試験湛水がはじまって3年半、ついに五ケ山ダムが満水(試験湛水目標水位:サーチャージ水位413.4m)に達した。昨日(20日)、福岡市水道局のツイッターで満水になったことを知ったが、ブログの五ケ山ダム関連のアクセスが急に増えたので、おかしいなと思っていたが、そういうことだった。
(ご存じでない方もおられるかもしれないので)ふりかえってみると、五ケ山ダムは、昭和54年の調査開始から37年の歳月を経て、(RCD工法採用により)予定より1年早い2016年1月にダム本体が完成した。そして、同年10月21日に試験湛水がはじまった。当初、福岡県は満水まで1年半と見込んでいた。しかし、予測は大きく外れた。翌17年から断続的な少雨となり、巨大なダムには一向に水は溜まらなかった。同年7月には九州北部豪雨が発生したが、五ケ山周辺では大して雨は降らなかった。さらに、18年に入っても少雨は続いた。そうした中、7月6日西日本豪雨が発生した。この時、脊振一帯は豪雨となり、ダムの水位は一気に7.6m上昇、常時満水位(407.1m)に到達した。これで試験湛水も進むかと思われたが、そうはいかなかった。(この時点で併用開始は1年遅れといわれていた)
その後、ふたたび少雨は続き、ダムの水はどんどん減りはじめた。当然のごとく、五ケ山ダムのすぐ下にある南畑ダムの水も減るわけで、昨年(19年)1月、南畑ダムの貯水率は17%まで落ち込んだ。これほど低くなったのは、平成6年の「平成大渇水」以来のことだった。南畑ダムは福岡市へ水を供給しているため、水不足に陥ることを危惧した高島市長は1月30日、試験湛水中の五ケ山ダムの水を使うことを決め、県に要請をした。こうして、昨年2月14日、五ケ山ダムの放流がはじまった。放流は梅雨前まで行われた。この放流によって、水位は西日本豪雨前(6月1日399m)まで下がり、試験湛水は振り出しに戻った。
昨年は、6月末の九州南部の大雨にはじまり、7月の台風5号による大雨(このとき水位は401m)、さらに8月末の梅雨前線による豪雨と自然災害が相次いだ。皮肉なことに、こうした中で五ケ山ダムの水位は回復していった。8月28日には、満水(サーチャージ水位)まで4mのところ(409m)まで水位が上昇したため、洪水調節が行われた。その後、徐々に水位を上げていたようだが、今年に入ってからは、コロナ騒動で五ケ山ダムのことは頭からすっぽり抜けていた。そうした中、昨日、満水を知った。すぐさま、県の河川情報を見てみると、3月末時点で水位は411mまで上昇していた。今年は年明けから雨が多かったので、水は順調に溜まったのだろう。
これからダムの点検をしながら徐々に水位を下げていき、問題がなければ本格的に併用開始となる。当初の予定から2年遅れ、事業開始から実に41年である。五ヶ山ダム事業を追い続けておよそ8年、色々な思いはあるが、今、人々は未知のウイルスとの戦いの中にあって、水はいつも以上に貴重な存在となっている。それゆえ、今はただ、災害に見舞われることなく、五ケ山ダムが無事に運用され、人々のために役立つことを願っている。(2020.4.21)
この時点でサーチャージ水位まで4mだった (写真:今年1月10日撮影)
4月20日、満水に (福岡県 河川防災情報より)
《五ケ山ダム満水で”越流" 2020.4.22更新》
今日(22日)、那珂川市のわが家の畑へ行くついでに(外出自粛要請が出ているので気は引けたものの)、五ケ山ダムへ。現地に着くと、水位を下げるための放流がはじまっていた、と思ったら、”越流”だった。最高水位に達したため、自然に水が下へ流れていたのだ。あとで知ったことだが、これがニュースになっていたようで、ダムサイトには家族連れで訪れる人の姿も。急いで写真を撮り、退散した。
・貯水開始から約3年半 五ケ山ダムで”越流”(九州朝日放送 2020.4.20)※越流の様子が動画で見れます
撮影日:2020.4.22
満水 海のように
堤体付近
定点から見る
水は洪水調節ゲートへ(中央は取水設備)
佐賀大橋 水迫る
これまでで最高水位 (かつての小川内集落と東小河内集落あたり)
すべての洪水調節ゲートから(放流だと思っていた)
水位は413mくらい すでにサーチャージ水位(SWL)を少しだけ下回っていた
越流模様 生き物のよう、、