語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】企業の内部留保を賃上げに充てさせたイタリア・ファシズム ~いま生きる「資本論」(29)~

2018年06月20日 | ●佐藤優
 <賃金に戻りますね。今、共産党系の組合が「企業の内部留保が増えているのだから、その内部留保を賃金に回せ」と言っていますが、これは『資本論』を読んでないから出てくる議論ですよ。内部留保というのは、資本が投資をして、いかに増やしていくか、というために必要なおカネです。賃金はその前の段階で解決がついているわけです。でも、内部留保に手をつっこんで賃金を上げさせる、という運動はこれまでもありました。現に成功している例もあります。ムッソリーニは、労働組合は認めるけれども争議権は認めませんでした。賃上げに関しては、国家が資本家に指示をして、「お前のところは内部留保があるんだな。そのぶんは労働者の賃金にあてろ」。こういうやり方をした。これがイタリアファシズムにおける国家と労働者と資本家の三者委員会方式での賃金決定です。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「4 われわれは億万長者になれない」の「『資本論』の肝はここだ」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】書く力が育たなければ読む力も伸びない ~いま生きる
【佐藤優】耳で聞いて意味がわかる『資本論辞典』 ~いま生きる「資本論」(27)~
【佐藤優】革命の鐘なんか鳴らない ~いま生きる「資本論」(26)~
【佐藤優】柳田国男、『太平記』、物語る言語 ~いま生きる「資本論」(25)~
【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~


【佐藤優】書く力が育たなければ読む力も伸びない ~いま生きる「資本論」(28)~

2018年06月20日 | ●佐藤優
 <みなさんも自分の文体を作ることです。スマホでメールなりLINEなり機械的な反射で書いていても、絶対に文体はできません。しゃべり言葉には文体はありませんし、反射するようなやり方では思想はできない。このへんに関して、すごくいい本だなと思ったのは芥川賞作家の藤原智美(ともみ)さんが書いた『ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ』です。ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』をもじった題ですが、実にいいエッセーでした。グーテンベルクによる活版印刷機の発明以降の大きな変化が、ネットで生じているんだ、と。書き言葉の流儀が失われた。いまインターネットでメールが来て、すぐ返信する。絵文字なんかを使う。あれは話し言葉であり、書き言葉と比べると緻密さが圧倒的に落ちる。写真も動画も使えるから、表現力ががくんと落ちる。
 書く力が育たなければ、読む力も伸びません。ネットを覗き、スマホをやっているだけだと、いくら文字を打ったとしても書く力は身につきません。あっさり言いましょう、馬鹿になります(会場笑)。多くの国民が馬鹿になると、悪貨が良貨を駆逐するようになります。そうすると、到底読むに堪えないようなものが出てきます。そのうち、みんな本を読まなくなって、誰も何も読まないという時代になる。人類がそういう時代にいずれ到達すると予測したのはH・G・ウェルズの小説『タイムマシン』ですが、まさにああいうSFで描かれた暗黒時代になろうとしている。
 これは話し言葉が優位をとってしまったから起きる現象だというのが、藤原智美さんの作業仮説です。だから、彼はいちばん最後に、「私はしばらくネットを遮断しようと思っている。そして本を読み、物を書く作業をしたい」と書いています。ネットを遮断するというのは作家だからできるわけで、われわれにはそれはできない。会社で「僕、ネットはやらないと決めたんです」とは言えませんよね。
 だから私がせめてもの代替案として何を提唱するかというと、プリントアウトです。恋人や友人とデートや呑み会の約束のメールをする時は別にプリントアウトしなくてもいいですよ。でも、仕事上の大事な付き合いの人とか、プライベートで重要な人にメールを出す時は、一回書いてプリントアウトする。その紙に万年筆でもボールペンでもいいからもう一回筆を入れて、それを打ち直して送る。こういう手を使う作業をしていれば、自分の文体ができてきます。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「4 われわれは億万長者になれない」の「自分の文体を見つけよう」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】耳で聞いて意味がわかる『資本論辞典』 ~いま生きる「資本論」(27)~
【佐藤優】革命の鐘なんか鳴らない ~いま生きる「資本論」(26)~
【佐藤優】柳田国男、『太平記』、物語る言語 ~いま生きる「資本論」(25)~
【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~

