はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

赤、黄、橙の競演

2012-12-15 23:07:56 | はがき随筆






 アブチロンが例年になくたくさん咲いている。枝がしなうほどだ。「いっぱい咲いて見事ですね」。通りがかりの人も足を止めて眺めていくほど。母が存命のころ(もう6年前になるが)ちらほらとしか咲いていなかったので、そんなものだと思っていた私は、いささか驚いている。カミさんも「こんなに咲くなんてびっくりよ」と大満足。ツワブキも咲き出した。少し離れたところでは、極楽鳥花が今まさに大空に飛び立とうとしている。アプチロンの赤、ツワブキの黄、極楽鳥花の橙と、狭いながら我が家の庭では今、赤・黄・橙が競演している。
  西之表市 武田静瞭 2012/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

閉じた塾

2012-12-15 23:01:29 | はがき随筆
 平成4年に賃借した書道用の教室を20年間で閉じることに。
 時は流れ、ついに整理の日は来た。妹夫婦が手伝ってくれ大助かり。昼食は青空の下、芝生で食べ、遠足気分。
 近くの老婦人が猫と様子うかがいに見えた。「弁当いかが」と声をかけると、大喜び。今年、大家さんご夫妻は、金婚式とのことで祝福の極み。
 ご主人にはがき随筆投稿を勧められ、再々の掲載に感動。
 「継続は力なり」とご指導くださり、敬服。思い出深い教室、最後のドアを閉め、笑顔でお別れ。感無量。今後、自宅での塾は続け、健康を維持したい。
  肝付町 鳥取部京子 2012/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載

3Lから2Lへ

2012-12-15 22:55:13 | はがき随筆
 歌を聞きながら、ウオーキングマシンで300㍍歩いた。
 約20分の自分との闘いである。鏡に写った自分に、内心涙を流しながら頑張って歩くメタボの私。
 要介護1の認定で週2回、デイサービスに通っている。自分の母のような高齢の人がリハビリを頑張っている姿を見て、私に力が湧いてくる。
 大好物の甘い物を禁じられて苦しいけれど、まだまだ、おしゃれもしたい。せめて2Lの服を着たい。体が軽くなったら、さっそうと外を歩きたい。
 若い人のように輝くのは無理だけど、私は人生を諦めない。
  鹿屋市 田中京子 2012/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

体に良い?

2012-12-15 22:48:46 | はがき随筆
 今日も天気に恵まれ、朝日の照り注ぐ中、母は近所のイモ堀の手伝いに行った。先日のテレビで「話すことは頭の働きに大変良く、認知症の予防になる」と言っていた。それを見ていた母は、敵の首でも取ったように、早速やってきた。「しゃべっとは頭の働き、わっぜーよかげな!」と得意満面。なぜなら90歳の母の楽しみは「おしゃべり」だからだ。それを聞いた主人。「あーちょっしもた! こんテレビを見いやったとか。そんちょしで100歳までもいきいやっど!」。大爆笑となった。大いにしゃべり、大いに長生きしてほしいものだ。
  肝付町 永瀬悦子 2012/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載

Tさんのこと

2012-12-15 22:42:45 | はがき随筆
 Tさんというじいさんが鹿児島に住んでいた。東京は神田の生まれで生粋の江戸っ子。志ん生の落語とお酒が大好きで、飲めばとてつもなく面白い話を江戸弁でしゃべり出す。東京で出会ったさまざまな業界の人たちのこと。シベリア鉄道でモスクワへ行ったこと。まるで講壇のようだった。口は悪いけれど何とも憎めない人で、芸術家から警察官まで多くの人が自然と引き寄せられていた。私は彼と知り合って人生の幅が広がったと思う。残念ながら数年前に黄泉へ旅立たれたが、今ごろ、にこにこしながら最愛の奥様と晩酌していることだろう。
 鹿児島市 種子田真理 2012/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載