先週末、日本を襲った台風19号は多くの人の命を奪った。被害は関東から甲信越、東北と広範囲に及んでおり、全容はわかっていない。行方不明者の捜索は今も続いている。そのような状況の中、今回の被害を「まずまずで収まった」と言い放った愚かな人間がいる。まさに無知蒙昧としか言いようがないが、おかげでこちらは怒りが収まらない。人の命を一体何だと思っているのか。大きな災害ゆえ、すぐに被害状況は掴めない。そんなこともわからないのか。昨夜、発言撤回との報道が流れていたが、インタビューをみると撤回などしていない。「不適切だといっているのだから、もういいだろう」と不貞腐れているだけだ。議員というより、人間として最低だ。
前置きが長くなってしまったが、台風19号による大雨と強風の解析結果が、防災科学研究所から報告されている。それによると、大きな被害がでた千曲川流域や阿武隈川流域の降水量は、所により再現期間が100年を超える非常に稀な量だったという。また風速25m/Sを超える強風域が東京湾から流入し、千葉県東部から茨城県東部へ移動していた。台風19号は12日19時頃、955hPa、最大風速40m/sで伊豆市付近に上陸し、北東に進み三陸沖に抜けた。東海地方を含む、東日本の広範囲に大雨をもたらし、多くの河川がそれに持ちこたえられず氾濫した。千葉県市原市では竜巻の被害も出た。16日午後9時現在の被害状況は、死者77人、行方不明10人、 けが人346人、堤防決壊59河川90ヵ所、土砂災害は19都県で170件を超える。これを未曽有といわずして、何という。
気象庁は昨年、台風の名称を定める基準を「大規模損壊1000棟以上、浸水家屋1万棟以上、相当の人的被害」と設定した。今回、すでに死者・行方不明者80人以上となり、浸水家屋は1万棟を超えている。被害規模以外に伝承という基準もあるらしい。最終的には、来年5月までに判断するという。いずれにしろ、この台風が日本の災害史に刻まれるのは間違いない。
ところで、昨日(5日)9時、フィリピンの東に熱帯低気圧が発生した。 現時点では、この熱帯低気圧が台風となる可能性は低いという。ただ、この熱帯低気圧の影響で南から湿った空気が入り込むため、今週末、東日本でふたたび大雨になるという。新たな災害が起きないか心配だ。これ以上、被災者が出ないよう祈るしかない。
※一番下に更新しています(10月28日)
13日午前7時前(NHKおはよう日本より)
朝起きてテレビをつけると、とんでもない光景が目に飛び込んで、、
助けを求める人の姿が、、
16日NHKニュースより
死者は福島県が一番多い(宮城県丸森町11人、神奈川県相模原市8人、福島県本宮市7人など)(16日午後9時現在、死者77人)
10月28日現在、死者88人行方不明7人
国交省の被害状況をみると、決壊箇所が一番多かったのは阿武隈川水系だった。これが死者数の多さにつながったのか、氾濫が夜中に起きていることや川が人口の多いところを流れていることも要因となっているようだが。
実は、台風が接近する12日朝から国交省「川の防災情報」を見て、異変があればすぐにツイッターで危険を知らせようとスタンバイしていた。ところが、12日午後1時頃、サイトにアクセスが集中したため、川の防災情報のホームページがダウンした。これから本番という時に情報が入らなくなった。そこで、別のサイトを探していたところ、北陸地方整備局と関東地方整備局のサイトがダウンせずに頑張っていた。しかし、情報が集約されていない上、12日夕方頃から同時多発的に氾濫が起きていたため、情報発信は容易ではなかった。結局、川の防災情報が復活したのは(おそらくだが)12時間前後。この空白は大きい。下画像はこの二つのサイトから入手し、保存していたものの一部。災害の記録として、今後に生かせれば。
【長野県千曲川】
12日17時40分、上田市生田観測所で氾濫危険水位到達
12日20時35分、上田市国分付近で氾濫発生
12日23時頃、「川の防災情報」を確認したが、ダウンしたままだった。
13日1時15分、長野市穂保で氾濫発生(就寝中のため画像無し)
13日4時頃、目が覚めて「川の防災情報」を確認したところ、サイトが復活していた。
13日6時30分、長野市穂保で堤防決壊(上のNHK画像の状況)