【佐藤優】耳で聞いて意味がわかる『資本論辞典』 ~いま生きる「資本論」(27)~

2018年06月19日 | ●佐藤優
 <『資本論』や経済原論のような本を読む時、用語を調べたり、あらためて『資本論』にあたったりするのは大変でしょう。そこでアンチョコを紹介しておきます。
 青木書店から1961年に出た『資本論辞典』。青木書店というのは極めてユニークな左翼系の出版社です。今は大月書店からでも、必ずしも日本共産党の立場と同じでない本も出ます。しかし一昔前は日本共産党系の、つまり共産党員が経営している出版社からは、党の方針から外れた本など絶対に出ませんでした。ところが青木書店は、共産党系の出版社であるにもかかわらず、共産党の方針に一致しない本もけっこう出しているんです。この青木書店の社長の娘さんが、731部隊研究の本などを出した青木冨貴子さん、「ニューズウィーク日本版」のニューヨーク支局長だった人ですね。
 この『資本論辞典』、のちに縮刷版も出ています。私の相場感覚で言うと、古本屋で2,000円以内だったら買っていいと思う。特に狙い目なのは、図書館廃棄本です。図書館廃棄本は、だいたい製本をテープで補強してあるから辞典として使いやすいんですよ。
 序文が非常にしっかりしています。
 「たしかに《資本論》は難解の書である。それはたんに、この著作が厳密な方法論にしたがって構築された巨大な論理的体系をなしており、これを首尾一貫して統一的に把握することなしには、その真意を把握することができない、というばかりではない。マルクスはその論理を展開するにあたり、各種の経済的範疇・概念を固定的に定義していない」
 ここ、重要です。固定的に定義していない」というのは、マルクスは概念をコンテキストによって意味を違えて使っているということですね。
 「事物とその相互関連は、固定した不動のものとしてではなく、変化するもの、発展するものとしてとらえられ、したがって諸概念もまた変化し発展するものとして使用されている。たとえば〈資本〉という概念あるいは〈価値法則〉という概念を例にとってもわかるように、それらは《資本論》中のあるページ、ある箇所を孤立的に他との関連なしに読んだのでは、とうていその概念のふくむ真意を理解しうるものではない。それは《資本論》全巻を通して論理的形成の過程において展開されるマルクスの叙述を追い、前後の脈絡をつけてはじめて十分理解されうるものである」
 この辞典の編者は久留間鮫造(くるまさめぞう)、宇野弘蔵、岡崎次郎、大島清、杉本俊朗です。久留間鮫造は共産党系で有名な先生で、宇野弘蔵はもうご承知の通り。そして岡崎次郎がまた面白い人なんです。この人、大月書店版の『資本論』の翻訳者です。岩波文庫版の向坂逸郎訳の下訳もしています。1983年に『マルクスに凭(もた)れて六十年--自嘲生涯記』という本を出しました。この中で「俺はマルクスの翻訳で大儲けした。大月書店から印税5億円ぐらいもらった。しかし、もうカネはない。まったく残ってない。どうしたらいいんだろう」というようなことを書いて、対馬忠行(つしまただゆき)という労農派の先輩のマルクス経済学者が播磨灘を航行中の客船から身投げして自殺したので、「先を越された」と。そして、「西のほうに行く」と言い残して、奥さんと二人で失踪しちゃったんです。行方はわかりません。(中略)
 今回の課題であった窮乏化法則に関しても、われわれは宇野的な見方で考えているけれど、じゃあ正統派のほうはどういう位置づけをしているのか、この辞典で調べてみるとよくわかるんです。宇野は編者として名を連ねていますが、それぞれの項目は当の執筆者の考え方を尊重している。今日はその「窮乏化」の項目のコピーをとってきました。
 もうひとつ、いま読んだ序文もそうだけれども、耳で聞いても言っていることの意味がよくわかるでしょ。最近の本の序文なんて、読んで聞かされても何を言っているかよくわからないものが多いですね。やはり、1960年代あたりは、本を出すという行為のハードルがものすごく高かったことがわかります。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「4 われわれは億万長者になれない」の「便利な名著『資本論辞典』」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】革命の鐘なんか鳴らない ~いま生きる「資本論」(26)~
【佐藤優】柳田国男、『太平記』、物語る言語 ~いま生きる「資本論」(25)~
【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~


