2016年12月 2日 (金)
岩国市 会 員 横山恵子
景色に初冬の趣を感じる頃となり、店先には季節の果物が並んでいる。亡父は渋抜きをした「あおし柿」が特に好きだった。
渋抜きに炭酸ガスやアルコールが使われるようになったのは、いつ頃からだろうか。私たちが子どもの頃、父はたるの中に柿を入れて湯を張り、それを風呂の残り湯の上に一晩置いて渋抜きをしていた。
ほんのりとぬくもりのある柿は、格別のおいしさだった。父が「果物の中で、これが一番じゃ」と頬張っていた姿を思い出す。
祖父が雨の中、畑仕事から帰るなり寝込んでしまい、祖母が心配していたら、実は黙ってあおし柿を18個食べていた、という話は、祖父母亡き後も語り草になっている。
わが家の柿の木は1年置きに実を付けている。今年は数えるくらいしかできなかったのに、はとんどはカラスヘのお歳暮となった。
葉が散ってしまった木を見ると、「今年も残り少なくなったなあ」と一抹の寂しさを感じる。
(2016.12.02 中国新聞「広場」掲載)
岩国市 会 員 横山恵子
景色に初冬の趣を感じる頃となり、店先には季節の果物が並んでいる。亡父は渋抜きをした「あおし柿」が特に好きだった。
渋抜きに炭酸ガスやアルコールが使われるようになったのは、いつ頃からだろうか。私たちが子どもの頃、父はたるの中に柿を入れて湯を張り、それを風呂の残り湯の上に一晩置いて渋抜きをしていた。
ほんのりとぬくもりのある柿は、格別のおいしさだった。父が「果物の中で、これが一番じゃ」と頬張っていた姿を思い出す。
祖父が雨の中、畑仕事から帰るなり寝込んでしまい、祖母が心配していたら、実は黙ってあおし柿を18個食べていた、という話は、祖父母亡き後も語り草になっている。
わが家の柿の木は1年置きに実を付けている。今年は数えるくらいしかできなかったのに、はとんどはカラスヘのお歳暮となった。
葉が散ってしまった木を見ると、「今年も残り少なくなったなあ」と一抹の寂しさを感じる。
(2016.12.02 中国新聞「広場」掲載)