水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「迷解剣客商売・24」

2011-05-24 19:13:51 | Weblog



ある時、鰻売りの又六が強くなりたいと大治郎にお願いする。
悪いヤツから、売り上げを脅し取られているのだ。
大治郎は小兵衛に相談し、10日間で強くする事を承知する。
強くなるのは、技じゃないのだ。

大治郎「剣術は懸命に10年して、俺は強い、という自信が出る。
更に10年やると、相手の強さがわかる。
それから、また10年やると・・・」
又六「合わせて30年もかね」
大治郎「そうだ。すると己がいかに弱いかがわかる」
又六「それじゃ、何にもならねぇ」
大治郎「40年やると、もう、何が何だかわからなくなる」
又六「だって先生は俺と同じ年頃なのに・・・」
大治郎苦笑する。
小兵衛の言葉の受け売りだ。

ほとんどの道に通用する言葉だろう。
特に技の道は当てはまるだろう。
ワシはまだ20年たってないが、わけがわからない。
故御師匠様も「わからんばかりだと、解ってきた」と。
この世は、わからぬ事ばかりだと解り出した。
わからない事だらけだと知って、プロの自覚が高まった。
初期は、やるたびに何かが解ったと思っていたものだ。

10日間、又六は大治郎と寝食を共にする。
本物といれば、本物の「氣」は伝わるものだ。
本物の剣客ともなれば、肚(はら)胆(きも)が伝わる。
強さは優しさがあるからと、理屈無く染み込む。
僅か10日間でも、チンピラなど問題じゃなくなる。
自信をもって、又六は鰻売りに精を出すようになった。
(「悪い虫」より)


        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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コメント
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