【佐藤優】革命の鐘なんか鳴らない ~いま生きる「資本論」(26)~

2018年06月19日 | ●佐藤優
 <ちょっと漆塗りをしますよ。資本主義が成立するためには労働力商品化が必要で、ひいては労働者の「二つの自由」が必要でしたね。一つは身分的に解放されているという意味での自由。土地に縛りつけられていないので、どんな職業を選んでもいいし、移動することもできる自由。それからもう一つは、生産手段からの自由。すなわち自分自身の土地や労働用具や原材料などを持っていないということ。この二重の自由があるから、自分の労働力を売ってメシを食べなければならなくなった。
 これはイギリスという国で必然的・内在的に起きたことではありません。歴史的偶然によって生じたことなんです。グリーンランドの例を見るとよくわかります。外部に原因があったのです。
 グリーンランドって、文字通りグリーンランド(緑の島)だったんですよ。15世紀くらいまでは、樹々も草花もたっぷりあった。小麦もできていた。ところが、地球が16~17世紀に急に寒くなったんです。グリーンランドは氷河で覆われてしまった。それによってヨーロッパ全域で毛織物が必要になり、大流行になった。羊毛でセンターを作る、コートを作るということがすごいビジネスになりました。そのためにイギリスでは農家を全部追い出して羊を飼い始めた。これが第一次エンクロージャー運動、囲い込み運動ですね。追い出された農民たちが都市へ流れ込んできて、二重の自由を持つ近代プロレタリアートが生まれたのです。
 イギリスでは農村は分解されましたが、後発資本主義国においては、先進的な機械を輸入することができるから、農村の完全な分解をしなくても資本主義を成立させることができました。
 ここは日本資本主義論争でも重要なポイントになったのですが、後進国日本ではたしかに農村は完全には解体されませんでした。逆に農村が解体されないことが、日本の資本主義にとってはたいへんプラスだった。どうしてか? 産業が発達すると、工場で農家の次男坊、三男坊がそこで働ける。景気循環の中で、不況になって工場が閉鎖される。恐慌が起きる。食っていけなくなった工場の労働者は農村に戻る。田舎に戻れば農業をして、食っていける。そんな調整弁になったわけです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「革命の鐘なんか鳴らない」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】柳田国男、『太平記』、物語る言語 ~いま生きる「資本論」(25)~
【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~

【佐藤優】柳田国男、『太平記』、物語る言語 ~いま生きる「資本論」(25)~

2018年06月18日 | ●佐藤優
 <(承前)
 これと同じような発想で近代日本の姿を読み解いたのが柳田國男であるというのが、柄谷行人さんの『遊動論-柳田国男と山人』での主張です。柳田國男は原日本人の宗教感覚について、「死ぬとあらみたまになって、裏の山あたりにいる。そして死者は生者とコミュニケーションが可能であり、死者それぞれに個性がある。それがだいたい50年経つと個性がなくなって、祖霊という形になり、一般論としてわれわれを守る」と考えた。そして柳田は「これは証明できないけれども、確実に存在するのだ」と言い切っているわけです。
 現代のわれわれから見ると、独我論のように見えるでしょう? 柄谷さんは、「山人というものは実証できないが確実にいた」と柳田國男は言っているが、これは決してメチャクチャな論法ではないのだ、と一生懸命説明しようとしています。これはドイツ語で言えばUrgeschichte(原歴史)という、神学の世界ではよくある考え方です。こういう物の見方は、客観的・実証的に記述していくことに対して関心を持たなかった時代においては、いくらでもありました。
 日本でいうと室町より前の文献は、実証できない語り方になっています。室町以降は実証的になる。そんな時代の分水嶺が『太平記』です。『太平記』というのはハイブリッドなのです。現代人に繋がるところもあれば、古(いにし)えの神々の世界に繋がるところもある。日本と中国とインド、つまり本朝、震旦(しんたん)、天竺(てんじく)という三大世界論を持っていた時代の、それらをつなぐ蝶つがいでもあったテキストです。
 16世紀にフランシスコ・ザビエルをはじめとする宣教師たちが日本へたくさん来ました。あの人たちは『太平記』を読んで、日本語を勉強していた。マカオで日本語版の『太平記』が印刷されていたんです。教文館から復刻されたのを見ると、当時のカトリック教会が「これは反キリスト教的な書物ではない」と認定しています。その認定をしていないと当時は印刷できないですからね。『源氏物語』や『平家物語』の日本語では通用しないけれども、『太平記』の日本語はそのまま使えたから、宣教師たちはこの本で勉強したのです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「実証できない語り」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~

