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音楽は社会を変えうるか―グリーンランドの伝説的バンドに迫る映画『サウンド・オブ・レボリューション』

2016-11-02 | 先住民族関連
webDICE 2016-11-01 19:00
11/8(火)アップリンク渋谷にて特別上映+後継バンド・ナヌークのライブ

『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』より
11月8日(火)、アップリンク渋谷にて、グリーンランドの社会を変えたバンドと言われるバンド、スミの活動を追うドキュメンタリー映画『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』の上映が行われる。当日はグリーンランドで、スミの後継者と言われているロック・バンド、ナヌークのメンバーによるライブも行われる。webDICEでは開催にあたり、このイベントを企画するTHE MUSIC PLANTの野崎洋子さんに、この映画の魅力について綴ってもらった。
音楽は人の意識を変え、社会を変える―
『サウンド・オブ・レボリューション』を観て確信した事
文:野崎洋子(THE MUSIC PLANT)
音楽は社会を変えることが出来るのか?私たち音楽ファンがしばしば考えるひとつの大きな問題だ。日本でも、夏のフェスティバル・シーズン直前にミュージシャンの政治的発言が話題になった。しかし音楽は聴衆を楽しませる職業である以前に、ミュージシャン自身の表現活動なのだ。結果はどうであれ、いつの時代にも社会的表現活動をする音楽家は存在したし、音楽は人々の怒りや憤りを代弁してきた。作品の中に自分のメッセージをどの程度こめるかという事もあるが、今後も表現者は自分の表現に正直であるべきだと思う。
70年代、多くの人たちが自分たちのアイデンティティを求めて立ち上がった。アメリカの公民権運動、世界各地の先住民復権運動……。遠い北の島国グリーンランドも例外ではなかった。『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』は、そんな時代に結成され、グリーンランドの社会に大きな影響を与えたロック・バンド“スミ”のドキュメンタリー映画である。
映画の中で、バンドのファンの人たちがそれぞれの思いを語るシーンが印象的だ。当時のグリーンランドでは、母国語で歌う事はとんでもない事だとされていた。教育も国語の時間以外は、すべてデンマーク語で行われており、デンマークの統治下において従順でおとなしいグリーンランド人であることは非常に重要なことだった。若者たちは皆、高等教育を受けるために家族を離れデンマーク本国に行くしかなく、そこで祖国を忘れ、グリーンランド語を忘れた。
そこに出現したのが、グリーンランド語で歌うバンド、スミである。スミ(Sume)とはグリーンランド語で「何処?」という意味だ。もともとグリーンランドの各地にバラバラに暮らしていたメンバーは留学先のコペンハーゲンで出会い、このユニークなバンドを結成する。
グリーンランドはキリスト教の伝達とともに移民してきた白人の入植者と先住民族のイヌイットのふたつの文化が混在している、とても複雑な国だ。厳しい自然はもちろん、自殺やアルコール中毒など社会問題が極端に多いことでも知られる。進学のために渡った外国で、スミのメンバーは祖国の問題をより強く感じるようになった。
スミの楽曲は2人の才能あるソングライターに支えられていた。政治的で過激な歌詞を書き、常に社会的な意見を表現したいマリクと、自由な変拍子メロディでバンドのサウンドの要となり、どちらかというと政治にはまったく興味がないペールの2人だ。ちなみにリズム・チェンジが多い楽曲群のおかげで、当時スミの作品は日本においてはプログレッシブ・ロックのファンが注目していたらしい。グリーンランド語で歌うことを重要視した彼らの作品は、当時のグリーンンランドの人口の20%がレコードを買うという圧倒的な人気を獲得した。
スミは3枚のアルバムを発表した後、メンバーの卒業と同時に解散に至るが、その数年後の79年にグリーンランドはようやく自治権を獲得する。残念ながら、2016年の現在でもまだ完全な独立は非現実的だが、現在のグリーンランドは地球温暖化の影響を大きく受け、溶けた氷の下からレアアースが出現し世界の資本を呼び込むなど、人口わずか56,000人の国に、今、とてつもなく大きな変化が訪れている。その一方で、古くから豊かな自然に支えられてきたイヌイットの狩猟文化は、壊滅的な打撃を受けている。
映画の中で、真剣な目で話すマリクのまっすぐな視線がまぶしい。カリスマチックな彼は現在でもその面影をたたえ、力なく笑う。「随分昔の曲なのに、現代にも通じるとは驚きだ」「グリーンランドの状況は根本的な視点からすると大きくは変わっていない」
