はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

みかえり阿弥陀

2012-12-04 21:40:24 | はがき随筆


 紅葉の時期になると、亡き夫との京都旅行を思い出す。寺院の紅葉は見事で京都ならではの趣があった。その中でも永観堂は特に心に残っている。山門を入ると、思わず息をのむ真っ赤にもえるような紅葉が目に飛び込んでくる。参道を進み、お堂の壇上に「みかえり阿弥陀像」が安置されていた。その慈愛に満ちたお姿、振り返るまなざしに、しばし足を止めて、夫の健康を拝んだ。その美しい立像に感銘を受け、離れがたいように立ち尽くしていた夫のことを思い出す。近年出かけることもなく、庭のイチョウに晩秋を感じながら当時に思いをはせる。
  鹿児島市 竹之内美知子 2012/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

着物の出番

2012-12-04 21:34:57 | はがき随筆
 結婚前、自分の給料で着物を2枚作った。結婚後、着る機会もなく、大事にしまっていた。
 今年は孫娘の七五三で、晴れ着の支度を楽しみにしていたのだが、嫁の里でしてくれるという。ちょっとがっかりしたが、良いことを思いついた。
 2枚の着物を取り出し、手持ちの帯や小物を合わせる。地味な色の重ね襟に、地味な帯を締めたら、派手めの色合いの小紋も落ち着いて、今の私が着てもおかしくなかった。嫁には華やかな訪問着がよく似合った。
 孫の晴れ姿もかわいかったが、30年以上も寝かせていた着物の出番に私は歓喜した。
  出水市 清水昌子 2012/12/2 毎日新聞鹿児島版掲載

一場秋夢

2012-12-04 21:14:52 | はがき随筆


 子ども時代の遊び場は野山。秋は特に好きだった。初秋のクリに始まり、アケビやムベ、山ブドウ。育ち盛りの空腹を満たすには十分だった。木登りが苦手だった。だから、高い枝に絡まって実っているアケビは下から眺めるだけの「おやつ」だった。その分、山ブドウを探した。袋に詰め込んだ「自然の恵みの高級品」を並べる、ちょっとした市場のにぎわいの中、友だち同士での物々交換が始まる。高価なチョコやお菓子、パンには劣るがとてもうまかった。もう、アケビや山ブドウを探し求める子らの姿はない。過ぎ去った昔が夢のように思える。
  鹿児島市 吉松幸夫 2012/12/1

ババ、ハッーして

2012-12-04 21:07:05 | はがき随筆
 家族旅行で宮島に行った。3歳から72歳まで総勢11人。ロープウエー乗り継ぎの弥山ハイキングもこなし元気なことに感謝した。電車の中で孫が「ババ、ハッハッーして」と。入れ歯コマーシャルの「くさい」を思い出し、少し力を抜いてハッ! 「はーちゃんね、イチゴの歯磨きを使っているからイチゴの匂いがするんだよ。ババは!」「……」。純真無垢の目にどんなに映ったのだろう。家庭菜園に夢中になり日焼けした顔を見て「ババ、顔、赤い。熱あるの?」。人間の原点を見た感じ。何事もこんな風に解釈して余生を終わりたいと思った。
  阿久根市 的場豊子 2012/11/30 毎日新聞鹿児島版掲載

タマネギ植え

2012-12-04 20:58:50 | はがき随筆


 白いシャキシャキの甘いタマネキギを楽しみに、今年もたくさん植えた。種まきから苗づくりをして10月中旬から植えた。畑づくりは元肥とカルシウムを散布して耕運する。その上に小さい穴のあいたマルチをかぶせて植える。小さい苗を人さし指と親指に挟み、白い細い根と玉になる白い部分を優しくマルチの穴に差し入れ、周りの柔らかい土を指で寄せて植える。この時「大きくなれよ」と声(肥)をかけて植える。タマネギは寒い冬の間にしっかり根を張って、3月中旬には立派なつややかな白い大きな玉に育っていく。毎日、優しく声をかけて待とう。
  出水市 畠中大喜 2012/11/29 毎日新聞鹿児島版掲載

私も「世話好きおばさん」に

2012-12-04 06:39:11 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員   安西 詩代

先日、JR山陽線の2人掛けの座席に座った。最初は混んでいたが徐々にすいてきて、向かいの座席は男子中学生1人になった。

耳にイヤホンの中学生は横になってゲームをしながら、靴のまま片足を座席に上げた。私は「靴を脱いでね。皆が座るところだから」と言ったが、彼は「うるせえ」と唇だけを動かし顔をしかめた。もう片方の足も上げ、ゲームを続けた。

私が「赤ちゃんみたいね」と言うと、彼は手を止めてにらんだ。私は彼を眺めながら、にっこり。彼は両足を座席から下ろした。

電車を降りる時、「おばさんの言うことを聞いてくれてありがとう」と言ってチョコレートを1枚渡した。彼は「えっ、どうして?」と初めて声を発し、パッと輝く笑顔になった。体は大きいけど、まだまだ子ども。かわいいなと思った。

私が子どもの頃は、いたずらをすると近所のおじさんに叱られ、おばさんには「暗くなったから早く家に帰りなさい」と注意された。私も年金を頂く年齢。昔ながらの「世話好きおばさん」になろうと思った。

 (2012.11.27 朝日新聞「声」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「私は鬼コーチ」

2012-12-04 06:38:16 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会員   中村 美奈恵

ガチャ。中1の息子が帰ってきた。「どうだった」。ニヤッと笑い「Aだった!」。 家庭科でリンゴの皮むきテストがあるという。縦半分のリンゴを4分以内に皮をむき、くし形切りにする。本番目指し特訓だ。タイミングよく近所や友人から届いたリンゴが計15個。十分練習できる。だが、「あっ、危ない」「うるさいなあ」と言い合ってばかり。たいして上達せずに本番を迎えた。

「ねぇ、先生ちょっと甘いんじゃないの」。あの手つき、いびつな形。私なら絶対、Cだ。テストは終わったが、家での特訓はまだまだ続く。

(2012.12.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載




かのやオーケストラ定期演奏会

2012-12-04 06:15:19 | アカショウビンのつぶやき
鹿屋市で14年前から活動している、
市民オーケストラ「かのやオーケストラ」
第11回定期演奏会がありました。
私たちの信愛コーラスの指導者、たえ子先生はヴィオラ奏者です。
行ってきました。





曲目は
ベートーベン:「エグモント」序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ブラームス:交響曲第1番

この小さな田舎町で、オーケストラの活動を続けていく困難さは、
想像に難くありませんが、
指導されるM先生のお人柄と団員の熱意で、
今年も素晴らしいコンサートになりました。

汗だくだくでタクトを振るM先生の姿に、
熱い拍手を贈りました。
アンコールは、ハンガリー舞曲第5番。
ブラームスに酔いしれて、素晴らしいひとときでした。


来年は第九が計画されました。

前回は2年前、あれだけ必死に覚えたはずなのに、
おおかた忘れてしまいました。
もし許されるならば、
メンバーの最高齢になるだろうけれど参加したいなあ…。