【佐藤優】客観的・実証的に証明していく言語vs.物語る言語 ~いま生きる「資本論」(24)~

2018年06月18日 | ●佐藤優
 <今ここで、われわれは『資本論』をアナロジカルに読むことで、現在われわれの周辺で起きていることをさまざまに読み解く基礎力を身につけていこうとしています。一回目の講座の冒頭で「古典を読め」と言いましたが、『太平記』でも『資本論』でも『聖書』でも、古典の読み解きをやって見えてくるものは基本的に一緒です。人間と人間の関係から出てくる社会の構造を、いろんな言葉と手法で語っているのです。
 ただし、古い作品を読む時には、二種類の言語があることに注意しないといけない。一つは、客観的・実証的に証明していく言語。客観的・実証的に物事を説明して、その証明をした資料を残すというのは、13~14世紀ぐらいからの世界的な流行です。フランスだとカロリング朝ルネサンスあたりからあるから、もう少し早いかもしれない。しかし、それよりも以前になると、客観にも実証にも関心がないのです。ひたすら物語によって語っていきます。
 イエス・キリストに関しても、生まれた時に東方から三人の博士がやってきたという『新約聖書』の話など、おかしいと思いませんか。三人の博士は星に導かれて、イエス・キリストが生まれたとベツレヘムにやってくる。それでわざわざヘロデ王のところに、「ユダヤ人の王が生まれたけど、どこにいるか」と聞きに行くわけでしょ。そんなもの、星に導かれて行っているのだから、誰かに聞く必要ないじゃないですか(会場笑)。ヘロデは王様ですよ。その王様に「ユダヤ人の王がどこかで生まれた」と教えたら、「そいつを殺せ」と言うに決まっている。案の定、ヘロデは「あ、私もぜひ拝みに行きたいから」と言って、殺すことを考えた。
 今度は三人の博士に夢でお告げがあるわけです。天使が「ヘロデのところに行くな」とお告げした。そこでベツレヘムでイエスを見た後、ヘロデに会わずに国に帰った。しかし、ヘロデはイエスの命を狙い始める。
 三人の博士のイエスへの贈り物の中には、没薬(もつやく)がありました。死んだ人間に塗る薬をどうして生まれた赤ちゃんのところにプレゼントするんですか。失礼極まりない話でしょ? だからこれは、マタイ教団の編集者によって全部プロットができていて、そのプロットに則して書かれた物語なんですよ。ヘロデによって迫害をされるというエピソードを入れておかないと、イエスが偉大な力を持った人間だという物語にならない。そしてイエスは、モーセが脱出したエジプトへ一時的に入っていく。これも偉大さの強調ですよね。没薬を出したのも、いずれ悲劇的な死を迎えるという序章、伏線です。オペラなんですよ、『聖書』って。オペラで史実を語ることはできない。しかし、実証することはできないけれど、何かを伝えようとはしているのです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「実証できない語り」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~


【佐藤優】観念的な講座派『蟹工船』vs.リアリズムの労農派『海に生くる人々』 ~いま生きる「資本論」(23)~

2018年06月17日 | ●佐藤優
 <(承前)
 日本資本主義論争なんてものを、なぜ私がねちっこく言うかといえば、この1930年代の思考の鋳型を抑えておくと、現在の日本の論壇の議論などが反復現象だとよくわかるからです。日本資本主義論争というのはけっこう幅が広く、単なる経済の論争だけに留まらず、歴史の論争であり、文学の論争であり、いろんな論争が入ってきていました。文学なんて、日本資本主義論争と何の関係があるのと思うでしょうが、例えば『蟹工船』という小説がありますね。数年前ブームになって、新潮社は文庫を売って大儲けした。小林多喜二は著作権が切れていますし、岩波文庫版はそんなに売れなかったから、儲けたのは新潮社だけでした。
 前回、現代ならば『資本論』はリカードの『経済学および課税の原理』の盗作だと訴えられるだろうと言いましたが、同じように小林多喜二の『蟹工船』も訴えられるかもしれません。プロットもエピソードも、その数年前に発表された葉山嘉樹(はやまよしき)という作家の『海に生くる人々』によく似ているのです。『海に生くる人々』はプロレタリア文学の傑作中の傑作だと思います。葉山嘉樹は他にも『セメント樽の中の手紙』とか『淫売婦』などの代表作がありますが、全部キンドルでタダで読めますから覗いてみて下さい。日本のプロレタリア文学の中で国際的な広がりがあるセンスを持った人ですよ。
 『蟹工船』の中には、不思議な記述があります。ストライキをやったら、その鎮圧に海軍が来た、と書いてある。これはあり得ない話です。天皇制軍隊が入ってきた、みたいな話になっていますが、ストライキの鎮圧は警察の担当であって、軍隊の担当ではありません。『海に生くる人々』では、ストライキにちゃんと水上暑が入ってくる。小林多喜二はエリート銀行員でしたから、耳学問でしか船員の生活を知らないのです。だから観念的にしか描けていない。葉山嘉樹は自分自身が船員をやっていますからね、リアリズムで書いている。
 葉山嘉樹は、労農派の数少ない文学者です。小林多喜二は共産党に入っていました。『蟹工船』と『海に生くる人々』を読み比べてみると、講座派と労農派、二つのグループの思考の鋳型の違いがよくわかります。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「1930年代の反復が起きている」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~

