LAST (ラスト) (講談社文庫)石田 衣良講談社このアイテムの詳細を見る |
♪「LAST」石田衣良著 講談社文庫
いろいろな人生の「LAST」を集めた作品。
LAST RIDE
サラ金の取立てに耐えられず、自殺を強要される町工場の経営者「修二」
LAST JOB
借金に追われ、携帯出会い系サイトで知り合った身障者の男性に溺れる「真弓」
LAST CALL
テレクラのTV電話で、メグミの人生最後の話し相手となる「和之」
LAST HOME
40になったばかりでホームレスとブルーシートの家で暮らすことになる「聡」・・・
その他、中国人の窃盗団の片棒を担がされたり(LAST DRAW)、ベトナムで優秀な外科医の児童買春に立ち会わされたり(LAST SHOOT)、借金のためにヤクザにロシアンルーレットをやらされたり(LAST BATTLE)と、いろいろな人生のラストが登場する。
そのラストは、文字通り人生の最後として「死」や「破滅」そのものの場合もあるし、どん底から這い上がる「かすかな希望の光」に繋がる場合もある。
多少グロテスクな話もあったが、それなりに面白く読めた。
特に「LAST HOME」と「LAST BATTLE」は、ちょっと胸がチクッとした。
この時期(新世紀に入ってしばらく)の石田は、サラ金などに嵌まって身動きがとれず、人生の奈落をずるずると滑り落ちる人物に興味があったようだ。
この本の登場人物にも多いし、今読んでいる「赤・黒」の主人公もそうだ。
いつまで経っても景気は上向かず、そういう人間が未だに増えているのは間違いない。
インフレの「いけいけどんどん」の社会もゴメンだが、今のドロリとした停滞社会も困ったものだ。