今日は昨日と比べると、一段と寒い一日となりました。昨日のコンサートの疲れもあってしばらく布団の中にいましたが、あまりの寒さに目が覚めてしまったほどです。
ところで今日12月5日は、イタリア・バロックの作曲家ジェミニアーニの誕生日です。
フランチェスコ・ジェミニアーニ(1687〜1762)はイタリア後期バロック音楽の作曲家・ヴァイオリニスト・音楽理論家です。
イタリア・ルッカ出身のジェミニアーニは、音楽全般をアレッサンドロ・スカルラッティ(1660〜1725)に、ヴァイオリンをアルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)に師事しました。1711年よりナポリの宮廷楽団のコンサートマスターに就任し、しばしば旧師スカルラッティと接触する機会を持つこととなりました。
1714年には、ヴィルトゥオーソとしての評判からロンドンに招かれました。1715年にはゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)によるイギリス国王ジョージ1世の御前演奏の際に通奏低音(チェンバロ)奏者として参加し、この縁から作曲家としてヘンデルにコレッリをつなぐ存在となりました。
ジェミニアーニは当時から第一級のヴァイオリニストとして有名で、特に1751年にロンドンで出版した『ヴァイオリン奏法論』は18世紀イタリアのヴァイオリン演奏法についての最も有名な概説となっていて、ヴィブラートやトリルなどの演奏技巧に詳しい説明が加えられていることから、後期バロック音楽の演奏習慣の研究者にとって有意義な著書となっています。また、1752年頃に出版した『和声法指南 』は後期バロック音楽の比類ない理論書として通奏低音のパターンと実践についての百科事典として大変重宝するもので、作曲の学習者がこの著書を学べば、その後どんなバス課題に対しても対応することができるように配慮されているものとなっています。
ジェミニアーニは多くの作品を遺しましたが、特にヴァイオリン協奏曲の分野で有名なのはヴィヴァルディが多く遺した独奏協奏曲スタイルではなく、恩師コレッリが多く遺した合奏協奏曲でした。ジェミニアーニの合奏協奏曲の特徴としては、通常ヴァイオリン2台とチェロで構成されるコンチェルティーノ(ソログループ)にヴィオラを導入して、実質的な弦楽四重奏を形成しているところにあります。
これらの作品は、当時コレッリを愛聴していたロンドンの聴衆を喜ばせるためにかなり対位法的に労作されたものです。そんな中でジェミニアーニはコレッリへのオマージュとして、恩師のヴァイオリン・ソナタを改作して合奏協奏曲に仕立てた《合奏協奏曲集 作品5》を出版しています。
この作品5には、当然のことながら名曲《ラ・フォリア》が終曲に含まれています。オリジナルであるコレッリのソロソナタも勿論名作ですが、それをアンサンブルにしたことで華やかさが増し、ヴィオラの加わったコンチェルティーノが響きに厚みを与えています。
そんなわけでジェミニアーニの誕生日である今日は、彼が師匠コレッリの名曲《ラ・フォリア》を元に作曲した合奏協奏曲の演奏動画を転載してみました。バロックヴァイオリン奏者のファビオ・ビオンディ率いるエウローパ・ガランテの演奏でどうぞ。