【佐藤優】1930年代の論争が今も反復されている ~いま生きる「資本論」(22)~

2018年06月17日 | ●佐藤優
 <ここで、一回目の講義でも触れましたが、日本資本主義論争についてもう一言申し上げます。
 今もなお、無意識のうちに講座派と労農派というそれぞれの枠組みの中で、発言している知識人が多いのです。前に説明したように、講座派は共産党系で、天皇制打倒を目指しました。ですから、国体を破壊しようとする団体として大弾圧を受けることになります。それに対して、天皇はもはや大財閥の力学の中に埋没しており、社会主義革命を行うのだと主張していた労農派は、言論の枠内での活動をしていると見なされ、だから最初は弾圧されなかった。そうなると、共産党からすると「労農派なんていうのはマルクス主義陣営を誤らせるための体制の補完物じゃないか、社会ファシストじゃないか」と見えるようになり、「まず労農派を打倒する」となって内ゲバが始まったのです。
 講座派は、日本は単なる遅れた封建社会ではなく、絶対主義天皇制の下、官僚と地主がくっ付いて、日本独自のシステムを作っているという考え方です。だからと言うべきか、共産党の人たち、講座派の学者らは、転向した後、天皇主義者になる人がすごく多かった。戦後になっても、共産党からスタートした知識人たち、例えば読売新聞の渡辺恒雄さんなども日本主義的なところへ収斂していきます。
 対する労農派は世界システム論に立っていますから、講座派がこだわる日本の特殊性には無関心です。そして、労農派は転向しないんですね。転向しないで、手に職を持って、ずっと裁判闘争を続けるわけです。戦後においても、世界システム論的な発想をしました。労農派の発想というのは、突き詰めていくと新自由主義的な発想やグローバリゼーションと親和的になっていきます。
 ちなみに、現在の論壇の中で講座派的な思考をせずに、労農派的・世界システム論的な発想をしているのは池上彰さんです。彼の思考の鋳型は、今の日本の論壇人の中で異質です。これは日本資本主義論争の経緯を見ていればわかる。池上さんは労農派的な発想の持ち主ですよ。彼自身は自分の過去についてあまり語らないけれども、私はあの人に労農派的なバックグラウンドがあると推定しています。というのは、私自身に労農派的なバックグラウンドがありますから、似た匂いのやつはわかるんですよ、いくら隠したって(会場笑)。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「1930年代の反復が起きている」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~


【南雲つぐみ】入浴剤の効き目 ~皮膚の血流量が短時間で増加~

2018年06月17日 | 医療・保健・福祉・介護
 夏だからといって、体は冷えないと考えるのは、逆かもしれない。エアコンの中で半袖の薄い服を着て、さらに冷たい飲み物を大量に取ると当然体は冷える。冬より無防備なのだ。
 特に、体脂肪が多く、筋肉量の少ない人は、一度冷えるとなかなかもとに戻りにくい。
 化学メーカーの花王(本社・東京)の研究では、お風呂に二酸化炭素と芒硝(ぼうしょう)の入った入浴剤を使うことで、さら湯に入浴するよりも、皮膚の血流量が短時間で増加するという結果が出た。芒硝とは、硫酸温泉のことで、日本の温泉によく含まれる成分だ。さらに、体内の深部体温が短時間で上昇して、体全体が早く温まるという結果も得られたという。特に、冷えや疲労を感じていた人に、入浴剤で2週間連浴するという臨床試験を行ったところ、自覚症状が改善したと60%以上の人が回答したそうだ。
 お湯につかりながら、首を回したり、両方の肩甲骨をくっつけるような気持で背中を伸ばしたり、軽くストレッチをしたりすると肩凝り解消にも効果があるだろう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「入浴剤の効き目 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年6月16日)を引用

【保健】大量飲酒の健康リスク ~認知症発症が3倍以上に~

2018年06月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)世界保健機関(WHO)が公表している「国際疾病分類(ICD)」の現行版ICD-10では、飲酒に関わる問題を「有害な使用」と「アルコール依存症」に大別している。
 「有害な使用」に相当するのは、精神的、身体的な健康が実際に損なわれているケース。社会通念に反し、社会生活や家族関係の破綻、あるいは逮捕されるような状況だけでは、アルコールに関係した問題とは診断されない。

 (2)一方、「アルコール依存症」は、12カ月の間に、次の6項目のうち3項目が同時に起きた、あるいはくり返された場合を指す。
  (a)飲酒したいという強烈な欲求、強迫観。
  (b)飲酒の開始、終了、量をコントロールできない(抑制喪失)。
  (c)減酒、あるいは禁酒時に寝汗、手の震え、イライラ感などが生じる(離脱症状)。
  (d)大量に飲まないと酔えない(耐性の存在)。
  (e)酔いから醒めるのに1日の大半を使う、飲酒以外の娯楽を無視する(飲酒中心の生活)。
  (f)有害だとわかっているのに、飲酒をやめられない。
 特に(b)の抑制喪失と(c)の離脱症状がポイントで、(b)と(c)が併存している場合、体内のアルコール濃度を一定レベル以上に維持しようとするため、一定量のアルコールを数時間おきに飲み続ける典型的な「連続飲酒」におちいる。

