はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

闘病記その9

2012-12-09 17:09:53 | はがき随筆
 夫の病状は日々快方に向かい、医師から外泊許可も出た。理由は気分転換。夫も喜ぶだろう。娘の車で夫と私は病院を後にした。途中、海岸に立ち寄った。夫は海を眺めた。深呼吸もした。目も養われただろう。お昼を済ませた後、夕方まで競り美を見たりして、ゆっくりとくつろいだ。夕食のテーブルについた。食後の薬を服用し9時半には消灯。翌朝は7時に起床。元気そうな夫の姿。朝のあいさつを交わし朝食を済ませ病院へ。1泊2日の外泊を無事に終え、看護師さんに「ありがとうございました」とお礼を言う。次の外泊が待ち遠しい。
  姶良市 堀美代子 2012/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

黒田三郎展

2012-12-09 17:00:34 | はがき随筆
 かごしま近代文学館で特別企画・黒田三郎展が開かれた。
 学生時代・荒地派の詩人として鮎川信夫、田村隆一、吉本隆明とともに黒田の詩を読んでいた。やさしい言葉の中から、生きる「辛さ」が伝わってきた。
 当時、よく訪ねていたI教授の研究室に、黒田の詩集があった。「先生も黒田の詩を読むんですか」と臆面もなく聞くと、黒田と教授は第七高等学校と東京帝国大学に同期入学だった。
 七高時代には、俳誌・傘下の原稿整理を共にしたり、黒田に天文館での焼酎を教えてもらったそうだ。暗くなる時デイの片隅で彼らは何を語っていたのか。
  鹿児島市 高橋誠 2012/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載

「あの時を思い出します」

2012-12-09 16:40:29 | 岩国エッセイサロンより
お義母さんそちらはいかがですか? 
 こちらはいつもより遅くなりましたが桜が咲き始めました。 
 昨年の2月10日にお母さんが逝ってから、毎日通っていた施設に行くことが無くなり淋しくなりました。
 食事が食べられなくなり、一滴の水さえも喉を通らなくなりつらかったですね。
 尊厳死カードを持っていて、延命処置はしないという意思表示をしているお母さんなので、それに従うことにしました。
 最期の10日間は一滴の水も口にしないのに、トイレだけに起き上がりベッド側のポータブルトイレに二人がかりで、かかえながらも自分でしましたね。
 排泄を最期まで自分の意志でされたことに、敬意を感じました。
 点滴もしないので、数日で楽に逝かれると思っていました。
 体がだるかったのでしょうね。「ア~…ア~…」という呼吸とともに出る溜息が忘れられません。迷いました。点滴だけでもしたら楽になれるのではと思いましたが、水分を入れると腹水や肺水が溜まったりして、余計に苦しくなることがあると聞いて止めました。
 「もう頑張らなくて良いのですよ」という以外なすすべもなく毎日見つめていました。
 本当に良かったのでしょうか? 私もお母さんにならってカードを持っています。お返事ください。
 (2012.10.01 日本尊厳死協会「リビング ウィル」掲載)岩国エッセイサロンより転載