語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~

2018年02月20日 | 批評・思想
★ジョン・K・ガルブレイス(鈴木哲太郎・訳)『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』(ダイヤモンド社、1991/新版、2008)

 株式市場は年明け以降も活況を呈し、1月23日には、終値で2万4000円を回復した。これは1991年11月以来の水準となる。同年に出版されたのが本書だ。無論、株価上昇がいつもバブルであるわけではない。企業業績の今後に見合った株高とバブル現象としての株高の差はどこにあるのか。
 ヒントは、副題の「暴落の前に天才がいる」にある。2017年中に一時25倍もの急上昇を遂げたビットコイン。その暴落の前には数知れない「天才的なトレーダー」が現れ、急速な価格上昇を「説明する」新理論が登場した。日本株がその頂点を迎えようとするときに現れるのはどんな天才、どんな新理論なのか。バブルの懸念に正しく対処するには歴史的事例から学び直す必要がある。

□飯田泰之(明治大学政治経済学部准教授)「バブルを描く古典的名著 ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月24日号)
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 【参考】
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

【南雲つぐみ】鉄の在庫を増やす ~隠れ貧血~

2018年02月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 「貧血といわれて鉄剤を飲んだら、意外とすぐに、ヘモグロビン(HGB)の数値が正常になった。そこで薬を飲むのをやめたら、また下がってしまった」という話を聞いたことがある。そんなときは、ヘモグロビンだけでなく「肝蔵鉄(血清フェリチン)」の数値も検査することをおすすめしたい。
 血清鉄(血中の鉄分)を店の商品に例えると、ヘモグロビンの数値は店のショーケースに陳列された商品で、貯蔵鉄は倉庫にある在庫のようなもの。両方とも十分にあればいいのだが、店頭の品ぞろえが薄くなると、在庫をどんどん使っていく。
 すると、店頭に商品は多少あっても、倉庫の在庫が底をついてしまう。これが「隠れ貧血」の状態だ。進行すれば、両方とも空になり。、貧血になってしまう。鉄剤などで補給する際には、「店頭」だけでなく「倉庫」も十分に満たす必要がある。
 そこで、ヘモグロビンの数値がたとえ1カ月で改善したとしても、貯蔵鉄が十分に回復するまで治療を続けたほうがいいとされている。

□南雲つぐみ(医学ライター)「鉄の在庫を増やす ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年5月30日)を引用
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【佐藤優】現象をとらえる宗教学的手法と内在論理をつかむ神学的手法 ~『なぜ私たちは生きているのか』~

2018年02月20日 | ●佐藤優
 <高橋 聖杯でいうと、ワーグナーのオペラ「パルジファル」を思い出しますが、自分が器になって何かを受け入れる感覚とでもいいますか、包み込んで相手と自分がひとつになり、それによって自分も相手も変容する感覚の問題です。佐藤さんの本を読んでいると、聖杯的なもの、自分のなかに心情で受け入れたものと運命的に関わろうとする姿勢をよく感じます。
 たとえば私がマルクス主義に対して否定的な立場にいるとします。でも、仮に『反デューリング論』(エンゲルス)のようなマルクス主義の本をいったん読み始めたら、一度は100パーセント、エンゲルスの立場になって、著者の思いと心をひとつにしようとします。読み終わったらまたもとの自分に戻る。この感覚は佐藤さんと共通するのではないかと思うのですが。

佐藤 ご指摘のとおりです。内在的な論理をつかむために、対象と徹底的に付き合うというのは、神学的な方法であり、私の書くものにも表れていると思います。それですから、以前、朝日新書から出した『創価学会と平和主義』という本の執筆中は、戸田城聖(じょうせい)全集、池田大作全集を徹底的に読みました。
 しかし、このやり方は理解されないことも多い。『創価学会と平和主義』は、宗教学者である島田裕巳さんから「創価学会が出している文献を論拠にするのではなく、客観的な形で書かなければならない」と猛烈に批判されてしまいました。

高橋 ヴェーバーと同じで、現象としてとらえるタイプの人にはわからない感覚なのでしょう。宗教学の人たちは、個人の主体性の問題としてとらえるのではなく、外から、合理主義の立場から客観的、論理的に宗教という現象を説明しようと試みますから。

佐藤 そのとおりだと思います。島田さんは一時期、創価学会の僧侶なしの友人葬であるとかを評価していたのですが、近代主義と合致した、世俗化された宗教形態であったから評価したのだと思います。その方法では、創価学会の救済観はわかりません。よい悪いを判断するのではなく、その宗教の枠組みでは、こういう救済の論理になっているという、救済観をつかまねばなりません。宗教は音楽と一緒で、耳がよくないと音が聞き分けられないように、新宗教や既存の宗教のどこに琴線に触れるものがあるかがわからないと、救済観はつかめません。>

□高橋巖×佐藤優『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』(平凡社新書、2017)の「Ⅱ資本--お金と働くこと」の「現象をとらえる宗教学的手法と内在論理をつかむ神学的手法」から一部引用
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 【参考】
【佐藤優】プロテスタンティズムと資本主義は関係ない ~『なぜ私たちは生きているのか』~
【佐藤優】個別主義・全体主義・普遍主義 ~『なぜ私たちは生きているのか』~
【佐藤優】ルター派教会とナチズム ~『なぜ私たちは生きているのか』~
【佐藤優】キリスト教は「絶対他力」の宗教 ~『なぜ私たちは生きているのか』~
【佐藤優】『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』目次