 (3)大量飲酒の害は明らかだ。110万人以上の認知症患者のデータを解析したフランスの報告では、アルコール依存症、プレ依存状態(乱用)の場合、認知症発症リスクが男性で3.36倍、女性で3.34倍に上昇することが示された。
 しかも、65歳未満で発症する「若年性認知症」患者の実に57%がアルコール依存症または乱用状態だったのだ。
 「健康に良い」とされる適度な飲酒でも週に14~21単位(ビール350ミリリットル缶8~12本)の適量で、1単位未満(同135ミリリットル缶1本半ほど)/週の人より、認知機能を司る脳の萎縮リスクが3.4倍になることが知られている。
 あの一杯を諦めるのは難しいが、やめどきは決めた方がいい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「大量飲酒の健康リスク/認知症発症が3倍以上に ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.401~」(「週刊ダイヤモンド」2018年6月9日号)

 【参考】
【保健】世界一辛い唐辛子にご注意 ~脳血管れん縮リスクあり~
【保健】帯状疱疹は予防できる時代 ~50歳以上はワクチン接種を~
【保健】資産損失ショックは健康リスク ~無資産なみに死亡率が上昇~
【保健】薬で顎が腐る? ~骨粗しょう症の人は要注意~
【保健】電子たばこで禁煙成功率が向上 ~約16万人の全米調査~
【保健】完璧主義者の抑鬱 ~親友に接するように自分にやさしく~
【保健】子どものエナジードリンク摂取 ~米国スポーツ医学会が警告~
【保健】高血糖で認知機能が低下 ~健康的な生活が脳を守る~
【保健】心筋梗塞の自覚症状は? ~吐き気や腹痛、男女差も~
【保健】世界各国のパンを比較 ~意外に塩分が高いと判明~
【保健】片頭痛持ちは脳・心血管に注意 ~特に診断後の数年間は節制を要す~
【保健】高い平熱は1年死亡リスクと関連? ~男性も基礎体温を測ってみよう~
【保健】急性虫垂炎の治療は手術か、薬か? ~外科医が選ぶのは~
【保健】シリコンバレーの贖罪? ~元役員らがネット依存警鐘団体~
【保健】花粉症シーズン始まる ~今年の飛散量は多いか、少ないか~
【保健】トマト2個で肺機能を守る ~「前」喫煙者にも効果~
【保健】ナッツを食べて心疾患を予防 ~1日30グラムのお手軽健康法~
【保健】ついに薬もIoT ~胃液センサーで服薬管理~
【保健】犬を飼うと長生きする ~特に、一人暮らしにお勧め~
【保健】何年禁煙したら帳消しになるか ~女性は11年、男性は~
【保健】食後の血糖値スパイク ~カーボ・ラストでまったり改善~
【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~
【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【佐藤優】贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」 ~いま生きる「資本論」(21)~

2018年06月16日 | ●佐藤優
 <(承前)
 そしてポランニーの指摘する三番目の経済は、商品経済です。贈与と相互扶助と商品経済の三つが「人間の経済」だとポランニーは考えました。
 私の経験からすると、贈与や互助が商品経済と同等の比重で機能しているところって、沖縄の離島にはいくらでもあります。例えば私の母親の故郷である久米島(くめじま)です。沖縄県の県民所得は日本人全体の平均所得の約7割ですが、久米島は沖縄県平均の約7割、つまり7割の7割で49%。日本人の平均所得の49%というと、生活はとても厳しいという印象を受けます。ところが行ってみたら誰でもすぐわかるように、非常に豊かな暮らしをしています。理由は、海産物と野菜に関しては誰も貨幣を媒介としないからです。買わなくても、誰かが玄関に置いていってくれる。せいぜいコメと肉を少し買うぐらいで、あんまり食費がかからないんです。そして、家に鍵をかけません。人口8,000人の島だけれども、警察官は8人か9人しかいないと思います。何か悪いことをしたやつが出たら、空港か港で張っていればいい。沖縄本島から100キロ西に離れていますから、浜からボートで逃げるわけにもいかない。だから盗人(ぬすっと)なんていませんし、生活保護の不正受給もないし、国民年金の未納者もいない。みんなお互いのことをわかっていますからね。銀行も郵便局も島の人が勤めていますから、誰にどれぐらい貯金があるか全員知っています(会場笑)。
 あそこには泡盛の「久米島の久米仙」という会社があって、先代の社長の時に比べて今は売上が2,000倍増えています。ですから今の社長がインフラ整備とか何とかで、ばらまいている。あるいは大々的にスーパーを経営していたおじさんが、スーパーを全部閉じた。その際、島に19億円だったかを寄付しました。これ、何の見返りもないのです。選挙に出るわけでも、銅像を建ててもらうわけでもない。でも、それは島の人間ならやらないといけないと思っているんですね。ですから私も、目に見えない力に従って、ふるさと納税を久米島町に対して毎年やっています。
 久米島には贈与も相互扶助もあって、商品経済のウェイトが非常に低いわけです。その上、久米島町の広報紙を読むと、「冠婚葬祭簡素化を推進しましょう」と書いてある。のし袋がとにかく売れるんだそうです。「あんたのおじいさんの五十回忌だ」とか「あなたの従兄弟(いとこ)が大学に入ったそうだな」とか、もっと何だかよくわからないような機会を含めて、みんなで1,000円とか500円とかおカネのやり取りをしている。こういう土地が日本にもまだあるんです。
 ともあれ、商品経済の中だけで暮らしているわれわれと、そういう環境で生きている人たちとは、世の中がまるで違うように見えているでしょう。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「贈与と相互扶助の久米島」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~