13日9時前
決壊近くに多くの人が集まっていた お寺の向こうに氾濫した千曲川がみえる
【東京都多摩川】
午後6時前、すでに氾濫していた
同時刻、二子橋の上流も氾濫寸前だった(川の様子を見る人の姿が映っていた これは危険)
【宮城県吉田川】
13日9時40分氾濫
午前9時頃、カメラを見たときにはすでに決壊していた ここは以前から危険性が指摘されていたところらしい
13日14時頃
応急工事の準備がはじまっていた
10月17日更新 ー西日本豪雨を超える被害ー
台風による被害は増え続けている。死者77人、行方不明9名、けが人372人。堤防の決壊は(昨日より9河川35ヵ所増)、68河川125ヵ所。住宅の浸水被害はおよそ4万棟、土砂災害は308件(18日午前7時時点)に上る。国交省によると、台風19号による豪雨で浸水した面積は、およそ2万3000ヘクタールとなり、昨年7月の西日本豪雨の1万8500ヘクタールを超えたという。河川決壊についても、西日本豪雨(25河川37ヵ所)を大きく上回っている。まさに巨大台風による過去最大の被害となった。
個人的に思うことがある。それは危険性を知らせる側の問題である。まず、メディアに関していえば、9月の台風15号が風による被害が大きかったこともあり、風に対する危険性はかなり報道されていたが、大雨に対しては少なかったように感じる。気象衛星画像をみれば、雲の厚さがどれほど異常に厚かったかがわかる。九州北部豪雨や西日本豪雨のような状況になる可能性も十分あった。もう一つは、気象庁の会見である。気象庁は、台風19号上陸前日(11日)、1958年伊豆半島の狩野川が氾濫した「狩野川台風」に匹敵すると注意喚起した。しかし、この例えはかなり限定的で、今回、被害が大きかった福島や宮城県など東北地方は大して危険性がないようにも聞こえる。その上、昔の災害で切迫感を伝えるのに適切だったのか疑問が残る。こうしたことが、結果的に人々に油断を与える要因の一つになったのではないのか。今後、検証はされるようだが。
17日NHKニュースより
千曲川決壊場所 仮堤防は今日中に完成する見込み 持ちこたえますように、、(工事は17日午後11時50分に終了)
10月28日更新 ー台風19号豪雨、さらに千葉豪雨ー
台風19号上陸から半月。被害は増え続け、28日現在、死者88人、行方不明7人に上っている。亡くなった方は、福島県30人、宮城県19人、神奈川県14人、栃木・群馬・長野県各4人、埼玉・静岡県各3人、岩手県・茨城県各2人、東京都・千葉・兵庫県各1人と、福島県が圧倒的に多い。そこに追い打ちをかけるように、今月25日、台風21号と低気圧の影響により、千葉県や福島県でふたたび豪雨となった。千葉県では河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、9人が死亡、2人が行方不明になっている。わずか半日で1か月分の雨が降ったのだから、どれほどすごい雨だったか。ふりかえれば、一昨年の九州北部豪雨、昨年の西日本豪雨、そして今年。まだ命名はされていないが、広範囲に甚大な被害が及んでいることから、東日本豪雨となるのではないだろうか。(もしくは2019年10月豪雨か)いずれも自然は問答無用に人間に襲いかかってきている。「自分は大丈夫だ」という考えは、もう通用しない。自然の脅威は、そのレベルまで達しているのだと肝に銘じておかなくてはならないだろう。
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・仮堤防きょうにも完成 長野市穂保の千曲川(信濃毎日新聞 2019.10.17)
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・狩野川に匹敵」 注意喚起「検証必要」 気象庁長官(毎日新聞 2019.10.17)
・台風19号 気象庁、42年ぶり命名へ(毎日新聞 2019.10.16)
・千曲川決壊、過去最大の水量による水圧 越水も重なる 台風19号(毎日新聞 2019.10.15)
・阿武隈川で「氾濫連鎖」 須賀川、郡山、本宮、伊達など浸水被害(福島民友新聞社 2019.10.14)
《関連資料》