漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「采サイ」<つみとる> と「採サイ」「菜サイ」「彩サイ」

2015年06月26日 | 漢字の音符
 サイ・とる  爪部または木部 

解字 甲骨文は実のなっている木の上に手先を描いた形で、木の実をとる意。金文以降は「手先+木」の形になった。木の実を指でつかんでとること。採の原字である。手先は現代字で「ノ+ツ」の形になっている。
意味 (1)とる(采る)(=採)。つみとる。えらびとる。(=採)(2)いろどり。あや。もよう。(=彩)(3)すがた。かたち。ようす。「喝采カッサイ」(やんやとほめそやす)「風采フウサイ」(人のみかけの姿)(4)[国]さい。大将が軍を指揮するとき使う道具。「采配サイハイ
意味の(1)と(2)は、のちに手へんや彡(模様)をつけた字に代替えされ、現在は本来の意味と少し異なる(3)と(4)になっている。

イメージ 
 木の実を「つみとる」(采・採・菜)
 良い実を「えらびとる」(彩・綵)
音の変化  サイ:采・採・菜・彩・綵

つみとる
 サイ・とる  扌部
解字 「扌(手)+采(つみとる)」の会意形声。手でつみとる意。
意味 (1)とる(採る)。つみとる。とり入れる。「採光サイコウ」「伐採バッサイ」(2)集める。「採集サイシュウ」「採取サイシュ」(3)選び取る。「採択サイタク」「採用サイヨウ
 サイ・な  艸部
解字 「艸(くさ)+采(つみとる)」の会意形声。つみとった野草や野菜。
意味(1)な(菜)。つみな。なっぱ。「野菜ヤサイ」「菜園サイエン」(2)あぶらな。「菜種油なたねあぶら」(3)おかず。料理。「菜料サイリョウ」「菜館サイカン

えらびとる
 サイ・いろどる  彡部
解字 「彡(模様)+采(えらびとる)」の会意形声。色を選んで模様をつける。
意味 いろどる(彩る)。いろどり。「彩色サイシキ」「色彩シキサイ」「彩雲サイウン」(ふちなどが美しく色づいた雲)
 サイ・あや・あやぎぬ  糸部
解字 「糸(いと)+采(えらびとる)」の会意形声。色糸を選んで模様のある絹を織ること。常用漢字でないため、采の上部が古形を残している。
意味 (1)あやぎぬ。模様のある絹。五色の色どりのある織物。また、その衣服。「綵衣サイイ」「綵帳サイチョウ」(美しい色絹のとばり・カーテン)。 (2)あや。色どり。模様。=彩。「綵房サイボウ」(美しく色どった部屋)「綵絵サイエ」(彩色絵)「動植綵絵ドウショクサイエ」(江戸時代の画家・伊藤若冲の代表作の一つ。30幅からなる動物と植物を描いた絹本著色チャクショク画)
<紫色は常用漢字>

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