【南雲つぐみ】「養生訓」に叱られる ~食べないという健康法~

2018年06月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 江戸時代の儒学者で食の養生家である貝原益軒は「養生訓」で「夜食する人は、暮れて後、早く食すべし。深更にいたりて食すべからず」と夜遅く食べることを戒めている。さらに次のような一節もある。
 「朝食いまだ消化せずんば、昼食すべからず。点心などくらふべからず。昼食いまだ消化せずんば、夜食すべからず。前夜の宿食、なお滞らば、翌朝食すべからず」。
 点心とは軽食、間食のことで、とにかく食べたものがしっかり消化して空腹になるまでは次の食事を入れるなと言うのだ。
 分かっているけれど、おいしそうなものを見ると食べたくなってしまう・・・・。そう思っていたら、次の痛烈な一節が目に入ってきた。
 「およそ食傷を治すること(食による胃腸病を治すには)、飲食をせざるにしくはなし」「養生の道を知らぬ人、殊に婦人は智なくして食滞の病も早く食をすゝむる故、病おもくなる」。
 江戸の昔から女性たちは食べることが大好きだったようだが、健康のためには何はともあれ節制が大切だとはっきり教えてくれる。

□南雲つぐみ(医学ライター)「「養生訓」に叱られる ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年7月31日)を引用

【佐藤優】相互扶助という経済 ~いま生きる「資本論」(20)~

2018年06月15日 | ●佐藤優
 <(承前)
 二番目は、相互扶助。別に金銭を媒介としなくてもいいのです。ソ連時代、物の価格は全てゴスプラン(国家計画委員会)で決めていました。それ以外の値段で売ると、投機行為罪になるんです。投機行為罪はそんなに重くなくて初犯ならば、せいぜい強制労働2年ですみます。
 では、人を雇って、「キャビアは公定価格で1,000円だ。ドルショップだったら5,000円で売っている。中を取って3,000円で外国人に売りさばいてこい。お前には一つ500円ずつやるから」なんてやっていると、これは投機行為罪だけでは済まずに、資本主義幇助罪という大罪になる(会場笑)。山崎豊子さんの『不毛地帯』を読まれた方は、主人公の壹岐正が懲役25年の刑を食わされる、その罪状の中に資本主義幇助罪が入っていたのを覚えているでしょうか。壹岐は「資本主義国家の軍人である私が、国家のために忠誠を尽くし、働いたことが、何故に貴国の国内法である資本主義幇助罪に問われるのか」と抗議しますが、むろん聞き入れてくれません。
 1992年1月、ロシアは物価統制を、基礎食料品のいくつかを除いて、撤廃しました。そうしたら、もうものの一週間で、闇市にしかなかったモノが商店に溢れるようになりました。その代わりロシア人が経験したことのない大インフレーションが起きました。政府の公式統計でその年のインフレーションは2,500%以上です。ですから貯金は完全に意味がなくなった。けれど暴動の一つも起きなかった。飢え死にした人もいなかった。どうして? 相互扶助の伝統があるからです。相互扶助と備蓄のおかげでした。
 これは、ソ連にいた人じゃないと感覚がわからないでしょう。例えば4月の終わりになると、ロシア人はそわそわするんです。11月の初めになると、やはりそわそわする。どうしてかというと、5月1日はメーデーですね。メーデーは事実上、春のお祭りでした。そして11月7日は革命記念日です。そうすると、その前にバナナの特売がありました。値段は安いんです。バナナを売っているとなると、当時のモスクワ市民は職場を放棄してバナナを買いに行きました。いくらでも買いたいのだけれど、争奪戦になるので一人だいたい5キロまでしか売ってもらえません。
 バナナを買ったらどうするかというと、みんな近所に配るのです。そうすると、そのバナナは必ずあとで鶏肉や卵になって返ってくる。ちなみにソ連時代、いちばん安い肉が牛肉、次に安いのが豚肉で、いちばん高いのが鶏肉でした。ブロイラーがなかったですからね。(中略)
 相互扶助の話でしたね。ソビエトシステムが崩壊しても、ロシア社会は崩れなかったのです。急速な資本主義がある部分で進み、オリガルヒと呼ばれる億万長者があれだけ出てきて貧富の差が大きくなっても、ロシアでは暴動も起きないし、べつに飢えるということもない。それはなぜかといったら、互助制度が発達しているからです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「贈与と相互扶助の久米島」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~


