語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】ワインは一日一、二杯 ~100%カラダにいい食品(4)~

2018年09月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 <豆腐や豆乳、納豆などの大豆製品(★★★★★)も日本人の健康長寿に大きく貢献してきた食品です。
 ポリフェノールの一種である大豆イソフラボンは、AGEの生成を抑えてくれます。女性ホルモンに近い作用もありますから、肌のくすみ防止や美白効果も期待できる。さらには、細胞や脳の若返り効果があるレシチンも含まれ、理想的なアンチエイジング食品といえるのです。
 特に大豆イソフラボンを多く含むのが納豆です。発酵食品ですからビタミン類やアミノ酸なども豊富。できれば毎日1パック食べてほしい。
 豆腐に含まれる良質なタンパク質は、血圧を下げる効果もあります。豆腐は朝食のお味噌汁にたっぷり入れれば、それだけで十分な量の栄養分が摂れます。1日で豆腐半丁が摂取の目安です。
 牛乳を毎日飲んでいる方は豆乳に代えることをオススメします。ただ、糖分が添加されている商品も多いので購入時には成分に注意を。必ず無調整の豆乳を選んでください。
 夕食時の適量のお酒は身体にいいのでオススメします。なかでもポリフェノールを豊富に含むワイン(★★★)の健康作用は、既に一流の医学雑誌に数々の研究が発表されており、もはやお墨付きです。
 赤ワインにはレスペラトロールやケルセチン、カテキンといった成分が含まれ、AGEを抑えて動脈硬化を防いでくれます。
 白ワインも健康効果では負けていません。1日に120cc、つまりグラス1杯程度の白ワインを3ヵ月飲み続けると、体重減少に加え、体脂肪や血圧の値が改善されたという研究があります。これは白ワインに多く含まれる酒石酸というミネラルの影響だと考えられます。また、血糖値を下げるという研究もあります。
 私は夕食の際には妻と一緒に白ワインを飲むことにしています。翌朝、血糖値を測ってみるとたしかに下がっているのです。ただし、要注意は甘味が強いワイン。糖質の少ない辛口がオススメです。
 いくら「百薬の長」とはいえ、飲み過ぎは禁物です。適量はどのくらいなのでしょうか。
 それを教えてくれるのが、今年4月に「ランセット」に掲載された飲酒量と死亡率との関係を示す研究です。約60万人を対象とした83の研究を分析したところ、最も死亡率が低かったのは、純アルコールの摂取量が1週間に100g未満のグループでした。これはワインのアルコール度数で計算するとボトル1本程度。一方、摂取量が200gを超えると、脳卒中や心不全のリスクは直線的に上昇しました。
 日本人は欧米人と比べると脳卒中が多いので、ワインなら週にボトル2本を超えないように。週に一度は肝休日を設けて、1日にグラスワイン1、2杯程度です。
 晩酌のおつまみにも健康に良い食品があります。
 まずオススメできるのはチョコレート(★★★★)。チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは、強力な抗酸化作用があります。
 1997年に人類史上最高齢の122歳で亡くなったジャンヌ・カルマンさんというフランス人女性は、ワインとチョコレートが大好物で多いときは1週間で約1kgもチョコレートやカカオ成分を多く含むショコラショーというドリンクを飲んでいたそうです。
 ただし、チョコレートで注意すべきは糖分。甘いものは血糖値を上昇させるため逆効果になります。また、ホワイトチョコはカカオポリフェノールの含有量が少ないため、ブラックの方がいい。健康にいいと言えるのは、カカオ成分が70%以上のビターチョコです。目安は1日に25g、個包装になっている小さな板チョコであれば5枚程度食べても構いません。
 地中海食でよく食べられるナッツ類(★★)もいい。クルミやアーモンド、カシューナッツにはビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれ、心疾患や糖尿病など様々な病気を予防してくれます。
 ただし、市販のナッツは塩分が過剰に含まれるので、購入の際は「無塩」のものを選んでください。また輸入ものが多いナッツ類は防カビ剤が添加されているものもあります。私は国産の無添加性落花生をオススメしています。落花生は木の実であるツリーナッツではありませんが、健康に与える効果は変わりません。
 添加物と健康の関係には、様々な議論がありますが、2015年に世界保健機関(WHO)がハムなどの加工肉に発がん性があると発表しました。これは加工肉に含まれる保存料が原因だと考えられています。WHOのような国際機関が注意喚起をするのですからよほどのことです。
 私はパンに含まれるイーストフードに注意を払っています。これはパンを膨らませるイースト菌の働きを強める添加物です。パンを買うときは必ずイーストフードが入っていないものを選んでいます。添加物の悪影響は全てわかっているわけではありませんが、私は、少量であれば大丈夫という考え方はむしろ危険ではないかと考えているのです。>

□牧田善二(AGE牧田クリニック院長)「100%カラダにいい食品(18品目リスト付き) 世界最高峰の医学雑誌が保証する 一週間に一回は摂って欲しい」(文芸春秋 2018年9月号)から一部引用

 【参考】
【食】「老けない食品の王様」 ~100%カラダにいい食品(3)~
【食】「焼く、揚げる」に要注意 ~100%カラダにいい食品(2)~
【食】酸化・糖化・AGE ~100%カラダにいい食品(1)~

 100%カラダにいい18品目(1) (クリックして拡大)
 

 100%カラダにいい18品目(2) (クリックして拡大)
 
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【佐藤優】「若い女性」のマリアは誤訳によって「処女」になった ~ギリシャ語聖書~

