衝撃的な陥没事故から2年2ヵ月、今月18日から事故現場では、最大の難関である水抜き工事がはじまった。工事開始から10日余り、今はまだ準備段階のようだが、もうすぐ試験水抜きが行われる。トンネル坑内には1万4,000㎥(1400万リットル)もの水が溜まっており、さらに6,200㎥の土砂が詰まっている。地盤改良されているとはいえ、これらを上手く取り除くのは容易ではないだろう。
先日、福岡市建設技術専門委員会のメンバーでもある、九大三谷教授は「今からはじめる水抜きが一番の肝、ここが上手く進むかどうかによって、今後の計画も変更になる可能性がある。これは本当に慎重にやらなくてはならない作業だ」とコメントされている。さらに、水抜き後の再掘削(ナトム工法)についても「中の状況が以前掘った時とほぼ同じような健全な状況であれば、それなりの工法(ナトム工法)でいけるが、もし、変状が起こっていると工法は変えなければいけない」と工法変更の可能性を示唆されている。福岡市は、ナトム工法にかなりの自信を持っている(というか懲りていない)が、リスクは潜んでいる。そこを三谷教授も指摘されている。
水抜きが上手くいくかどうかは、地盤改良がいかに確実にできているかによる。というのも、地盤改良範囲には、地下約11mに直径約2.5mの雨水幹線が通っており、陥没時に一緒に落ちた信号機や管路なども埋まっている。こうした箇所は、固化材の噴射や撹拌の度合いを適切に設定できず、改良不足になる恐れがあるといわれている。また、岩盤層と改良部の境界部分、いわゆる難透水性風化岩層の改良が上手くいっているかどうか。高圧噴射撹拌工法は、難透水性風化岩層のような比較的固い地盤では効果を発揮しにくいといわれている。これらの改良が上手くいっていなければ、トンネル内の水位と一緒に周辺の地下水位も下がり、上からの水の流れを止められなくなる。そうなると(ここで手を打たなければ)、ふたたび陥没する恐れもある。こうしたリスクは、市民には知らされていない。
高島市長は著書「福岡市を経営する」の中で、陥没事故の対応を安倍首相や世界から称賛されたことを得意げに語っているが、そもそもの原因は福岡市にある。にもかかわらず、その振り返りも、市民への説明も未だになされていない。あり得ない話だが、これが今の福岡市。そんな中で、水抜き工事がはじまる。工期は約2ヵ月。ポンプを使い、溜まった水を下水管に流す。その後、約4ヵ月かけて土砂を撤去、夏頃から再掘削がはじまる。大成JVも威信をかけて臨むだろうが、油断はできない。
立坑の長さは28m、ここからポンプを使って排水する(写真:RKBニュースより 以下同じ)
このイメージ図には書かれていないが、岩盤層と改良部の境に難透水性風化岩層がある
九大三谷教授、御用学者揃いの委員会の中で貴重な存在
トンネルの状態はいかに、、(ナトム工法がよくわかる写真)
地盤改良、果たして上手くいっているか、、
現在は準備中、来週5日ごろから試験水抜きがはじまる予定(福岡市資料より)
福岡市交通局がウエブで発信している「工事だより」、市民への説明はこれだけ(1月25日)
《関連記事》
・博多駅前陥没現場で水抜き工事開始 再掘削に向け、福岡市(西日本新聞 2019.1.18)
《関連資料》
・大成JV。福岡市地下鉄七隈線建設工事 博多駅工区(ナトム・人工岩盤掘削区間)に関する情報