【佐藤優】贈与という経済 ~いま生きる「資本論」(19)~

2018年06月15日 | ●佐藤優
 <さて、元に戻します。日本語の哲学用語が皮膚感覚的にピンと来ないように、今の世界に生きるわれわれには隔靴掻痒というか、うまく想像しにくいものがあります。
 商品が生まれると必ず貨幣が生まれます。貨幣が生まれるところには必ず資本があります。資本主義社会のわれわれは、労働力の商品化がなされたもとで生きています。われわれはメシを食うために物を作り、その賃金で商品を買い、社会的関係を維持している。日常的に、生活に必要なものは全部カネを出して買っているわけです。ですから、カネなしで暮らしていた世界のことを想像しにくくなっている。実はわれわれが想像しにくくなっているものって、意外とたくさんあるんですよ。
 そんな視点から経済を見た天才的経済学者がカール・ポランニーです。彼はハンガリーの出身で、コロンビア大学で教えていたのですが、奥さんが共産党の関係者でマッカーシズム全盛のアメリカへは入国が認められなかったため、カナダに住んでニューヨークに通っていました。
 このポランニーが、「人間の経済」には三つの要素があると言っています。
 まず一つ目は贈与。お金をたっぷり持っているやつがひたすらばらまく。みなさんも、文化人類学の方で〈ポトラッチ〉なんて言葉を聞いたことがあるでしょう。ポトラッチをやる人間は、富をばらまいて、とにかく全部ばらまき終わって完全に破産するまでばらまき続ける。やがてまた別の新しいポトラッチが行われる。
 贈与って、モースの『贈与論』を読めばわかるように、面白いんです。人間には贈与されると、モノを返したくなる性格があります。ですから圧力鍋セットを売りつける悪徳業者なども、タッパーウェアなんかをまずあげるんですね。その後で説明会へ連れていけば、「モノをもらっちゃったから、こっちも何かお返しをしないと」と思って、契約するわけです。これを〈返報性の法則〉と言います。悪徳マルチ商法の人たちは、人間の心理をよくつかんでいますよ。
 逆に贈与をずっとするが、与えるだけで、返さないでいいとなると、力関係になります。だから派閥の領袖が、夏には氷代、冬には餅代とばらまく。最初は仲間同士のつもりでいても、いつも奢られていると、それは力関係になってしまいます。これも一つの経済です。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「贈与と相互扶助の久米島」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~

【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~

2018年06月14日 | ●佐藤優
 <ただ、そうなると、『資本論』で説明できないことが出てきます。労働者階級、資本家階級、それから地主階級、この三大階級によって社会が成り立っている。では公務員は、どこに所属するんですか?
 共産党系の本を読むと、指定職局長以上の公務員はみなし資本家、つまり資本家の仲間であり、役職がついていないヒラの公務員はプロレタリアート--そんな分け方をしています。これはまったく理論的な基準がないと私は思う。公務員論になると、マルクス経済学やマルクス主義者はほぼ破綻していますね。
 本当のことを言いましょうか? この教室に公務員の方がいたらごめんなさいね。私は元外務公務員だったのでよく知っていますが、公務員というのは社会に寄生している存在です。社会の外側にいて、国家の暴力を恃(たの)んで、社会から収奪しているのです。その点は、マルクスの『資本論』とリカードの『経済学および課税の原理』の断絶を見ればわかります。『資本論』は社会を分析した書物です。社会の構造の中では、国家のことを持ち出さなくてもすむんですよ。国家は、『資本論』においては社会の外側にあるものなのです。だから、国家については別途考えないといけない。
 結論を言うと、国家は社会から吸い上げることによって生きています。こういう国家の本質を深く分析し、よく理解していたのは、マルクスではなく、マックス・ウェーバーとレーニンでした。>

 <本質において、国家というものはあくまで社会の外側にあって、社会から収奪していく存在です。ここをきちんと考察しているのが、柄谷行人さんですよ。私は彼から非常に強く触発されて、NHKブックスから『国家論』という本を出していますので、関心がある方は読んでみて下さい。>

 <国家は社会の外側にあり、本質において暴力的であり、やはり本質において官僚階級が恣意的に運営している。こういうシステムだということも、『資本論』から読み込んでいけるのです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「2 どうせ他人が食べるもの」の「公務員とは何か?」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~