この映画を観て確信した事は、音楽は確かに人の意識を変え、社会を変える事が出来るという事だ。しかしそれはソングライターの意図通りにはなるとは限らない。この映画の監督は、本作品を映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』に近いテイストに仕上げたかったのだと言う。あの映画で「音楽はすごい!」「シュガーマン復活!」と盛り上がる外野の熱気をよそに、シュガーマン本人は静かな微笑みをたたえていたのが印象的だった。彼こそメッセージ性の高い楽曲を書くだけではなく、実際に選挙に立候補するまでした男だ。今の私たち以上に、そしてマリク以上に、世界を変えたいと思っていたに違いないのだ。
このドキュメンタリーの最後に出て来るエピソードなのだが、スミにおいては最終的に2人のソングライターが、まったく正反対の道を辿る結果になるのが興味深い。グリーンランドは、果たしてあの頃から前進しているのか?音楽だけでなく、すべての表現活動は社会を変えることが出来るのか。この映画は、とてつもなく大きな疑問を、現代の私たちに投げかけている。
そして曲の素晴らしさにも是非注目してもらいたい。スミのCDは残念ながら日本では入手不可能だが、映画の中でたくさん流れるので、上映中は存分に楽しんでほしいと思う。グリーンランド語の不思議な響きにも注目だ。
また映画の最期の方で、スミの意志をつぐ若いバンドの1つとしてナヌークのエルスナー兄弟が紹介される。ナヌークは2009年に結成されたグリーンランドのグループで、彼らもまた、グリーンランドの社会問題/環境問題を歌う。今回の上映時には来日中の彼らがアコースティック・ライブを披露するほか、来年2月に元R.E.M.のピーター・バックやマイク・ミルズたちとともにICE STATIONという地球温暖化問題にスポットを当てたコンサート・プロジェクトでも来日することが決定した。
野崎洋子 プロフィール
1966年1月生まれ、千葉県出身。メーカー勤務を経て、90年ごろアイルランド音楽と出会い、94年頃よりアイルランドを代表する女性シンガーメアリー・ブラックのOfficial Representativeとなる。1996年THE MUSIC PLANTを設立。ミュージシャンの来日コンサートや、日本盤CDリリースのコーディネートなど幅広い活動を続ける。
http://www.mplant.com/
映画『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』上映
+ Nanook(ナヌーク)アコースティック・ライブ
2016年11月8日(火)渋谷アップリンク・ファクトリー
19:00開場/19:30開演
上映作品
『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』
監督:Inuk Silis Hoegh
制作:Anorak Film
出演:Malik Hoegh(Sume), Per Berthelsen (Sume)、Emil Larsen (Sume), Hjalmar Dahl (Sume), Hans Fleischer (Sume), SakioNielsen (Sume), Christian & Frederik Elsner (Nanook)
企画:THE MUSIC PLANT
協力:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
2014年/グリーンランド/デンマーク語&グリーンランド語/日本語字幕/71分
ライブ出演
クリスチャン&フレデリック・エルスナー(ナヌーク)
劇場公式サイト
ナヌーク(NANOOK)
グリーンランドで最も人気のあるバンド。SUMEと同じくグリーンランド語で歌う。当映画ではエンディング近くでSUMEの意志を引き継ぐバンドとして登場。SUMEの曲を歌う。今回はバンドのフロントであるクリスチャンとフレデリックのエルスナー兄弟のデュオで来日。THE MUSIC PLANT20周年記念コンサートに出演する他、10/5に発売になるベスト盤のプロモーションを行う。2017年2月バンドで来日することが決定。
スミ(Sume)
1973年にレコードデビューしたグリーンランド語で歌う初めてのロックバンド。社会的なメッセージに溢れる音楽は、当時グリーンランドで大きなヒットを記録した。バンドは北欧エリアをツアーし、プロコルハルムの前座に声がかかるほどの人気を得たが、まだ学生であったメンバーは学業に専念し母国に帰国する道を選び、3枚のアルバムを残して解散。88年に再結成してからは70年代に作られた楽曲を最録音し発表している。変拍子を駆使した独創的な楽曲は、(日本では)プログレッシブ・ロックのリスナーにも高く評価されている。
▼映画映画『サウンド・オブ・レボリューション~グリーンランドの夜明け』告編
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=_3T8AWNuyOs
http://www.webdice.jp/dice/detail/5277/

