はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

果たそう15回目

2016-10-23 22:22:16 | はがき随筆
 何度目かの友人のさそいにやっと応じて、今年で15回目に至った「県民第九」への参加。年年歳歳同じくむつみ合って来たこの道。始めるとやめられないたちの私も毎年「今年はできるかしら」と老いて懸念している。
 しかし四つの声の響きの美しさを恋い、シラーの詩のことばに魅せられるシアワセに自分を託する。平和で崇高なひととき、どうぞ今年もかないますように! いえ私だけでなく、子や孫や多くの友人のために祈りをこめてうたいます。
 12月18日、発表の日を無事迎えられますように。
  鹿児島市 東郷久子 2016/10/23 毎日新聞鹿児島版掲載

雑草

2016-10-23 06:54:06 | はがき随筆
 炎天下、雑草が一面に繁茂している。耕運して間もない白い畑にもポツポツと草が芽を出し、1週間もすると地面をはいつくばり、畑が隠れるほどだ。オイシバ、メヒシバ、スベリヒユ、コニシキソウ等すごい。最近の名もない外来種もさらに強い繁殖力だ。手入れも水もやらないのにこの生命力だ。引き抜くと、ちぎれてしがみついている。
 その昔、子どもたちの学級通信と卒業文集に「雑草」と名づけたが、あの子どもたちも、また、雑草のごとく強い人間になり、頑張っているにちがいない。
 出水市 畠中大喜 2016/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

スペイン語辞典

2016-10-23 06:48:08 | はがき随筆
 TVドラマや小説では、忘れれ物を関係者が偶然見つけることがある。それが事件解決の糸口だったり、人間関係をより複雑にしたりする。でもそれは虚構世界の絵空事と思っていたが。
 毎日ペンクラブの地区勉強会が7月にあった。帰り際にT氏が長テーブルの下の棚に置かれた本を見つけた。スペイン語の辞書だ。西語関係者は鹿児島では少ないと思いその場から、西語教室に通っている妻に「辞書を忘れた人はいないか」と電話した。「どんな辞書」と尋ねるので「青い表紙で黄色の付箋が2.3枚貼ってあるね」と答えると「あっそれ私のだ」。
  鹿児島市 高橋誠 2016/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

山坂達者

2016-10-23 06:39:42 | はがき随筆
 私より一回り年長の友人がいる。10年くらい前、2人で妙円寺参りに参加した。歩くことは好きだし、20㌔の道のりくらい軽いと思っていた。
 しかし、照国神社をスタートし、水上坂で早くも私の足は止まった。彼女はすいすいと登っていく。私がふうふう言いながらやっと坂の上に着くと「右足と左足を交互に出せば前に進むが」と笑っていた。翌年は少しトレーニングをして臨み、なんとかついて歩けた。
 彼女は現役時代、坂の上の家からバス停まで毎日上り下りを繰り返し、それが結果として訓練になっていたのである。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載