かつて夏休みの○○文庫の百選などに必ず入っていた小説だ。なんだか、この作者の小説は食わず嫌いできたのだが、揚州に行きたいという気持ちから読んでみた。面白かった。
途中から簡潔でありながら高貴な感じのするこの人の文体に引っ張られた。また、人物造型に引かれる。使命感と行動力を発揮する栄叡、迷いを持ちながらも完遂者としての宿命を担う普照はもちろん魅力的だが、中国全土を見ることに修行の意味を見いだす僧やひたすら写経し記録者としての悲劇を生きる業行らもしっかりと印象に残る。特に、この業行は記録者と文学者と行動家といった対比を考えるときに、作家自身への問いかけがあるように感じられた。
個人の時間と国家の時間とそれこそ運命の時間ともいえる大きな時間が描かれる中で、個人の時間の連続への意志が強く歴史に向き合っていく様が、その小ささゆえに感動的に響いてきた。情緒的表現ではなくイメージや叙事的叙述を絡めながら書かれている点もいいのかもしれない。
それにしても、玄奘三蔵、円仁、河口慧海、など仏教の経典や教義を求める執念はすごい。
途中から簡潔でありながら高貴な感じのするこの人の文体に引っ張られた。また、人物造型に引かれる。使命感と行動力を発揮する栄叡、迷いを持ちながらも完遂者としての宿命を担う普照はもちろん魅力的だが、中国全土を見ることに修行の意味を見いだす僧やひたすら写経し記録者としての悲劇を生きる業行らもしっかりと印象に残る。特に、この業行は記録者と文学者と行動家といった対比を考えるときに、作家自身への問いかけがあるように感じられた。
個人の時間と国家の時間とそれこそ運命の時間ともいえる大きな時間が描かれる中で、個人の時間の連続への意志が強く歴史に向き合っていく様が、その小ささゆえに感動的に響いてきた。情緒的表現ではなくイメージや叙事的叙述を絡めながら書かれている点もいいのかもしれない。
それにしても、玄奘三蔵、円仁、河口慧海、など仏教の経典や教義を求める執念はすごい。