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北メール 一家に一冊!UNドリップ=平田剛士さん(フリーランス記者) /北海道

2016-11-02 | アイヌ民族関連
毎日新聞2016年11月1日 地方版
 ささやかに企てていることがある。名付けて「ユーエヌドリップ拡散計画」。
 アルファベットで書くとUNDRIP。「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の英語名の略称である。
 2007年9月の国連総会が採択した。日本政府も署名に加わった。でも中身が国民に十分知れ渡っているとは思えない。だから広めたい。
 1970年代、アメリカ先住民の復興運動の中で「権利宣言」策定のアイデアが生まれた。アイヌ民族を含む世界中の先住民族と支援者たちが連携して作業を進め、長年にわたる交渉の末に各国政府の同意を引き出した。
 24段落からなる前文に続き、計46の条文が並んでいる。読み進みながら、例えば一番身近なアイヌ民族に引きつけて、ちゃんと保障されているかチェックマークを入れてみよう。空欄が残ったら、それが世界基準に照らして、日本で実現していない先住民族の権利だ。
 せっかくの宣言も憲法と同じで、社会で共有しなければ空文化してしまう。そこで少しでもとっつきやすく、とDTPソフトを使って日英併記の全文をA5判の小冊子に編集し直してみた。自宅のプリンターで印刷し、ホチキスでとじたら出来上がり。一部ずつせっせと手作りしては、あちこちに配っているところだ。
 焼け石に水とは思わない。冊子のデジタルファイルを国際NGO「市民外交センター」(東京都)のウェブで公開してもらった。拡散計画への勝手な参入を歓迎します。
http://mainichi.jp/articles/20161101/ddl/k01/070/079000c

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「カムイのいる大地」展 アイヌ文化、感じて 鞍手町歴史民俗博物館で /福岡

2016-11-02 | アイヌ民族関連
毎日新聞2016年11月1日 地方版
 アイヌ民族の歴史と文化を紹介する「カムイのいる大地」が鞍手町小牧の町歴史民俗博物館で開かれている。12月11日まで。入場無料。
 会場には、伝統的なアイヌ刺しゅうを施した衣装をはじめ、柄やさやに美しい文様を彫った「マキリ」と呼ばれる小刀、サケやアザラシの皮で作った靴、独特の楽器など約100点を展示している。また、アイヌ解放運動に取り組んできた宇梶静江さんが制作したアイヌ刺しゅうと昔話を組み合わせて描いた「古布絵」やオヒョウという木の内皮の繊維で織った「アットゥシ織」を展示している。
 独特の言語や楽器演奏を紹介する映像を上映している他、アイヌ民族の復権とアイヌ文化復興運動の歴史を紹介したパネル展示も。同館担当者は「訪れた中学生がアイヌ文様を見て『新しい』と感心していた。そんな感性を感じ取ってもらえれば」と話す。
 関連行事として、12月9、10日には、宇梶さんの講演会やアイヌ刺しゅう教室、昔話語りの会を予定している。同館0949・42・3200(月曜、祝日、第3日曜休館)。【武内靖広】
〔筑豊版〕
http://mainichi.jp/articles/20161101/ddl/k40/040/515000c


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