2018年09月22日 | ●佐藤優
 それから「神を生んだ人」に二つ目のギリシャ語の注記があります。これは「テオトコス」と読みます。
 ここでは、マリアははたしてテオトコス(神を生んだ人)か、クリストトコス(キリストを生んだ人)かの論争がありました。ネストリウスという5世紀の神学者が、このクリストトコスを唱えましたが、これは異端として追放されてしまいます。それは、マリアをクリストトコスとすると、キリストの神性が十分に担保されない、つまりテオトコスよりも一段次元の低い神である、とされてしまうと非難されたのです。キリストは真の神だから、テオトコスでもクリストトコスでも、どちらでも構わないじゃないか、とはいかないのです。
 このあたりの論争は、調べ始めると非常に面白い。でも、みんなどう思う? マリアは聖霊によって身籠もった。だから「処女」降誕ということが、キリスト教の教義になっている。でも、これは文献実証的には、かなり証明されるんだけれど、じつは誤訳なんです。本来は「若い女性」という言葉で訳さないといけないものだった。ところがギリシャ語に翻訳するときに、ギリシャではアルテミス信仰、すなわち処女は特別の力を持っているという信仰があるから、そこのところで処女という訳語があてられたのです。
 だから実証研究においては、処女降誕とは、当時の文脈においては、適齢期の女性が子どもを生んだということだった。ただ、聖霊の力によって生んだということだから、そこでは処女性に問題はなかったはずです。だから神学的には、処女降誕とは、処女で生んだわけだから、マリアは生んだあとも処女ということになる。
 そうすると、非常に神秘的な形のマリアに、果たして原罪があるのか否かの論争が、次に出てくる。この論争はキリスト教の長い歴史の中でも共通認識をつくりだせないままになっていましたが、19世紀になってから、急速にカトリックのほうで神学的な整備が進み、マリアには実は罪がない、と19世紀の半ばぐらいに確立します。これを一般に「無原罪の御宿り」とか「無原罪懐胎」と呼んでいます。
 となると、原罪がないならば、死後のマリアがどうなるかで、また矛盾が生じかねない。つまり、キリスト教では人は死後、基本的には陰府(よみ)で寝ていて、最後の審判を待っているわけです。神の右に座している、すなわち天国に、「神の国」に入っているのはイエス・キリストだけ。でも、無原罪で罪を負っていないマリアは、どうなる?
 ここでもカトリックは、1950年代に、マリア無原罪の昇天ということを、教義として確立してしまいます。だから天国には、今のところ人間ではただ一人、マリアだけがいる。マリア自身は無原罪であるがゆえに、既に天国にいる、という教義の組み立てにしたのです。
 これはカトリックの考えであって、プロテスタントはそうは考えない。神学の初心者段階では、「へぇ~、そうなっているんだ」というエピソードとして覚えておいてくれれば構いません。ただ、プロテスタントとカトリックのこうした違いは、救済観や人間観など、折々に顔を出してくることがあることも覚えておいてください。

□佐藤優『悪魔の勉強術 年収一千万稼ぐ大人になるために』(文春文庫、2017)の第3講の「*「処女」は「若い女性」である」を引用

 

 【参考】
【佐藤優】臨床で有効なコフート心理学 ~『悪魔の勉強術』~




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【佐藤優】臨床で有効なコフート心理学 ~『悪魔の勉強術』~

2018年09月22日 | ●佐藤優
 <そもそもキリスト教は、博愛主義ではありません。「あなたの隣人をあなた自身と同じように愛せ」、これを博愛主義とするのは、間違った解釈です。自己愛のない人は、他人を愛することはできません。
 自己愛をマネジメントできない人との付き合いを考える上で、われわれキリスト教徒は心理学の方向にも目を広げて行かないといけません。日本国内だと、関東では元々フロイト学派の影響が強く、このフロイトから派生したラカンも次第に影響力を増しています。ただフロイト学派の精神科医が臨床の現場に出ると、いろいろ言っても最後は「ちゃんと薬を飲んでくださいね」と投薬に委ねることになってしまう。基本的には脳内の分泌から出てくる問題だという結論だから、いかに薬を飲ませるかが問題で、カウンセリング療法とかはほとんど信用していないのですね。
 現在の心理学の実践の現場では、ハインツ・コフートの自己愛心理学がよく使われています。一昔前はユング、少し下って1980年代のポストモダン以降にはラカンの流行がありましたが、今や心理学の臨床の現場ではコフートの役割が非常に大きくなっている。それは時代との相性もあるのでしょうが、コフート心理学の特徴をひとことで言えば、「自己愛を肯定的に評価する」ということになります。そこでは自己愛のマネジメントがものすごく重要になるわけです。
 日本へのラカンの紹介者として、ポストモダン思想の中心的な役割を果たした斎藤環さんという精神科医とこの前話したときに、「いまや臨床現場ではコフートしか、使えないですよ」と言われてびっくりしたんです。
「先生はラカニアンじゃないんですか」と聞いたら、「いや、それは学術的な発言であって、臨床においては全然ラカンなんか使えないですよ」として、こう言葉を継いだのが印象的でした。
「人間が千年生きているんだったら、ラカンでもなんとかなるかもしれないけれど、人間の寿命が百年程度だったら、フロイトやラカンが言っているような自己愛の解体なんかできません。だから、コフートのように自己愛を認めるところからスタートしないといけない」
 この発言は人間の抱える宿命を孕んでいる大事な指摘ですね。人類は、やはりこの世での救済を求めているのです。>

□佐藤優『悪魔の勉強術 年収一千万稼ぐ大人になるために』(文春文庫、2017)の第1講の「*自己愛を分析する武器としての神学」から引用

 
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