東京新聞 2025年2月5日 06時00分
原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を、北方四島に建設してはどうかとの一般人の提案に、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)幹部らが「魅力的」「一石三鳥四鳥」と発言していた問題。地元が反発し、3日には石破茂首相が「おわび」する事態に発展した。なぜ地元はこれほど強く異議を唱えたのか。怒りの根源を考えた。(木原育子)
◆一般参加者の提案に「実現すれば魅力的」
3日の衆院予算委員会。石破氏は「緩みやおごり、思い上がりがあったと思っている。政府の責任者として深くおわび申し上げる」と陳謝した。
中間貯蔵施設に置かれた高レベル放射性廃棄物の入った金属容器。最終処分場は決まっていない=2016年、青森県六ケ所村で
問題の発言があったのはエネ庁と、核のごみの処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が1月23日に東京で開いた説明会。両者は2017年から全国で対話型説明会を開いており、この日が累計200回目の節目だった。
エネ庁などによると、参加者が少人数のグループに分かれて幹部らと対話する形式で、一般参加者が「処分場を北方四島に建設してはどうか」と提案。この発言に、NUMOの植田昌俊理事が「一石三鳥四鳥だ」と呼応。エネ庁の横手広樹放射性廃棄物対策課長も「実現すれば魅力的な提案だが、現実的には難しい」との発言をしたという。
◆「日頃からそう思っているのでは」
この騒動が報道されると、北方領土出身者らが一斉に反発。北海道は28日、「北方領土は北海道の一部で、容認できない発言だ」などと口頭で抗議した。
資源エネルギー庁が入る経済産業省合同庁舎
道民は実際にどう感じたか。最終処分場の文献調査を受け入れた寿都(すっつ)町の人らでつくる「町民の会」共同代表の三木信香さん(53)は「笑って受け流せる言葉では到底ない。とてもがっかりした」と語り、「悪く言えば、日頃からそう思っているのではないか、本性が出たなとも感じた」と畳みかけた。
「三鳥四鳥」とは何を想定していたか。...
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