黒い襟をつけさせて差別的に扱った。
 その結果、青い目の子どもたちは茶色い目の子ども達を見下し、差別するようになった。
 他方、茶色い目の子ども達は一日中抑圧された気分に陥り、青い目の子ども達に攻撃をしかける子どもも出てきた。

 (3)二日目、エリオットは生徒達に、自分は間違っていた、実は茶色い目の人のほうが青い目の人より優秀なのだ、と述べて、初日とは逆に茶色い目の子ども達を特権的に扱い、青い目の子ども達を差別的に扱った。
 すると、前日元気のなかった茶色い目の子ども達は生き生きとなり、算数の問題を前日より早く解くことができた。
 他方、青い目の子ども達はうって変わって自信をなくし、同じ算数の問題を解くのにかかる時間が前日より長くなり、茶色い目の子ども達より遅くなってしまった。

 (4)三日目、エリオットは、目の色で人を区別することに意味があるか、と生徒に尋ねた。答えは全員、否定的だった。
 かくて、エリオットは、生徒達に、体の一部を理由に他の者を差別することの不当性を体験を通じて学習させることができたのである。

 (5)実験授業は録画され、全米各地で上映された。その上映会でエリオットは講演し、いろいろな企業で同様の実験を行ってみせた。
 エリオットいわく、「この授業はすべての教育者、そして行政当局に対して行われるべきだ」

□米谷淳、米澤好史編著『行動科学への招待 -現代心理学のアプローチ-』(福村出版、2001)
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【南雲つぐみ】節分のクジラ ~動脈硬化や認知症を予防~

2018年02月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 節分は、「季節を分ける日」のこと。このとき、「鬼門」にあたる東北の方角から鬼が出て、邪気をまき散らすとされた。
 クジラは、「大きいものを食べて邪気をはらう」という伝承が由来で、山口県などで節分に食べられてきた。古くから捕鯨が盛んに行われていた長門や下関では、クジラは大きいものの代表として考えられたのだ。同県では学校給食にクジラ料理を取り入れている。
 クジラの赤身肉は、鶏肉よりも高たんぱく・低脂肪で、魚介類と同じくDHA(ドコサヘキサエン酸)やIPE(エイコサペンタエン酸)、さらにDPA(ドコサペンタエン酸)も含んでいる。これらは「オメガ3系脂肪酸」といって低温でも固まりにくいため、動脈硬化を予防し、血管の柔軟性を保つのに役立つとされている。
 脳細胞の血流も良くするので認知症の予防効果も期待されるところ。DPAは、特にクジラベーコンに多く含まれているそうだ。恵方巻にはもう飽きたという人は、クジラ料理はいかがだろう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「節分のクジラ ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年2月3日)を引用
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【南雲つぐみ】女性が元気な理由

2018年02月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 「年を取ったら女性のほうが元気」という声をよく耳にする。実際には、女性の体内の女性ホルモンは、閉経を迎えるに伴って誰でも減少する。老化のために体にダメージが来やすいのは女性だといわれているのに、なぜだろうか。
 化粧品メーカーの資生堂(本社・東京)による研究が、その元気の理由の一つを示しているかもしれない。70代の女性を、化粧を簡単に行っているグループと丁寧に行っているグループに分けて、それぞれの筋力を測ってみたところ、丁寧なグループのほうが筋力が高かったそうだ。
 なかでも興味深いのは眉のメークを行うときに使う腕の筋肉で、数値的には高齢者のリハビリにおける筋力増強トレーニングと同じレベルで負荷がかかっていたという。意外な話だが、確かに腕にしっかり力が入らない状態では、眉や目の周りの微妙なラインを引けないし、左右バランスよくメークできない。指先の神経を細やかに使うという点で、化粧は認知症の予防になるともいわれているが、筋トレにもなっていたのだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「女性が元気な理由 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年9月13日)を引用
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【佐藤優】自分の権限を確認せよ ~『武器を磨け』~

2018年02月03日 | ●佐藤優
 <取引先との値引き交渉や無理な納期を飲んでもらう交渉。あるいはクレーム対応など、面倒なこと、嫌なことを上司から押し付けられるのは、仕事の場においては避けられないことだ。
 こうした交渉を自分に有利に進めるためには、自分がどれだけの権限を持っているかが重要だ。こちらに権限がなければ相手から軽く見られるだけ。権限がない交渉事などは本来しなくてもいい仕事なので、他の人にやってもらうのが正解だ。もし、自分がやるのなら自分がどこまでやっていいのかを明示的に決めておく必要がある。
 そうはいっても面倒くさい仕事、無理難題が降ってくるのは組織人の常。それをまともに受けていては自分の身が持たない。うまくかわしていくには知恵を働かせることだ。
 筆者が外務省で働いていたとき、ロシアから要人を非公式に日本に招いたことがあった。エリツィン政権前期の国務長官を務めていたゲンナジー・ブルブリス氏である。
 ところが当時の外務省にはブルブリス氏に直接働きかけるルートがなかった。そこで私も動いて、ある人物S氏を介してもらったのだが、S氏を当時の細川護煕(もりひろ)総理との会談に同席させることに横やりがはいったのだ。S氏は、陸軍中野学校出身のロビイストで安全保障問題や沖縄返還問題などでも重要な役割を果たした重鎮。
 こういったときに嫌な役回りをさせられるのは下の人間である。私の後輩が当時の首席事務官から「S氏に、お前の判断で『今回の会談に出席しないでください』と言ってこい」と命じられ、困り果てた彼は私のところに「どうしたらいいでしょうか?」と相談に来たのである。そのような無理難題を聞く必要はない。私は後輩にこう言った。
 「簡単だよ。首席事務官から言われたと前置きしたあとで、君の判断だと言って以下のことを伝えるよう言われましたと全部S氏に話してこい。そして首席には『言われたとおり全部伝えました』と答えろ」
 S氏も海千山千の人物。明らかに言わされているのだな、とわかる。そうすれば矛先は後輩ではなく首席事務官に向くし、事実として何も嘘はないわけだ。このような知恵を働かせてうまくかわしていくことも立派なサバイバルである。
 一見「煙に巻いている」ように思われるかもしれないが、組織で生き延びるには、何でもかんでもまともに受け取らないことも必要。誰かがやらないと、と考えるのは権限を持った役職になってからでいい。それより下の立場はまず自分のことを考える。組織への妙な忠誠心は自分の身も滅ぼし、結果的に組織も混乱させる元だ。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』』 (SB新書、2018)の「第3章 掛け合う」の「欲しがっているものを与える」の「自分の権限を確認せよ」から一部を引用
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 【参考】
【佐藤優】XYではなくXYZで考える ~『武器を磨け』~
【佐藤優】高めるべき『非認知能力』とは ~『武器を磨け』~
【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~
【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~