共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

詳細

2011年09月26日 21時55分43秒 | 日記
過去ログを見た方から「ヴィオラ・ダモーレの説明が不十分」という御指摘を受けましたので、今更ながら解説致します。

以前にも載せた写真です。私の楽器はイタリア・クレモナ(名器の代名詞として有名なストラディバリの活躍した街)の楽器博物館にあるモデルのレプリカなので、ちょっと他のヴィオラ・ダモーレと形がかわっています。

この楽器はヴィオラ・ダ・ガンバ(『脚のヴィオラ』という意味)属の楽器なので、ヴァイオリン(発祥元はヴィオラ・ダ・ブラッチョ…『腕のヴィオラ』という意味)とはいろんなところが違います。

◎楽器の種類

●ヴァイオリン属…ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ

●ヴィオラ・ダ・ガンバ属(以下ガンバ属)…ディスキャント、トレブル、アルト、テナー、バス、ヴィオローネ(大型バス)。因みにコントラバスはこのガンバ属

◎ボディの形

●ヴァイオリン属…丸肩  

●ガンバ属…撫で肩

◎弦の数

●ヴァイオリン属…4本  

●ガンバ属…6~7本

◎調弦の音程の間隔

●ヴァイオリン属…5度ずつ  

●ガンバ属…3度や4度の複合(コントラバスは4度ずつ)

◎裏板

●ヴァイオリン属…膨らみが有る

●ガンバ属…真っ平

◎音孔の形

●ヴァイオリン属…f字型  

●ガンバ属…c字型や剣型

◎演奏形態(小型楽器の場合)

●ヴァイオリン属…肩に乗せる  

●ガンバ属…ガンバ(脚)だけに、腿に乗せる

◎弓の持ち方

●ヴァイオリン属…オーバーハンドグリップ  

●ガンバ属…アンダーハンドグリップ


ちょっと乱暴ですが、ざっと挙げるとこんな違いがあります。


で、このヴィオラ・ダモーレという楽器、実はちょっと立ち位置の微妙な楽器なのです。というのも、撫で肩の形状や7本もの弦を3度や4度に調弦すること、音孔が『アラブの燃える剣』の形をしていること等を見れば分かるように、この楽器はれっきとしたガンバ属なのです。が、演奏形態は脚に乗せるのではなく、ヴァイオリンのように肩に乗せて演奏しますし、弓の持ち方もアンダーではなくオーバーハンドグリップで持つという、ヴァイオリン属とガンバ属の両方の特性を併せ持ったものなのです。まるでイソップ話に出てくる、獣にも鳥にも仲間に入れてもらえないコウモリのような立ち位置の楽器なのです。

何でこんなことになっちゃったのかはわかりません。ただ、17世紀頃の銅版画にヴィオラ・ダモーレを肩に乗せて弾いている奏者の図があるので、恐らく開発当初からそうやって演奏していたのでしょう。

この楽器最大の特徴が、奏弦の下に張られた共鳴弦の存在です。この共鳴弦の端は、テールピース(緒止板、写真の駒の更に下に写っている長丸っこい物体)の裏側を通って、楽器の一番底の部分(テールピースの横にチラッと白いものが見えるでしょうか?ここの更に下の部分)にとめてあります。

ここからスタートした共鳴弦がどうなるかは、次の頁へ…。
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共鳴弦の通り道

2011年09月26日 17時53分05秒 | 日記
楽器の底辺部の突起に引っ掛けた共鳴弦は、テールピースの下を通って駒に達します。

駒は奏弦と共鳴弦と共用になっています。写真にありますが、駒の中程に穴が開けてあって、そこに共鳴弦をくぐらせます。それから共鳴弦達は、何と指板の下に開けてあるトンネル部分に突き進んで行くのであります。そして…。
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ここを経由して

2011年09月26日 17時43分43秒 | 日記
指板の下を通った共鳴弦達は、指板上部のトンネル出口から出てきて、更に奏弦の糸巻きの下側を通って折れ曲がって、楽器の裏側にまわります(奏弦の下に写っているのが分かるでしょうか?)。
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ここに出てきて

2011年09月26日 16時57分28秒 | 日記
指板の下から出てきた共鳴弦は、楽器の裏側にあるこの隙間から出てきて…。
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最終的に

2011年09月26日 16時53分51秒 | 日記
で、最終的には楽器の裏側にある共鳴弦用の糸巻きにそれぞれ装着するわけです。

共鳴弦って楽器の一番底の部分から張られていますから、一番長い弦で90㎝くらいあるんです!だから、もしそれを切っちゃって張り替えることを考えただけで…(lll゜Д゜)ヒイィィィ!!
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ムカデかよっ?!

2011年09月26日 16時46分17秒 | 日記
ヴィオラ・ダモーレの糸倉部分です。ここだけで全長の1/3くらいの長さがあります。ムカデの足のように両側に出ているのは、全て糸巻きです。何たって奏弦7本+共鳴弦7本=14本分ですから…。

これら全ての弦のチューニングを落ち着かせるのに相当時間がかかります。だから使う時にはかなり早くから会場入りしてせっせと音合わせしなければなりません。

ホント大変なんですけど、ちゃんとチューニングが合った時の音が何とも言えず美しいので、面倒臭い!と思ってもやめられないんですねぇ…。
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