はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ごめんね

2014-12-01 22:20:40 | はがき随筆
 独り暮らしなのに、食料品ぎっしりのカートはいつも重い。その上自宅の手前には急な階段がある。回り道をすれば、なだらかな坂道なのに僅かな時間を惜しんで階段に挑む私。
 ある日、階段の下で立ち止まっていると、小学校高学年とみえる男の子が走ってきた。
 「持ちましょうか」。反射的に出た私の言葉なんと……。
 「ありがとう、大丈夫よ」
 バッカだなあ。「まあうれしい、お願いね」の素直な一言が言えなかった……。
 「はあい」と明るい声を残し、階段を二段飛びで駆け上がる少年に「ごめんね」。
  鹿屋市 西尾フミ子 2014/12/1 毎日新聞鹿児島版掲載
 

楽しからずや

2014-12-01 22:13:26 | はがき随筆
 「友あり遠方より来たる。また楽しからずや」。いったい、何が楽しいのだろう。私はちょっと疑問をもって原文の「不亦楽平」を中日辞典で引いてみた。辞典には「忙しい、甚だしい」と書いてあった。
 親友の好きな物を集めて回り準備する。だから忙しい、それがまた楽しいのだ。馬を走らせて集めたので、日本では「ご馳走」の語源ともなった。
 一衣帯水の国、日本と中国の人たちの心の奥には、このようなおもてなしの気持ちが流れている。お互いに胸襟を開いて話し合えば、きっと良い友だちになるはずだと私は信じている。
  鹿児島市 野幸祐 2014/11/30 毎日新聞鹿児島版掲載

○×△同窓会

2014-12-01 17:15:30 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   安西 詩代


高校を卒業して50周年。久しぶりに同窓会に出席した。

なかなか会うことのなかった仲良しの友だちは離婚して久しい。その彼女が言う。
 「私、×(バツ)イチではなくて○(マル)イチと呼んでね」と。
 なるほど、彼女は結婚には失敗したけれど、離婚してからは幸せなので離婚は×ではなく○だった。だから×イチではなく○イチ。
 先日のテレビで60歳以上の夫婦にアンケートしたら、お互いが結婚して大満足の人は数%だと言っていた。では大多数の結婚している夫婦は△(イマ)イチ? 離婚○イチの彼女が「次に結婚する時は、すごく愛している人となら何も要らない」と乙女のように言った。 
 すかさず△イチの仲間が一言。 
 「愛が一生続くわけないでしょう!」
 でも、その「愛」という言葉で、それぞれが青春の一コマを思い出した。さあ始まるよ、同窓会。
 高校時代に戻った顔、顔、顔!

(2014.12.01 毎日新聞「女の気持ち」掲載岩国エッセイサロン)より転載