2年前から母は遠くの施設にお世話になっていて、面会に行くと、どうにか会話はできている。ただ、同じことを繰り返すようにはなった。晴天だと近くの公園まで車椅子を押して散歩する。お決まりの好物を手渡すと「食べたことがない」が口癖。目を細め無邪気に喜んでくれる。問題は帰り際。別れを惜しむかのように目で訴えてくる小さな母、置いてきぼりの幼子にも見える。後ろ髪を引かれながら「また、来るね」と背を向ける瞬間が切なくて最もつらい。幾度となく振り返り手を振る私。寂しそうな顔がいつまでも目に焼き付いて離れない。
鹿屋市 中鶴裕子 2016/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿屋市 中鶴裕子 2016/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載