ミステリーを期待すると浅薄な感じでがっかりするような。
ただ、ブラジルの作家が書き、ボルヘスが探偵役で、舞台がブエノスアイレスで、ポーの研究会「イズラフェル協会」の総会で集まった人の中で殺人事件が起こり、しかも密室で、ダイイング・メッセージあり、とくると、思わず、手にしちゃうよね。おまけに、今は夏。南半球の冬がいいような、毎日の暑さ。本の薄さも手伝って、とにかく、上手いよ、誘惑が。ただ、すべてに、もう少しと思ってしまう。ミステリーとしても、衒学志向としても。でも、案外、あらかじめ、そう思って読むと、面白いのかもと思わせる手際よさは、ある。
変転する目撃者の記憶。『モルグ街の殺人』やら、『黄金虫』やら、ポー跳梁、おまけにラブクラフト、ボヘミヤの図書館、カバラ、ヘブライ文字。それを語るボルヘスのボルヘス口調。そのオマージュの楽しさ。それも、もっとと思いつつ、これでも、きっといいのかも。いつか事件は置き去りにされる。と、突然、解決編が訪れる。うーむ。迷宮が足りないのかな。
しかし、探偵というのは面白い。今回のボルヘスだけではなく、勝海舟やカント、ボードレール、などが探偵役として登場した推理小説もあるし、また、時代精神を代表したような、あるいは徹底的に反時代的であるような探偵たちもいる。そして、推理小説の楽しみのひとつに、犯人捜し、トリック探しだけではなく、その衒学性があると思うわけで、そう考えると、この小説のボルヘスとの対話は面白いのかもしれない、うん、もっとボリュームがあれば。なんだか、矢吹駆かヴァンスに逢いたいような。法水麟太郎までいくと、いきすぎかな。
ただ、ブラジルの作家が書き、ボルヘスが探偵役で、舞台がブエノスアイレスで、ポーの研究会「イズラフェル協会」の総会で集まった人の中で殺人事件が起こり、しかも密室で、ダイイング・メッセージあり、とくると、思わず、手にしちゃうよね。おまけに、今は夏。南半球の冬がいいような、毎日の暑さ。本の薄さも手伝って、とにかく、上手いよ、誘惑が。ただ、すべてに、もう少しと思ってしまう。ミステリーとしても、衒学志向としても。でも、案外、あらかじめ、そう思って読むと、面白いのかもと思わせる手際よさは、ある。
変転する目撃者の記憶。『モルグ街の殺人』やら、『黄金虫』やら、ポー跳梁、おまけにラブクラフト、ボヘミヤの図書館、カバラ、ヘブライ文字。それを語るボルヘスのボルヘス口調。そのオマージュの楽しさ。それも、もっとと思いつつ、これでも、きっといいのかも。いつか事件は置き去りにされる。と、突然、解決編が訪れる。うーむ。迷宮が足りないのかな。
しかし、探偵というのは面白い。今回のボルヘスだけではなく、勝海舟やカント、ボードレール、などが探偵役として登場した推理小説もあるし、また、時代精神を代表したような、あるいは徹底的に反時代的であるような探偵たちもいる。そして、推理小説の楽しみのひとつに、犯人捜し、トリック探しだけではなく、その衒学性があると思うわけで、そう考えると、この小説のボルヘスとの対話は面白いのかもしれない、うん、もっとボリュームがあれば。なんだか、矢吹駆かヴァンスに逢いたいような。法水麟太郎までいくと、いきすぎかな。