パオと高床

あこがれの移動と定住

松岡正剛『千夜千冊 書物たちの記譜』(求龍堂)

2006-11-19 08:53:22 | 国内・エッセイ・評論
もの凄い本が出版された。
2003年ごろ、ウェブで出会った『千夜千冊』が全集になるとは。
この質と量は圧倒的だ。その別冊が本書『書物たちの記譜』で、解説や索引、年表が一冊になっている。そして、ここに、松岡正剛が自身の書いた読書を巡る記述をアンソロジーにした、読書術を書いているのだ。これだけでも面白い。そして立体的なのだ。
彼は「読書というもの、すでに書いてきたように、その行為があまりにも複雑なため、いまだにその実態があきらかになっていない総合的編集行為なのである。」と言う。その言葉通り、この「知の巨人」は頭の中に壮大な図書館を持っている。それはバベルの図書館であり、アレクサンドリアの図書館であり、ボルヘスの世界であり、夢見られた図書都市なのだ。実際、彼はウェブ上に壮大な知の伽藍を建てようと企てているらしい。内容、作者、項目さまざまな角度から検索移動が可能な、架空の図書都市をヴィジュアル含めて構築しようとしているとテレビで語っていた。
松岡正剛の読書自体がそうなのだ。ある断面からするりと別の地平へジャンプする。そこに読書当時に生きた作者の時代が浮かび上がる。と同時に、読んだ作品それぞれの著者の思考が別の流れに合流するのだ。背後には、あるいは前方には、広大な大海が想像される。一冊の書物は、数行のフレーズは、一つの単語は、さまざまな連関と断絶に出会い、あとがきの題名のように「まるで世界を編集しているようでした」になっていくのだ。
『千夜千冊』に僕自身が読んだ本が書かれると何とも言えずうれしい。そして、どこともしれない旅に連れて行かれるような楽しさが感じられた。


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井原弘『王朝の都 豊饒の街』(農文協「図説中国文化百華007」)

2006-11-19 01:28:00 | 国内・エッセイ・評論
中国都市のパノラマ。確かに中国の古都市の図版が魅力的だ。蘇州に行ったときに見た「平江図」「姑蘇繁華図」などが思い出された。というより、どちらも図版が掲載されていたし、「清明上河図」など多数、どれも引き込まれるように面白い。また、適宜、江南の写真もある。城というイメージが日本と中国ではかなり違う。いわゆる城都、城塞の違いであり、城壁の持つ地域区分の違いかもしれない。案外、その広大さが都市感覚の違いになり、さらには都市という概念の違いが、あるいはその概念の有無が、万里の長城をめぐる認識と概念の違い、問題に、と繋がるのかもしれない。
と、言いながら、この本は中途挫折で読了かなわず。ボクの好奇心の振幅の問題か、あるいは分析の軌跡を辿るスリリングな表現が足りなかったのかもしれない。
いずれにしても、この図版、楽しい。


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