ある時、鰻売りの又六が強くなりたいと大治郎にお願いする。
悪いヤツから、売り上げを脅し取られているのだ。
大治郎は小兵衛に相談し、10日間で強くする事を承知する。
強くなるのは、技じゃないのだ。
大治郎「剣術は懸命に10年して、俺は強い、という自信が出る。
更に10年やると、相手の強さがわかる。
それから、また10年やると・・・」
又六「合わせて30年もかね」
大治郎「そうだ。すると己がいかに弱いかがわかる」
又六「それじゃ、何にもならねぇ」
大治郎「40年やると、もう、何が何だかわからなくなる」
又六「だって先生は俺と同じ年頃なのに・・・」
大治郎苦笑する。
小兵衛の言葉の受け売りだ。
ほとんどの道に通用する言葉だろう。
特に技の道は当てはまるだろう。
ワシはまだ20年たってないが、わけがわからない。
故御師匠様も「わからんばかりだと、解ってきた」と。
この世は、わからぬ事ばかりだと解り出した。
わからない事だらけだと知って、プロの自覚が高まった。
初期は、やるたびに何かが解ったと思っていたものだ。
10日間、又六は大治郎と寝食を共にする。
本物といれば、本物の「氣」は伝わるものだ。
本物の剣客ともなれば、肚(はら)胆(きも)が伝わる。
強さは優しさがあるからと、理屈無く染み込む。
僅か10日間でも、チンピラなど問題じゃなくなる。
自信をもって、又六は鰻売りに精を出すようになった。
(「悪い虫」より)
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